人外と友達になる方法

コング“シルバーバック”

第24話 大捜索の下準備 〜鬼篇〜

 悠火たち三人が部屋でゲームをして遊んでいると、狐々愛が妖域から戻って来た。

「うぉ! ビックリした!」

 妖域から帰ってくる門を悠火の部屋の真ん中に繋いだため、急に目の前に現れた門から出て来た狐々愛に悠火たちが驚気の声を上げる。

「おお、すまんの悠火驚かせて」

「いや、いいけどさ。おかえり狐々愛」

「ただいま」

 そこでようやく狐々愛は部屋に悠火以外の人間がいることに気が付いたらしい。

「お、二人とも来ておったのか」

「お邪魔してます、狐々愛さん」

「ヤッホー狐々愛ちゃん」

 狐々愛も二人にはだいぶ打ち解けたようで、かなりフランクに話せるようになった。

「汚い部屋じゃがゆっくりして行ってくれ」

「ここ俺の部屋なんですけど!」

 狐々愛は悠火に対しては本当に遠慮がない。
 いくら仲良くなったとは言え、二人に対しては遠慮くらいしている。
 どうにかしていつか主従関係をわからせる必要がありそうだ。

「なあ、狐々愛ちゃん」

「ん? 何じゃ?」

「妖域? ってどんなところだったの?」

 確かにそれは三人とも気になっていたことだ。
 地獄みたいなところなのか、それともこちらの世界と対して変わらないのか、江戸のような昔の街並みなのかなどなど議論が白熱していたのだ。
 特に光秀なんかは目をキラキラさせている。

「どんなところ……か……」

狐々愛は言葉を詰まらせる。

「妖域には様々な場所がある。今回妾が行ったのは奈落という場所での、草木も生えないような枯れた土地じゃ。そこには封印された妖怪が収容される妖封牢ようふうろうがある」

「封印……雷王に会って来たのか?」

 狐々愛は深刻そうな顔をして頷く。

「うむ。奴に聞きたいことがあったのでな……」

「何の話か聞いてもいいか?」

 今まで気を使って聞いてこなかったが、狐々愛の深刻そうな様子は見るに耐えなかった。
 ならせめて力になれずとも相談相手になってあげたいと思ったのだ。

「ああ、お前たちには話しておこう。雷王に妾が封印されてからの話や人間と妖怪が戦っておった時の妖怪側の話を聞いたのじゃ」

 狐々愛は三人に自分の過去のことを話た。
 しかし火乃香のことだけは、自分を助けてくれた妖術師とだけ説明し、名前や素性は明かさなかった。

「そんな話、歴史のどの文献にも載ってないよ」

「俺も学校で習った覚えはねぇな」

 光秀と奏鳴は二人とも口を揃えて知らないという。
 それは悠火も同じで、聞いたこともない話だった。

「当然じゃ。本来妖術師も妖怪も、表舞台に立つことはない。おそらくあの戦も天災や人間同士の戦と改竄されておるじゃろう」

「それで、雷王の立てた仮説っていうのはどんなものなの?」

 光秀は冷静に質問をする。
 しかし流石の光秀でも整理が追いつかないのか、手にはメモとペンが握られている。

「そうじゃな……奴が立てた仮説はこうじゃ」

 三人は狐々愛の顔を見つめ、一言も聞き逃さないようにする。

「封印を逃れた妖怪が、封印された妖怪の封印を解き、再び人間と戦おうとしておるのではないか。そしてその規模は四百年前の比ではないかもしれない、というものじゃ」

 四百年前に起こった惨劇を知った三人にとってはそれを超える規模の戦いなど想像もつかない。
 しかし雷王の仮説には少し不可解な点があった。

「ちょっと待てよ、単に封印を解くだけなら戦力が増えるのはおかしいだろ?」

 仮に封印されている妖怪全てを自由にしたとしても、その規模は四百年前と変わらないはずだ。
 寧ろ文明が発達している分、人間側が圧倒的に有利だと思うのだが、刀が効かないのなら銃や大砲なんかもダメなのかもしれない。

「それは妖怪には奥義とも言える技があるからじゃ」

「奥義……?」

「その奥義とは“憑依ひょうい”。憑依された人間は妖怪単体の戦闘力の数倍から数十倍になると言われておる」

 憑依という言葉を悠火は聞いたことがある。
 霊や妖怪といった異形の類を体に宿すことだ。
 しかしそのほとんどに対してマイナスなイメージしかない。
 唯一プラスのイメージを持てるのは降霊術くらいなものだ。

「そして、タチが悪いことに奴らは人間の了承なく憑依する」

「その場合、憑依された人間はどうなるんだ?」

「最悪、死に至る。死なないにしても体にかなりのダメージが残ることになる」

 四人の間に沈黙が流れる。
 その沈黙を破ったのは奏鳴だった。

「その憑依を避ける方法はないのか?」

「あることにはある。お主らにはこれを渡しておく」

 狐々愛は懐から何かを取り出し三人に渡した。
 それはお守りだった。

「それには妾が術式を込めておる。下級、上級の妖怪ならこれを持っておる限り憑依される心配は無い。特級もある程度なら大丈夫なはずじゃ、しかし神獣や十二天将ほどになると流石に無理じゃがな」

 殆どの妖怪からの憑依を防げるならありがたい。

「そういえば妖怪って全部僕たちの目に見えるのかな?」

 光秀が核心を突いた質問をする。
 確かに妖怪の姿が見えないのなら、気をつけようが無い。

「普通の状態なら特級だろうが目には見える。しかし姿をくらます術を使われると普通の人間には見えるじゃろうな。光秀、その眼鏡を貸してみよ」

 光秀は言われた通り眼鏡を狐々愛に渡す。
 狐々愛は受け取った眼鏡に呪文のようなものをかけると、眼鏡を光秀に返した。

「これで妖怪が見えるようになったはずじゃ」

「え? もう?」

 光秀が珍しく間抜けな声を出す。

「奏鳴はいつも身につけているものはあるか?」

「ん〜と、これはどうだ?」

 そう言ってポケットから取り出し狐々愛に渡したのは金属製の指輪だった。

「お前、いつもこんなの付けてたか?」

「いつもは付けずにポケットに入れてるんだよ。流石に校則違反だからな」

 差し出された指輪を狐々愛はまじまじと見つめている。

「奏鳴、これはどんな代物なのじゃ?」

「ん? 爺ちゃんが昔付けてたんだよ。で、俺が中学入った時にお祝いでくれたんだ。本当はゲームとか漫画が良かったんだけど」

 お爺さんがせっかくくれたというのに。
 まったく罰当たりな奴だ。

「なるほどのう……なかなかの念が込められておる……大事にするのじゃぞ」

 狐々愛は術を込めた指輪を奏鳴に返した。

「これで、三人の妖怪対策は万全じゃ」

 悠火には狐々愛の憑代となっているブレスレットがあるので、もともと妖怪を見ることができるのだ。
 案外身近なところに妖怪はいて、コダマと呼ばれる無害な妖怪、正確には微精霊があちこちにいる。

「よし! これで妖怪の噂話を集めやすくなったな!」

「そうだね。これからは僕も積極的に噂話を探してみるよ」

「頼んだぞ。妾たちも探してみることにする」

 こうして四人の噂話大捜索が始まった。




読んでいただきありがとうございます。コングです。

過去篇も終わり、これからは現代での活動になります。
次回は遂に新キャラが出るかも?
お楽しみに!

それではまた次回!



2020/5/4一部改稿

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