人外と友達になる方法
第27話 灯台下暗し 〜鬼篇〜
次の日の朝。
「奏、クマがひどいね」
「昨日寝れなかったんだよ」
「何かあった?」
「どうやらさ、黒鬼の感覚と俺の感覚がリンクしてるみたいでさ、俺が寝たくても黒鬼が寝なかったら寝れないんだよ」
それはなかなか不便だ。
早急に対策を練らなければ奏鳴が不眠症になってしまう。
「仕方ないじゃろ。黒鬼は本来夜の鬼じゃ。夜に活動的になるのは仕方ないことじゃ」
「何か対策ないの? 狐々愛ちゃん」
「今は黒鬼が憑依状態じゃからじゃ。依り代を用意してそっちに移せば問題ない」
「え! 黒鬼ってまだ俺の式神じゃなかったの!?」
「今はただ取り憑いておる状態じゃ」
「……今日家帰ってから契約しよ」
などと言っているうちに学校に着いた。
今日も平和な一日が始まる。
いつも通りのランチタイム。
四人で食べるのは最早恒例だ。
「式神の契約ってどうすんの?」
『先ずは依代の準備だ』
「先ずは依代の準備じゃな」
奏鳴の質問に妖怪二人が答える。
「依代っていうのは悠火のブレスレットみたいなやつのことだろ?」
「ああ、俺はこのブレスレットを狐々愛の依代にしたよ」
悠火と狐々愛の式神契約はこの数珠のブレスレットで繋がっている。
「黒鬼だけならこの指輪でいいんだけど、白鬼とも契約するとなると……どうしたらいいんだー!」
などと奏鳴が嘆いていると黒鬼が宥めるように言った。
『あぁ、それは大丈夫だ。僕と妹の依代は一つでいい。僕たちは二人で一人のようなものだからな』
「どゆこと?」
『僕と妹は双子なんだ。だから僕たちの依代は一つでいい。それに今は依代には入れない』
「入れないっていうのは?」
『妹がいないと僕との式神契約は出来ないってこと』
それは大変だ。
早急に白鬼の封印を解かないと、奏鳴の身体が持たない。
「白鬼はどこに封印されてるんだ?」
『この街に鬼の付く寺があるだろ?』
「え? それって鬼嶋寺か?」
『そうだ! そこに封印されている!』
悠火たち三人は顔を見合わせる。
「「それって……」」
「うちの爺ちゃんの寺じゃん……」
そうなのだ。
鬼嶋寺は奏鳴の祖父が住職を務めている寺だ。
ちなみに三人は初詣は毎年鬼嶋寺だ。
『何!? お前の祖父の寺に白鬼がいるのか!』
いつもは冷静な黒鬼も妹のこととあっては感情を露わにする。
「そういえば昔っから近くなって言われてた御神木があったけど……。まぁ、いるかどうかはわかんねぇけど、行くだけ行ってみようぜ。早く行きたい気持ちはわかるけど、学校が終わるまで待ってくれよな」
『くっ……今すぐにでも行きたいが、今の僕にはどうしようもないからな……その代わり学校が終わったらすぐ行くぞ!』
「わかったわかった」
やはり側から見ると奏鳴は独り言を言ってるだけの危ない奴に見えるがどうやら交渉は成立したようだ。
学校が終わると同時に奏鳴はダッシュで帰って行った。
「え! あいつもう帰ったのかよ!」
「何でも俺の内なる鬼が騒いでるとか何とか」
一見するとただの厨二病発言だが、奏鳴の場合本当に内なる鬼がいるのだ。
「黒鬼の勢いに奏が負けたってことか」
悠火と光秀が談笑していると、狐々愛が話に割り込んできた。
「笑ってる場合じゃないでしょ! 早く行くよ!」
まだ教室にはクラスメイトがいるため、狐々愛は標準語で話す。
「「はい….…」」
学校から鬼嶋寺までは走って十分の道のりだ。
「はぁ……はぁ……疲れた」
奏鳴は息切れしている。
学校から鬼嶋寺まで全力疾走してきたのだ、仕方あるまい。
『で! 白鬼はどこだ! 早く!』
黒鬼はグロッキーな奏鳴など気にも止めてない様子だ。
「爺ちゃんに聞いてみなくちゃな」
この時間ならまだいるはずだ。
しかし探しても見当たらない。
大方裏の掃き掃除でもしているのだと思い、奏鳴は寺の裏への回った。
「爺ちゃん?」
返事はない。
しかし、奏鳴は何やら嫌な予感がした。
『血の匂い……』
黒鬼がボソッと呟いた。
「爺ちゃん!」
奏鳴が急いで寺の裏へと走る。
そこには頭から血を流し倒れている祖父の姿があった。
そして、倒れている祖父の近くに佇む人影を捉えた。
「誰だテメェ!」
「僕に自己紹介の時間をくれるのかい? 優しいね。いいよ名乗ってあげる、僕の名前は天空だ」
その名を聞いた途端、奏鳴は震えが止まらなくなった。
否、これは奏鳴ではない、奏鳴の中の黒鬼が震えているのだ。
『天空……だと……?』
「ああ、そうだよ。僕の名前は天空だ」
黒鬼の声は奏鳴以外には聞こえていないはず。
にもかかわらず天空は黒鬼の声に反応した。
「君何か変だと思ったら、体の中に鬼がいるね。払ってあげるよ」
天空が奏鳴に手を伸ばす。
が、何も起こらない。
「あれ? おかしいな? あ、そうか器が適合しすぎてるんだね。なら、器ごと払うのが一番手っ取り早い」
「器ごとってことは、俺を殺すってことかよ」
「そう。飲み込みが早くて助かるよ」
天空はにっこりと微笑む。
「舐めんなよ! こっちは鬼だぜ!? お前みたいな人間が敵うかよ!」
『違う……』
黒鬼が今までにないほど弱い声で言った。
「違うって何が?」
奏鳴は黒鬼に聞いた。
『あいつは人間じゃない』
「は? どういうことだ?」
『あいつは妖怪だ。僕と同じ特級の、それも最高位級。十二天将の一角、“暗闇の執行人  天空”だ』
奏鳴は今一度天空の方を見た。
十二天将のことは狐々愛から聞いていた。
「嘘だろ……?」
暗闇の執行人が目の前でにっこにと笑っていた。
読んでいただきありがとうございます。コングです。
ついに出ました十二天将!
一人目は天空です。
十二天将のキャラは完全に作者の偏見によるものなので、本当の十二天将がどんなものかは正直知りません。
十二天将の説明はおいおいしていきます。
それではまた次回!
2020/5/5一部改稿
「奏、クマがひどいね」
「昨日寝れなかったんだよ」
「何かあった?」
「どうやらさ、黒鬼の感覚と俺の感覚がリンクしてるみたいでさ、俺が寝たくても黒鬼が寝なかったら寝れないんだよ」
それはなかなか不便だ。
早急に対策を練らなければ奏鳴が不眠症になってしまう。
「仕方ないじゃろ。黒鬼は本来夜の鬼じゃ。夜に活動的になるのは仕方ないことじゃ」
「何か対策ないの? 狐々愛ちゃん」
「今は黒鬼が憑依状態じゃからじゃ。依り代を用意してそっちに移せば問題ない」
「え! 黒鬼ってまだ俺の式神じゃなかったの!?」
「今はただ取り憑いておる状態じゃ」
「……今日家帰ってから契約しよ」
などと言っているうちに学校に着いた。
今日も平和な一日が始まる。
いつも通りのランチタイム。
四人で食べるのは最早恒例だ。
「式神の契約ってどうすんの?」
『先ずは依代の準備だ』
「先ずは依代の準備じゃな」
奏鳴の質問に妖怪二人が答える。
「依代っていうのは悠火のブレスレットみたいなやつのことだろ?」
「ああ、俺はこのブレスレットを狐々愛の依代にしたよ」
悠火と狐々愛の式神契約はこの数珠のブレスレットで繋がっている。
「黒鬼だけならこの指輪でいいんだけど、白鬼とも契約するとなると……どうしたらいいんだー!」
などと奏鳴が嘆いていると黒鬼が宥めるように言った。
『あぁ、それは大丈夫だ。僕と妹の依代は一つでいい。僕たちは二人で一人のようなものだからな』
「どゆこと?」
『僕と妹は双子なんだ。だから僕たちの依代は一つでいい。それに今は依代には入れない』
「入れないっていうのは?」
『妹がいないと僕との式神契約は出来ないってこと』
それは大変だ。
早急に白鬼の封印を解かないと、奏鳴の身体が持たない。
「白鬼はどこに封印されてるんだ?」
『この街に鬼の付く寺があるだろ?』
「え? それって鬼嶋寺か?」
『そうだ! そこに封印されている!』
悠火たち三人は顔を見合わせる。
「「それって……」」
「うちの爺ちゃんの寺じゃん……」
そうなのだ。
鬼嶋寺は奏鳴の祖父が住職を務めている寺だ。
ちなみに三人は初詣は毎年鬼嶋寺だ。
『何!? お前の祖父の寺に白鬼がいるのか!』
いつもは冷静な黒鬼も妹のこととあっては感情を露わにする。
「そういえば昔っから近くなって言われてた御神木があったけど……。まぁ、いるかどうかはわかんねぇけど、行くだけ行ってみようぜ。早く行きたい気持ちはわかるけど、学校が終わるまで待ってくれよな」
『くっ……今すぐにでも行きたいが、今の僕にはどうしようもないからな……その代わり学校が終わったらすぐ行くぞ!』
「わかったわかった」
やはり側から見ると奏鳴は独り言を言ってるだけの危ない奴に見えるがどうやら交渉は成立したようだ。
学校が終わると同時に奏鳴はダッシュで帰って行った。
「え! あいつもう帰ったのかよ!」
「何でも俺の内なる鬼が騒いでるとか何とか」
一見するとただの厨二病発言だが、奏鳴の場合本当に内なる鬼がいるのだ。
「黒鬼の勢いに奏が負けたってことか」
悠火と光秀が談笑していると、狐々愛が話に割り込んできた。
「笑ってる場合じゃないでしょ! 早く行くよ!」
まだ教室にはクラスメイトがいるため、狐々愛は標準語で話す。
「「はい….…」」
学校から鬼嶋寺までは走って十分の道のりだ。
「はぁ……はぁ……疲れた」
奏鳴は息切れしている。
学校から鬼嶋寺まで全力疾走してきたのだ、仕方あるまい。
『で! 白鬼はどこだ! 早く!』
黒鬼はグロッキーな奏鳴など気にも止めてない様子だ。
「爺ちゃんに聞いてみなくちゃな」
この時間ならまだいるはずだ。
しかし探しても見当たらない。
大方裏の掃き掃除でもしているのだと思い、奏鳴は寺の裏への回った。
「爺ちゃん?」
返事はない。
しかし、奏鳴は何やら嫌な予感がした。
『血の匂い……』
黒鬼がボソッと呟いた。
「爺ちゃん!」
奏鳴が急いで寺の裏へと走る。
そこには頭から血を流し倒れている祖父の姿があった。
そして、倒れている祖父の近くに佇む人影を捉えた。
「誰だテメェ!」
「僕に自己紹介の時間をくれるのかい? 優しいね。いいよ名乗ってあげる、僕の名前は天空だ」
その名を聞いた途端、奏鳴は震えが止まらなくなった。
否、これは奏鳴ではない、奏鳴の中の黒鬼が震えているのだ。
『天空……だと……?』
「ああ、そうだよ。僕の名前は天空だ」
黒鬼の声は奏鳴以外には聞こえていないはず。
にもかかわらず天空は黒鬼の声に反応した。
「君何か変だと思ったら、体の中に鬼がいるね。払ってあげるよ」
天空が奏鳴に手を伸ばす。
が、何も起こらない。
「あれ? おかしいな? あ、そうか器が適合しすぎてるんだね。なら、器ごと払うのが一番手っ取り早い」
「器ごとってことは、俺を殺すってことかよ」
「そう。飲み込みが早くて助かるよ」
天空はにっこりと微笑む。
「舐めんなよ! こっちは鬼だぜ!? お前みたいな人間が敵うかよ!」
『違う……』
黒鬼が今までにないほど弱い声で言った。
「違うって何が?」
奏鳴は黒鬼に聞いた。
『あいつは人間じゃない』
「は? どういうことだ?」
『あいつは妖怪だ。僕と同じ特級の、それも最高位級。十二天将の一角、“暗闇の執行人  天空”だ』
奏鳴は今一度天空の方を見た。
十二天将のことは狐々愛から聞いていた。
「嘘だろ……?」
暗闇の執行人が目の前でにっこにと笑っていた。
読んでいただきありがとうございます。コングです。
ついに出ました十二天将!
一人目は天空です。
十二天将のキャラは完全に作者の偏見によるものなので、本当の十二天将がどんなものかは正直知りません。
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2020/5/5一部改稿
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