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コング“シルバーバック”

第23話 また逢う日まで 〜狐々愛過去篇〜

「間に合いました」

 狐々愛が顔を上げると、そこには息を切らした火乃香が立っていた。

「火乃香……た、大変じゃ! 何者かが術式を!」

 狐々愛は自分が妖術にかかったことを必死に伝えようとする。

「違います、逃げてください! 天狐様にかけられた術式はハルアキ様がかけたものです」

「ハルアキが? どうして妾に」

「ハルアキ様は天狐様のことも封印するおつもりなのです」

 狐々愛は驚いた顔をしたが反論することもなくただ黙っている。

「術式は僕が解除します。だから早く……!」

「無駄じゃ……妾も何度も開封を試みたが駄目じゃった。妾に解けんものをお主に解けるはずがない」

「そんな! 諦めないでください!」

「………」

 狐々愛は何も言わない。
 本当に突破口が無いのだ。

「うっ!」

 突然狐々愛が苦しみ始めた。

「天狐様! 大丈夫ですか!?」

「いよいよ……限界が近そうじゃ」

 妖怪も人間も体内にある妖力を使い切ることは、命の終わりを意味する。
 術式によって妖力を奪われ続けた狐々愛は既に元々の十分の一程度の妖力しか残っていない。
 狐々愛は苦痛に顔を歪めながらも、火乃香に心配をかけまいと必死に表情を取り繕ってる。

「何か、何か方法は無いんですか!?」

「無い……妾はこのまま妖力が尽きて死ぬ……」

「ちくしょう!」

 火乃香は自分の無力さを呪った。
 自分にもっと妖力ちからがあれば。
 もう一縷の望みも無いのだろうか。
 火乃香は必死に頭を働かす。

『妾はこのまま妖力が尽きて死ぬ』

『その前に妖力が尽きて死ぬと思うがな』

『このまま妖力を使い続けるとあと半刻としないうちにくたばるだろう』

その時火乃香の頭に一つの案が浮かんだ。

「天狐様……妖力が尽きない限り天狐様は死なないのですか?」

「そうじゃな……妖力が無くならん限り、我ら妖怪は死なん。じゃが、それがどうした?」

 狐々愛が死なずに済むかもしれない、たった一つの可能性、それは。

「天狐様を私が封印します」

「何じゃと?」

「天狐様の妖力が尽きる前に私が天狐様を封印するんです。そうすれば天狐様は死なずに済むはずです」

「馬鹿なことを抜かすな! お主は上級妖術師ではないか! 上級一人の妖力ちからで妾を封印できるものか!」

 強大な妖力を持つ妖怪を封印するためには、それ相応の妖力が必要となる。
 特級妖怪である狐々愛を封印するためには、最低でも上級妖術師五名か、特級妖術師二名は必要である。

「それでも、やるしかなんです! 今の天狐様はほとんど妖力が尽きた状態、今なら私でも封印出来ます」

「ならん! 少しでもお主に危険があるようなことをさせるわけにはいかん! 約束……約束を……生きて帰る約束をしたではないか!」

「私はここで死ぬつもりは毛ほどもありません。私はまた天狐様と一緒に過ごすために、今全力を尽くすのです!」

 火乃香の意思は狐々愛が思っている何倍も何十倍も硬いものだった。

「天狐様、時間がありません。わかっていただけますね?」

「……ああ、わかった。お主に封印されてやろう」

 火乃香を信念を動かすことはもう狐々愛には無理であった。
 そして、一度告白を断った狐々愛のことを今もこんなに思ってくれていることが堪らなく嬉しかった。

「それでは、封印の術式を始めます」

 火乃香は狐々愛の目を見て言う。
 狐々愛もそれに答えるように頷く。
 火乃香は封印符を取り出し、妖力を込め直す。

不滅妖王陰陽封印符ふめつようおうおんみょうふういんふ

 妖力を込め直した妖符を狐々愛に向け、術式発動の妖力を込める。

「お別れですね、天狐様……」

「またな、火乃香……」

「はい……また会いましょう、天狐様」

 狐々愛の体が一瞬眩い光を放った。
 この光が消えたら、狐々愛は封印されてしまう。
 せめて最後に火乃香の姿を見ておきたかった。
 しっかりと火乃香の姿を目に焼き付けた狐々愛は心に誓った。
 この封印が解かれた時、そこに火乃香が居たならばもう一度あの質問に答えよう。
 今度は、きっと違う答えを伝えられるはずだ。
 光が消えたとき、そこにはもう狐々愛はおらず、狐の面が一つ転がっていた。

「さよなら、天狐様」

 答える声は無い。

「悲しむことは無い。貴様もすぐに後を追わせてやる裏切り者が!」

 火乃香の背後にはいつの間にか、妖術師たちが立っていた。

「と言いたいところだが、ハルアキ様から生きて連れ戻せとの命令だ。命拾いしたな。捕らえよ」

 火乃香は数人の妖術師に捕まり、手足を拘束され、ハルアキの元へと連行された。
 後には狐の面だけが取り残されていた。




「妾が知っておるのはここまでじゃ。この後何が起きたのかお主は知っておるのじゃろ?」

「ああ、知っている……」

 雷王は弱々しい声で言った。

「教えてくれ、雷王。お主だけが頼りなんじゃ」

 狐々愛が懇願すると、雷王は重たい口を開いた。

「どうやらハルアキの術式は半分だけ成功したらしい」

「半分?」

「そうだ。あの術式で日本中の下級妖怪とほとんどの上級妖怪は封印された。だが特級と一部の上級妖怪は封印を免れたんだ。だがまあ、術式のせいで妖力が枯渇して、そのあと妖術師共に殆どが封印されたがな」

「妾が術式の途中で封印されたからか……」

「恐らくそうだろうな。我も封印は免れ、風の噂でお主は封印されたと聞いた。そして、妖怪を庇った裏切り者の妖術師は見せしめに島流しになったとも」

 それは狐々愛がどうしても聞きたかった火乃香のその後であった。
 島流しとは命こそ奪わないものの、殆ど死罪と変わらない。
 しかし今はそのことよりも火乃香が生きていたことの方が大事だった。

「そうか、火乃香は殺されてはおらんかったのじゃな……よかった……よかった……」

 火乃香の生死を知らぬまま封印され、次に目を覚ますとそこは四百年後の日本。
 狐々愛の不安は相当なものだったのだろう。

「しかし中には封印されなかった妖怪もいた」

「誰じゃ?」

「四神を始めとする、特級の中でも最高位の十二匹の妖怪。十二天将じゅうにてんしょうたちだ」

「十二天将……じゃと?」

「奴らは式神としてハルアキに仕えていたからな……当然といえば当然か……」

「そうか……奴のあの妖力は十二天将を使役していたからか……」

「そしてもう一つ思い出したことがある」

 雷王が今までよりも神妙な面持ちで言う。

「我の封印を解いた牙狩という男。奴は人間ではなかった。いや、正確には元人間だ」

「ど、どういうことじゃ!?」

「落ち着いて聞け天狐。もしかすると四百年前の戦の再来になることが近々起こるかもしれない」

 そして雷王の予想は、最悪の形で実現することとなる。




読んでいただきありがとうございます。コングです。

一応過去篇ひと段落です。ふ〜長かった、うん。長かったです。

十二天将、カッコいいですね響きが。これから沢山妖怪出していきますが、前も言った通り「そんな妖怪知らん」とか「何こいつ?」とかそう言った意見は聞きません。

それではまた次回!



2020/4/24一部改稿

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