人外と友達になる方法
第46話 恋する秀才 〜黄昏の告白編〜
『伊鳴狐々愛さんへ
ラブレターなんて今まで書いたことがなかったので、伝えたいことだけ書きます。
初めて狐々愛さんを見た日からずっとあなたのことが好きでした。狐々愛さんにとって僕は地味で冴えないただのクラスメイトかもしれないけど、この気持ちは本物です。
明日の放課後四時十分に校舎裏で待ってます。もしよければ返事を聞かせてください。
明智慎之介』
まず初めに驚いたのは差出人だ。
明智は悠火のクラスの委員長。まさに真面目を絵に書いたかのような人物だ。
夏休みの花火大会でも彼女を作らず家族と花火鑑賞し、体育祭でカップルが急増する中ひたすらに勉強をしてきたような奴だ。
決してモテないわけではない。真面目過ぎて一部の生徒には距離を置かれてはいるが、それ故に一部の女子からは密かに人気を集めている。
そして次にその内容だ。
「不埒な輩だと思ってたけど……謝らないとな」
明智の不器用さをそのまま書き記したようなお手本のような恋文だ。
それだけに明智の本気度が伝わってくる。
しかし、相手が誰であれ狐々愛を渡す気は更々無い。
「何が書いてあったのじゃ?」
狐々愛が悠火の持つ恋文を覗き込む。
そして真剣な顔で言った。
「これはちゃんと話しをせんとの」
狐々愛にも明智の気持ちが伝わったらしい。
ちなみに、参考までに、まさか無いとは思うが一応、答えを聞いてみる。
「明智に何て言うつもりなんだ?」
「それは秘密じゃ! 悠火にも言えん!」
本当は命令してでも聞きたいが、これは狐々愛と明智の問題だ。部外者の悠火が口を挟むのわけにはいかない。
そしてその日はそのまま寝ることにした。
しかし、全く寝れなかったことは言うまでも無いだろう。
その日は朝早くに学校に向かった。
明智は毎日誰よりも早く登校する。決して狐々愛のことについて言及したりするつもりは無いが、明智の様子を観察しようと思ったのだ。
まあ、チャンスがあればそれとなく聞いてみようとは思っているが。
「おはよ〜」
「おはよう。あれ? 伊鳴君今日は早いね」
明智は花瓶の水を入れ換えていた。
本当は日直の仕事なのだが、毎日明智が換えていたらしい。
「ああ。今日はいつもより早く目が覚めてな」
嘘だ。本当は一睡もしてない。
「そうなんだ……狐々愛さんは一緒じゃないの?」
いきなりのキラーパスに悠火も焦る。
まさか明智から来るとは思っていなかった。
「いや? 一緒じゃないけど?」
「そう……」
二人の間に沈黙が流れる。
今の状況が気まずいのもあるが、もともと二人はそこまで親密な仲ではないのだ。
「狐々愛に何か用だったのか?」
悠火はさりげなく探りを入れる。
「聞いてないかもしれないけど……僕、昨日狐々愛さんにラブレターを渡したんだ」
まさか正直に恋文のことを話すとは思っても見なかった。
「へ、へぇ……それで返事は?」
「いや。手紙を直接渡す勇気が無くて……靴箱に入れたんだ。今日の放課後返事をもらう予定だよ」
「……ちなみに、何で狐々愛に惹かれたかとか聞いてもいい?」
「……誰にも言わないでよ?」
少し恥ずかしそうにそして明智は話し始めた。
最初は一目惚れだったらしい。
それから無意識に目で追っていくうちに、日々の何気ない笑顔や、数学で答えを間違えた時の恥ずかしそうな表情、体育で大活躍する姿を見てどんどん惹かれていったのだと言う。
「ーーーそれで、その時の表情が……」
「わかった! わかったから」
これ以上話すと止まらなくなりそうなので悠火が止める。
明智が狐々愛のことを好きなのは疑いようのない事実だ。昨日のどこぞの馬の骨のような軽い気持ちでないことは一目瞭然だ。
それ故に申し訳ない気持ちになる。
相手が狐々愛でなければ悠火はこの恋を全力で応援するつもりだ。
「だから……僕は本気だよ」
明智の気持ちは少しも揺らがない。
悠火は明智に何も言ってあげることが出来なかった。
少しずつ生徒たちが登校し始めたため、二人の話はここで終わる。
その後も明智を観察していたが、いつもと変わらず真面目に授業を受け、休み時間は予習や友達と少し世間話をしていた。
(本当に真面目だよな……あいつ)
光秀がいるが故に学年一位は逃しているが、明智は学年二位の秀才だ。
しかし中学まではそこまで勉強が出来たわけではないらしい。
高校に入ってから直向きにに努力し、今の学力を手に入れたのだ。その努力には頭が下がる。
そしていよいよ決戦の放課後がやって来た。
「悠火。今日は先に帰っててくれ。妾は用事があるでの」
「……わかった」
「用事があるなら待つけど?」
何も知らない奏鳴は待つつもりのようだが、悠火がそれを止める。
「たまには男同士で帰ろうぜ!」
「おお、まあ別にいいけど」
「それじゃ先に帰っとくぜ」
狐々愛と別れて悠火と奏鳴は学校を出る。
ちなみに光秀は塾だ。
「さて……」
悠火たちが学校を出たのを確認してから、狐々愛は校舎裏へと向かう。
読んでいただきありがとうございます。コングです。
何だか恋愛小説みたいになって来ました。
僕は恋愛小説も読むので書いてみると案外楽しいです。
学年主席と次席の光秀と明智。狙ったわけじゃないのに明智光秀になってしまった。
本当に狙ってませんから!
お忘れでしょうが明智の初登場は今回ではなく13話です。少しだけ出てました。
それではまた次回!
2020/5/12一部改稿
ラブレターなんて今まで書いたことがなかったので、伝えたいことだけ書きます。
初めて狐々愛さんを見た日からずっとあなたのことが好きでした。狐々愛さんにとって僕は地味で冴えないただのクラスメイトかもしれないけど、この気持ちは本物です。
明日の放課後四時十分に校舎裏で待ってます。もしよければ返事を聞かせてください。
明智慎之介』
まず初めに驚いたのは差出人だ。
明智は悠火のクラスの委員長。まさに真面目を絵に書いたかのような人物だ。
夏休みの花火大会でも彼女を作らず家族と花火鑑賞し、体育祭でカップルが急増する中ひたすらに勉強をしてきたような奴だ。
決してモテないわけではない。真面目過ぎて一部の生徒には距離を置かれてはいるが、それ故に一部の女子からは密かに人気を集めている。
そして次にその内容だ。
「不埒な輩だと思ってたけど……謝らないとな」
明智の不器用さをそのまま書き記したようなお手本のような恋文だ。
それだけに明智の本気度が伝わってくる。
しかし、相手が誰であれ狐々愛を渡す気は更々無い。
「何が書いてあったのじゃ?」
狐々愛が悠火の持つ恋文を覗き込む。
そして真剣な顔で言った。
「これはちゃんと話しをせんとの」
狐々愛にも明智の気持ちが伝わったらしい。
ちなみに、参考までに、まさか無いとは思うが一応、答えを聞いてみる。
「明智に何て言うつもりなんだ?」
「それは秘密じゃ! 悠火にも言えん!」
本当は命令してでも聞きたいが、これは狐々愛と明智の問題だ。部外者の悠火が口を挟むのわけにはいかない。
そしてその日はそのまま寝ることにした。
しかし、全く寝れなかったことは言うまでも無いだろう。
その日は朝早くに学校に向かった。
明智は毎日誰よりも早く登校する。決して狐々愛のことについて言及したりするつもりは無いが、明智の様子を観察しようと思ったのだ。
まあ、チャンスがあればそれとなく聞いてみようとは思っているが。
「おはよ〜」
「おはよう。あれ? 伊鳴君今日は早いね」
明智は花瓶の水を入れ換えていた。
本当は日直の仕事なのだが、毎日明智が換えていたらしい。
「ああ。今日はいつもより早く目が覚めてな」
嘘だ。本当は一睡もしてない。
「そうなんだ……狐々愛さんは一緒じゃないの?」
いきなりのキラーパスに悠火も焦る。
まさか明智から来るとは思っていなかった。
「いや? 一緒じゃないけど?」
「そう……」
二人の間に沈黙が流れる。
今の状況が気まずいのもあるが、もともと二人はそこまで親密な仲ではないのだ。
「狐々愛に何か用だったのか?」
悠火はさりげなく探りを入れる。
「聞いてないかもしれないけど……僕、昨日狐々愛さんにラブレターを渡したんだ」
まさか正直に恋文のことを話すとは思っても見なかった。
「へ、へぇ……それで返事は?」
「いや。手紙を直接渡す勇気が無くて……靴箱に入れたんだ。今日の放課後返事をもらう予定だよ」
「……ちなみに、何で狐々愛に惹かれたかとか聞いてもいい?」
「……誰にも言わないでよ?」
少し恥ずかしそうにそして明智は話し始めた。
最初は一目惚れだったらしい。
それから無意識に目で追っていくうちに、日々の何気ない笑顔や、数学で答えを間違えた時の恥ずかしそうな表情、体育で大活躍する姿を見てどんどん惹かれていったのだと言う。
「ーーーそれで、その時の表情が……」
「わかった! わかったから」
これ以上話すと止まらなくなりそうなので悠火が止める。
明智が狐々愛のことを好きなのは疑いようのない事実だ。昨日のどこぞの馬の骨のような軽い気持ちでないことは一目瞭然だ。
それ故に申し訳ない気持ちになる。
相手が狐々愛でなければ悠火はこの恋を全力で応援するつもりだ。
「だから……僕は本気だよ」
明智の気持ちは少しも揺らがない。
悠火は明智に何も言ってあげることが出来なかった。
少しずつ生徒たちが登校し始めたため、二人の話はここで終わる。
その後も明智を観察していたが、いつもと変わらず真面目に授業を受け、休み時間は予習や友達と少し世間話をしていた。
(本当に真面目だよな……あいつ)
光秀がいるが故に学年一位は逃しているが、明智は学年二位の秀才だ。
しかし中学まではそこまで勉強が出来たわけではないらしい。
高校に入ってから直向きにに努力し、今の学力を手に入れたのだ。その努力には頭が下がる。
そしていよいよ決戦の放課後がやって来た。
「悠火。今日は先に帰っててくれ。妾は用事があるでの」
「……わかった」
「用事があるなら待つけど?」
何も知らない奏鳴は待つつもりのようだが、悠火がそれを止める。
「たまには男同士で帰ろうぜ!」
「おお、まあ別にいいけど」
「それじゃ先に帰っとくぜ」
狐々愛と別れて悠火と奏鳴は学校を出る。
ちなみに光秀は塾だ。
「さて……」
悠火たちが学校を出たのを確認してから、狐々愛は校舎裏へと向かう。
読んでいただきありがとうございます。コングです。
何だか恋愛小説みたいになって来ました。
僕は恋愛小説も読むので書いてみると案外楽しいです。
学年主席と次席の光秀と明智。狙ったわけじゃないのに明智光秀になってしまった。
本当に狙ってませんから!
お忘れでしょうが明智の初登場は今回ではなく13話です。少しだけ出てました。
それではまた次回!
2020/5/12一部改稿
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