人外と友達になる方法

コング“シルバーバック”

第19話 400年越しの記憶 〜狐々愛過去篇〜

 今から約四百年前、日本各地で人間と妖怪による戦が勃発していた。

「くそっ! 奴らには刀も効かないのか?」

 身体中を怪我した男が握る刀は半分程で折れている。

「人間ごときが無駄なことを。大人しく我ら妖怪の配下となればよいのに」

 その男にそう告げるのは、三メートルを優に越える体躯を持った河童だ。
 手には男の刀の半分が握られている。
 河童は素手で刀を折ったのだ。

「侍の誇りにかけて、敵に与するようなことはせん!」

 男は捨て身で、折れた刀を高く掲げて河童に襲いかかる。

「誇りじゃメシは食えねぇよ、そんなに誇りが大事なら、そのちっぽけな誇りと共に死ね」

 妖怪の展開した術式が男を襲う。

「術式展開・魔風壁まふうへき

 しかし、術式は男に当たる前に何かに阻まれて消えた。

「大丈夫か?」

 男の後ろから和装を身に纏った少女が現れる。

「天狐様!」

 四百年前の天狐、すなわち現在の狐々愛である。

「今ここで妾に祓われるか逃げるか決めよ!」

 河童と対峙する狐々愛は鋭い眼光と、低く唸るような声で選択を迫る。

「裏切り者が……調子に乗るんじゃねぇ!」

 河童は更に身体を大きくし、渾身の拳を振るう。
 しかし、狐々愛は手を前に突き出しあっさりとその拳を触れることなく弾く。
 拳を弾かれた河童は衝撃で後ろによろめく。

「術式展開・封縛陣ふうばくじん

 妖怪の足元に陣が浮かび上がり、光り始める。
 そして鎖のようなものが河童の身体をがんじがらめにして自由を奪う。

「貴様ぁ! やはり本当に裏切ったのだなぁ! こんなことをして許されると思うな!」

 河童は鬼の形相で狐々愛を睨みつけて激怒している。
 それに対し狐々愛は至って冷静だった。

「先に掟を破ったのはお主らの方じゃぞ? 大人しく祓われよ」

 河童を縛り付ける鎖が妖しい光を発し始める。

「ちくしょぉぉぉ!」

 そう言い残して河童は跡形もなく消滅した。
 河童が消滅した後、そこにはただ静寂が流れるだけだった。

「立てるか?」

 後ろで倒れている男に手を伸ばす。

「はい、ありがとうございます」

 男は傷だらけで見ているだけで痛々しい。
 治癒術式をかけてやっても良かったが、この程度ならきちんとした処理を施せば人間の医術で何とかなると思い、妖力を温存することにした。

「傷が悪化してはいかん。早く診てもらえ」

「はい」

 男は足を引きずりながら本陣へと帰っていった。

「さて……行くか」

 一人残った狐々愛は何処かへ向かって歩き出した。




「敵陣へ攻めていた軍団が全滅してようです」

「人間ごときに我々妖怪が遅れをとるとは思えん……やはり奴が裏切ったというのは本当らしいな」

 部下からの報告を受けた妖怪は無意識に禍々しい妖力を垂れ流す。
 その妖力に部下は怯えている。

「……天狐様ですか?」

 部下がそう言うと、妖怪は大声上げて激昂する。

「奴に様など付けるな! 我らが奴の部下だったのは最早昔の話だ」

「申し訳ございません……」

 痺れを切らした妖怪の大将は部下たちに命じた。

「いつまでもこんな戦をするわけにもいかぬ! いいかお前たち! 次の進軍で人間共を蹂躙する!」

「「「おお!」」」




 妖怪と人間の最初の戦いから一週間が経過した。
 狐々愛は次の襲撃に備えていた。

「よいか! 妖怪の使う妖術に人間が対抗するにはこちらも術式を使うしかない」

 狐々愛の言葉に集められた武士たちは戸惑いの表情を浮かべている。
 本来なら、自分たちの剣術は通用しないと言われ激怒しても良い場面だが、自分たちの力が通用しないことは本人たちが一番わかっている。

「人間にも術式は使えるのですか?」

 集まった武士の一人が質問した。

「うむ、いい質問じゃ。習得は容易ではないが、しかし習得さえすれば人間の術式の方が質は上なのじゃ」

「それはどうして?」

「妖怪は自身の体内にある妖力しか使えぬが、人間は周囲に漂う妖力を使うことができるのじゃ、じゃからちゃんと使えれば人間の術式の方が制度が高いというわけじゃ」

「なるほど……して、その習得方法とは?」

「習得するには最低でも十年の鍛錬がいる。それこそ天才でもない限りな。じゃからお主らが妖怪共と術式で渡り合うためには十年の年月が必要となる」

 武士たちの戸惑いは更に大きくなる。
 敵は十年も待ってはくれない。
 仮に待ってくれるとしても、十年修行して戦うなどあまりにも現実味のない話だ。

「それじゃ、儂らはどうしたら」

 男が心配そんな顔をする。

「心配は無用じゃ、お主ら入って参れ」

 狐々愛が言うと、建物の奥からぞろぞろと同じ格好をした一団が出てくる。

「此奴らは極秘裏に全国で活動をしておる妖術師たちじゃ、この戦を終わらせる為集まってもらった」

「この者たちが術式を使えるのですな?」

「左様じゃ、この者たちに妖怪たちの封印をしてもらう」

「では、我らは何をすれば?」

 先程とは別の武士が質問する。

「お主らには町人たちの避難と後方での支援を頼みたい」

 戦うために鍛えてきた武士たちにとってその要求は呑み難いものだった。

「天狐様! それは武士に対する侮辱ですぞ! 武士たる者戦いに死ぬことこそ本望!」

 質問してきた武士はそう食ってかかってくる。

「そうです! 戦わずして何が武士だ!」

「そうだそうだ!」

 武士たちは次々に思い思いの不平不満をぶちまける。
 その言葉を聞いた狐々愛は深く息を吸って大声を上げる。

「其方らの母上は死ぬために腹を痛めて産んだのではないぞ! 其方らの父上は負けるために刀を教えたのではないぞ!」

 狐々愛の言葉に反論をする者はいなかった。

「其方らにしか出来ぬ事もある。其方らにしか救えぬ命があるのじゃ」

 しばらくの沈黙の後、一人の男が言った。

「そうだ、死んでたまるか! ここで死んだらもう餅が食えんではないか!」

「そうだ! 儂もまだ酒を飲み足らんぞ!」

「儂も!」

「俺だって!」

 武士たちの士気が上がり、いよいよ決戦の時が近づいて来た。

「誰一人として死ぬことは許さん! 全員で勝ってこの戦を終わらせるぞ!」

「「「おお!」」」




この時はまだ誰も知らなかった、この戦がどれだけ凄惨な最期を迎えるのかを………




読んでいただきありがとうございます。コングです。

これが今年最後の投稿になります。今年は本当にお世話になりました。
来年も日々精進して参りますので応援よろしくお願いします。

さて、ここでご報告がございます。
私コングは、数名のノベルバ作家と共にグループを作って活動しております。
そこで共に活動する仲間たちの作品を後書きにて紹介していこうと思います。

まず一人目は我がグループの紅一点、『にぃずな』先生です。


作品名:『転生10回目なんですが、その度異世界を救う身にもなってください!』

ジャンル:ファンタジー

あらすじ:主人公のミフユ=シャルティアが、10回目の異世界を奮闘する物語。
学校へ行ったり、冒険したりする。

見所:ストーリーの内容と、主人公達の感情豊かなところです。

お知らせ:キャラクター募集します。抽選で2名様のキャラを採用します。コメント欄に書いてください。
詳細はお手数お掛けしますが、『色々なもののお知らせ』をご参照下さい。(モブキャラになってしまいますが、ご了承ください。)


二人目はグループ最年少(自称)三歳の鬼才。
『guju』先生です。



作品名:転生〜最強貴族の冒険譚〜

あらすじ:異世界に転生した狐月 湊
地球では家庭環境、友人関係共に最悪だったものの、転移先では最初は順風満帆、幸せな人生を送っていた。
だが、突如何者かによりその幸せは崩れ去る。
全てを失った彼は、異世界でどう生きるのか!?


どちらの作品も作者の工夫、アイデア、そして作家魂が垣間見える作品となっております!
お2人の他にも我々Fictionalizerには多数の実力派作家が在籍しています。
会員は常に募集しているので、新人熟練問わず大歓迎です。
参加方法はTwitterからFictionalizer(総括府)にメッセージを送るだけ!
皆さんと共に語り合える日を楽しみにしています!


それでは皆さん! 良いお年を!



2020/4/24一部改稿

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コメント

  • 白葉南瓜

    何度も言わしてもらおう…続きが楽しみですしょうがない、以上だ。

    1
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