人外と友達になる方法

コング“シルバーバック”

第31話 動き出す歯車 〜鬼篇〜

 牙狩。
 それは雷王の封印を解いた人物の名前だった。

「ここでも牙狩か……もうそいつが黒幕って事で間違いなさそうだな」

「そうだね……それは間違いないと思う。もしかすると個人ではなく、組織単位なのかもしれないけど」

 悠火と意見に光秀も賛成のようだ。
 確かに個人ではなく組織なのだとしたらこの一連の事件はそう簡単には終わらないのかも知れない。

「僕は一先ず本部に帰って今回のことを報告します。風狸のことも調べないとですしね」

 天空の口から何やら興味深いワードが飛び出た。

「本部って何だ?」

「我々妖怪による組織の本部です」

 天空はさも当然というように言った。
 まるで周知の事実といった具合に。

「そんなものがあるのか?」

「ええ、もっとも殆どの妖怪は今もまだ封印されているのでお世辞にも大きな組織とは言えませんがね」

「ちなみに今どれくらいいるんだ?」

「総隊長を含めて幹部は五人、その下におよそ三十人の妖怪たちがいます」

 狐々愛の話によると四百年前にほぼ全ての妖怪が封印されたらしい。
 それにもかかわらず三十人を超える組員メンバーがいるということは、封印を解いているのだろうか。

「それでは、僕はこれで」

 天空はそう言うと音もなく消えてしまった。

「さて、風狸と牙狩の件は天空に任せておいてよいじゃろう」

「だな。妖怪のことは妖怪に解決してもらうのが一番だろうな。目には手をってな!」

「目には目を、だよ。手って危ないでしょ」

 狐々愛の考えはここにいる全員の総意だった。
 そして、戦いの緊張も解けた時、思い出したかのように言った。

「あ、そう言えばそろそろ二人とも目がさめる頃じゃな」

 そう言って狐々愛は寺に向かって歩き始めた。




 本部へと戻った天空は総隊長に今回のことを報告していた。

「……以上が今回の報告になります」

 総隊長の男は天空の報告を静かに聞いている。

「……そうか……風狸についての捜査は俺がやろう。お前は牙狩の方を頼む」

「はい。……お一人で行かれるのですか?」

「ふっ……俺の心配か?」

「……まあ、貴方なら大丈夫ですよね。やり過ぎないか心配なのはありますが」

 天空は総隊長に一礼し退出した。

「……ついに始まったか…あの戦いの続きが……ゆっくりとコーヒーを飲めるのも今日が最後かもな」

 男は窓から見える夕陽を眺めながらコーヒーを啜った。




 寺の中には奏鳴と奏鳴の祖父が横たわっていた。
 すると、先に奏鳴が目を覚ました。

「ん……あれ? みんな来てたのか? あ! あいつは、天空はどうした!?」

「大丈夫。戦いは終わったよ、誰も怪我してないし」

「そっか……よかった」

 奏鳴は隣で眠る祖父を見て胸をなでおろした。

「爺ちゃんも無事だったんだな」

「傷は塞いだし、出血も止まっておる。時期に目を覚ますじゃろ」

 狐々愛の言った通り、数分後に目を覚ました。

「この度はご迷惑をおかけしました」

 目が覚めた後、奏鳴の祖父、鬼嶋新明しんめいは頭を深々と下げ謝罪した。

「構わぬ。それよりお主に聞きたいことがあるのじゃ」

「はて? 聞きたいこととは?」

 聞きたいこととは新明を襲った犯人のことだ。

「ううむ……すまんがはっきりとは覚えておりませんな。ただ奴が何か言っていたのは覚えておるぞ」

「そいつはなんて言ってたんだ?」

「確か…『ぬえの繁栄のために、よこしまな妖怪を排除する』、と」

「鵺……?」

鵺といえば悠火も知っている有名な妖怪だ。

「なあ、狐々愛。鵺って……」

 悠火の隣に立つ狐々愛は顔面蒼白で震えていた。

「鵺……じゃと? そんなまさか…」

 黒鬼と白鬼の二人も目を見開いて驚いている。

「そんな……あいつが生き返ったのか…?」

「そんなはずない! あいつが死ぬのは私たちもこの目で見たじゃない!」

 三人とも軽くパニックに陥っている。

「狐々愛、大丈夫か? 何なんだよその鵺って」

 深呼吸し呼吸を整えた狐々愛は静かに語った。

「鵺は遥か昔に存在した妖怪じゃ。別名、“妖怪の王”奴は力のみで全ての妖怪を支配した。歴史上最強最悪の妖怪じゃ」

「全開の僕が百人いたとしても、全く歯が立たないよ。何せあの十二天将でさえ従えてたんだから」

 狐々愛の説明に黒鬼が補足を入れる。

「そんなにやばい奴も封印されたのか?」

「いや、奴は死んだ。妾たち妖怪は人間に妖術を教え、戦力を増やして反撃の機会を伺っておったのじゃ」

「それって、つまり…」

「そう、彼らが後の妖術師。つまり妖術師は妖怪によって生まれた者なのじゃ。そして妖怪と妖術師の連合軍で奴を総攻撃し、十日間に及び休むことなく攻撃をした。そしてようやく奴を殺すことに成功したのじゃ」

「その総攻撃に僕も妹も、そして天狐も参加していた。だからこそ、奴の力は嫌という程わかる」

「けど、それなら復活なんてしないんじゃ」

「そのはずじゃ、じゃが心当たりがある」

「心当たり?」

「禁忌の術式、転魂輪廻てんこんりんね。別の生命体に自らの魂を上書きし、その体が朽ちる時、また別の生命体に上書きする。禁忌の中でも最大の禁忌、生命操作じゃ」

「そんなヤバい術式もあるのか……」

「もし奴がまだ生きておるのだとしたら、まずいことになる。ほとんどの妖怪が封印されておる今、奴を止めるすべがない」

 すると、これまで黙って聞いていた新明が口を開いた。

「妖怪は減りましたが、妖術師なら昔より遥かに沢山いますぞ?」

「ほ、本当か!? どこにおるのじゃ!」

「ここに行けばわかりますぞ」

 新明はそう言って一枚の紙を狐々愛に渡した。

「これは?」

「それは日妖連にちようれんへの招待状じゃよ」

「日妖連って?」

「日妖連、正式名称を“日本妖術師連盟”と言う。今の妖術師の総本山じゃ」



読んでいただきありがとうございます。コングです。

鬼篇は今回で終わりです。次回からはまた新章に入ります。お楽しみに。

この話を書いてる頃、僕は感染性胃腸炎でした。お腹痛い……

それではまた次回!



2020/5/5一部改稿

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