人外と友達になる方法

コング“シルバーバック”

第15話 カミングアウト 〜雷王篇〜

 雷王が再び暴れないように、狐々愛が妖術で拘束する。
 いくら狐々愛が強いとは言え、もう一度先ほどのような隙を作らなければ勝つのは難しい。

「雷王……話を聞かせてもらうぞ」

 狐々愛の声は普段とは違い暗く怒りを孕んでいた。
 普段の狐々愛からは想像もつかないほどに。

「……好きにしろ」

 雷王に抵抗する様子はない。

「先ず、お主の封印はいつ誰に解かれたのじゃ?」

「我は牙狩きばがりと名乗る者に封印を解いてもらった。時期は今から二ヶ月程度前のことだ」

「牙狩?」

 その名前に狐々愛は心当たりはないようだった。
 そんな名前の妖怪がいるのかとも思ったが、狐々愛の反応を見るに違うようだ。

「力を貸すなら封印を解くと言われ、我は了承した。それからの記憶はほとんどない」

「記憶が無いじゃと?」

「ああ……ただ暴れろと命じられたことはうっすらと覚えている」

 雷王の封印を解いた牙狩とは一体どんな人物なのだろう。
 今の情報では男か女かも、もっと言えば人間なのかどうかも怪しい。
 狐々愛と渡り合う強さからも、雷王が高位の妖怪だというとは明白だ。
 そんな妖怪の封印を簡単に解く牙狩とは一体何者なのだろうか。
 そして雷王の封印を解いて暴れさせた目的も気になる。

「どんな理由があれ、お主が人間を傷つけたことは事実。妾たち妖怪の掟忘れてはいまいな?」

「ああ、わかっている。然るべき罰は受ける」

「お主にはまだ聞きたいことがある。本当なら直ぐに永劫封印じゃが……今回は話を聞いてからじゃ」

「………好きにしろ」

 そう言って項垂れる雷王にはもう先ほどまでの気迫や圧はなかった。
 悠火には、罰を受け入れ抵抗もしない姿がとても印象深かった。

「術式展開・封縛門ふうばくもん

 雷王の背後に出現した門に、雷王は吸い込まれ消えていった。
 こうして、雷王との戦いは終わった。
 終わってみると短い時間だったが、緊張していたためかどっと疲れが押し寄せてくる。
 それは狐々愛も同じだろう。
 いや、かつての同胞を相手にした狐々愛の心はもっとボロボロになっているはずだ。

「さて、お主らのことじゃが」

 狐々愛は後ろで静かに事の成り行きを見ていた奏鳴と光秀の方を振り向く。
 そういえばまだ対処しなければならないことがあったのだ。
 悠火も二人の方へと向き直す。

「え!? 何?」

「妾の秘密を知ったからにはそれ相応の対象が必要じゃろう」

「そ、そんな!」

 奏鳴は今にも泣き出しそうだ。

「仕方ないとはいえ、悠火の友人に術をかけるのは心が痛む」

 前に一回記憶改竄しただろ、とつっこみたいのをぐっと堪える。
 狐々愛は二人に向かって手を伸ばした。

「それでは……」

「待った」

 狐々愛の手がピタッと止まる。
 狐々愛を止めたのは他でも無い悠火だった。

「何じゃ悠火」

「二人の記憶を上書きするのは待ってくれ。これは命令だ」

「……命令ならば仕方がないのぉ」

 狐々愛はゆっくりと手を下ろす。
 式神のルール其の三、式神は使役者の命令に逆らえない、だ。

「二人の記憶は残してくれ。その方がいい」

「なんでじゃ?」

「妖怪の予備知識とかがあった方がこの先安全だろ?」

 もしこの先今回のように妖怪による事件が起きた時、予備知識があるのとないのでは大違いだ。

「じゃが、妾のこともバレたままでいいよいのか?」

「いいじゃねぇか。俺たち三人はお前の友達だろ? 友達に秘密は良くないぞ。お父さんは友達に隠し事をするような悪い子に育てた覚えはないぞ?」

「父親づらするでない! 友達……友達か……」

 狐々愛は口を膨らませる。
 しかし、すぐに嬉しそうな顔でニヤける。
 部活の件で分かったが、狐々愛は友達と言う言葉に特別敏感だ。
 今後何か頼みにくいことがあった時には友達をダシに使うのもいいかもしれない。

「どした? ああ、そうか。お前友達が欲しかったんだよな? なら良かったな、三人も友達が出来たぞ!」

「うるさい!  別に妾は……」

「そんなわけだからさ、お前らこれからも狐々愛と仲良くしてやってくれね?」

 悠火は何が起きたのかわからず置いてけぼりの二人にそうお願いする。

「悠火……昔から妖怪は嫌われ者じゃ。そんなわがままが叶うなど……」

 狐々愛の声はどんどん尻すぼみになって行く。

「「もちろん」」

 しかし、そんな狐々愛の心配を他所に、奏鳴と光秀は声を揃えて承諾の返事をする。

「……え?」

 狐々愛は戸惑いの声を上げる。

「妖怪だろうと何だろうと、狐々愛ちゃんが命の恩人なのは変わりない。それに狐々愛ちゃん可愛いからな!」

「妖怪なんていないって思ってたけど、今のを見たらもうそうはいかないからね。これからは、妖怪が存在する事を証明してみたいと思うよ」

 それぞれ理由は違えど、狐々愛の事を寛大に受け入れてくれた。
 それにこの二人は悠火が唯一親友と呼べる二人だ。
 狐々愛の秘密を話すようなことはしないだろう。

「……ありがとう……なのじゃ」

「……思ったこと言っていい?」

 奏鳴がいつになく真面目な顔で言った。
 奏鳴がこんな顔をするのはお気に入りのアイドルの話をしている時ぐらいだ。

「な、なんだよ……」

 もしかすると狐々愛について何かあるのかもしれない。
 その剣幕に押され、悠火は少したじろぐ。

「狐々愛ちゃんのその喋り方たまらなくきゃわいい!」

 心配して損した。



読んでいただきありがとうございます。コングです。

更新が滞ってしまい、申し訳ございませんでした。
作者が冬休みに入ったので、少し更新速度が上がるかもしれません。でも、補習と課題に追われてるので上がらないかもしれません。

それではまた次回!



2020/4/18一部改稿

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