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人外と友達になる方法

コング“シルバーバック”

第4話 幼女妖狐 〜洞窟篇〜

 妖狐と名乗った少女は見た目十歳程度の小学生にしか見えない。

「誰が十歳じゃ!」

 口に出していないにも関わらず、悠火が思ったことを見事言い当てた。
 どうやら妖狐は人の心が読めるらしい。
 しかし、どう見ても十歳、甘く見積もってもせいぜい十二歳だ。

「儂を前におしゃべりとは、随分と余裕だな小娘」

 妖狐は河童の方を向くと口を膨らませてムッとした顔をする。

「じゃから、妾は子供ではないと言っておるではないか!」

 そう言う妖狐の姿は思うようにいかず駄々をこねる子供にしか見えない。
 実際こんな風に駄々をこねる子供を近所のスーパーで見たことがある。

「ふん……そんな尽きかけのの妖力で何ができる」

「妖力だけで相手を見てはならんぞ? 年長者からの教えじゃ」

 妖狐は余裕の笑みを浮かべる。
 そしてくどいようだが目の前にいるのは年長者ではなく幼女だ。

「小賢しい……どちらが上の存在か教えてやる必要があるな……」

 すると河童の体がみるみる大きくなっていく。
 あっという間に天井まで届くほど大きくなった。

「おー、凄い妖術じゃの! 見くびっておった。じゃが、そんなんじゃ妾には敵わんぞ?」

「まだ言うか! 小娘が!」

 河童が丸太のように太い腕を振り上げ、振り下ろす。
 しかし妖狐は避けるそぶりを見せない。
 それどころかどこか余裕があるようにも見える。
 急に目の前に現れたり、河童を見ても驚かなかったり、獣の耳や尻尾が生えているのを見るに明らかに少女は人間ではない。
 けれど、それは心配しない理由にはならない。
 悠火は少女を守るために無我夢中で手を伸ばした。

「危ない!」

 咄嗟に悠火は叫んだ。
 しかしそんな悠火の必死の呼びかけへの少女の返答は簡素なものだった。

「心配するな、見ておれ」

 そう言って妖狐は白く細い腕で迫り来る丸太の如き腕を止めようとする。

「潰れろぉ!」

 鬼のような形相を浮かべた河童の巨大な腕が少女めがけて振り下ろされる。
 このままでは確実に少女は潰れてしまうだろう。

「頭が高いぞ」

 河童の腕が妖狐を叩き潰す……その直前で肘から先が弾け飛んだ。

「何だと!? 貴様何をした!」

 動揺しているのは悠火だけではないようだ。
 河童も同様を隠せず目を見開いている。

「はぁ……じゃから言ったではないか、其方では妾に敵わんと」

 妖狐はため息交じりに言った。

「黙れぇ!」

 河童は残った左腕で水を大砲のように撃つ。
 先程の水滴とは比べ物にならない勢いと量の水が少女に向かって放たれる。
 そして河童の放った水は妖狐に命中し、土煙をあげる。

「はぁ……はぁ……ざまあみやがれ、ザコ妖怪が……儂に逆らうからだ」

 少しずつ土煙が晴れる。
 しかし、そこにはまったく無傷の妖狐が立っていた。

「残念じゃ、昔は河童はもっと賢い妖怪じゃったと言うのに……」

「くそっ! 何であれを喰らって無事なんだ! そうか……上手く避けたようだが次はないぞ!」

 河童は再び妖狐に水大砲を撃とうとする。
 しかし、何度やっても大砲は飛んでこない。

「馬鹿な! 儂の妖術は水を自在に操る! 何故操れん!」

「簡単なことじゃ、妾の妖術で其方の妖力を封じておるのじゃ」

「妖力を封じる、だと?」

「正確には其方が妖力を使うたび、妾にその妖力が吸収されるのじゃ」

 河童と妖狐の話は人間の悠火にはさっぱりだが、一つだけ確かにわかったことがある。

「妖力の能力反則だろ…」

 どうやら河童も同じことを思ったらしい。
 先程まであれだけ息巻いていたに今は恐怖に慄いている。
 ただでさえ青い顔が更に青くなったように思う。

「反則だ……そんな妖術反則だ! そんなのいくら妖狐でも……はっ! まさか、貴様は!」

 河童は信じられないものを見るような目で少女を見る。
 それにつられて悠火も少女の方を見る。

「ようやく気が付いたか? そうじゃ、妾は妖狐族の長、大妖怪の天狐様じゃ!」

 天狐と名乗る少女は腰に手を当て堂々としている。
 そして、その自己紹介を聞いた河童が震えていることに悠火は気が付いた。

「そんな……そんなことが……くそっ!」

 河童は急に血相を変えて妖狐から逃げるように走り出す。

「無駄じゃ……人を傷つけた妖怪は放っておくわけにはいかん…… 術式展開・永劫封印えいごうふういん

 妖狐が河童に手を向けると、河童の背中に紋様が刻まれた。
すると、空間が歪み無数の手が河童を引きずり込もうとする。

「嫌だ! やめてくれ! もう二度と人間を傷つけたりしないから!」

「すまんな……これが人を傷つけた妖怪の報いじゃ」

 妖狐は悲しそうな表情をしていた。

「ああぁぁぁ……」

 断末魔の叫びと共に、河童は空間に吸い込まれていった。
 空間の歪みは既になく、今までのことが夢であったかのように静かになった。

「さて、お主の友人の手当てをせんとの」

 そう言うと妖狐は頭を打って気絶している奏鳴と出血の痛みとショックで失神した光秀に向かって呪文のようなものを唱えた。
 すると奏鳴の頭の傷も、光秀の腕の傷も綺麗に消えてしまった。

「これで傷は癒えたぞ。ついでに今日見たことの記憶も消しておいた」

「ありがとう……ってことは俺の記憶も?」

「もちろんそうじゃ……と言いたいんじゃが、いろいろと面倒なことがあっての……」

 妖狐はバツが悪そうにその細く白い指で頬を搔く。

「何だ?」

「実は……」
 
妖狐が俺に何を話したのかは、また後日話すことにしよう。




読んでいただきありがとうございます。コングです。

妖狐の語尾は完全に作者の好みです。別に普通にしてもよかったんですが、「〜じゃ」とか「〜のう」の方が妖狐感が出る気がしたんです!

もしかしてそう思うのは僕だけ? もしそうでも、やめるつもりはありません。

それではまた次回!



2020/3/26一部改稿

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