いつか見た夢

B&B

第84章

 
 深夜の高速を、車で西に向って走っていた。綾子ちゃんを助手席に、粘つく熱帯夜の中を軽快に飛ばす。
 車内には気を紛らわすためにつけたラジオから、リクエストで三十数年も前にヒットした歌が流れている。平日の深夜も二時になろうというこんな時間のラジオを聞いている、殊勝な人間もまだ世の中にはいるようだ。それも、リアルタイムにリクエストするようなヘビーユーザーが。
 そのハイミディアムなテンポと軽快な調べにのって、ついついアクセルの踏む足にリズムをのせてしまい、スピードが上がったり下がったりを繰り返してしまう。
 隣に座った綾子ちゃんは昨夜話した俺の話を聞いてからというもの、すっかり黙り込んでしまい高速で流れていく夜の景色を、あまり瞬きすることもなく眺めていた。俺が仕事だからとミスター・ベーアの屋敷を出ようとしたときに、自分もついていくと言って以来、互いに言葉を交わそうとはしない。
 本来なら、仕事についてくるだなんて強く拒否しなくてはならないところなのに、自分でもどういうわけか顎でしゃくり、連れてきてしまったのだ。自分が気まぐれながあるのは知っていたが、さすがに今回ばかりは一体どうしたんだと自問自答せざるをえない。
 ともあれ、ミスター・ベーアのところに彼女を置いておくわけにもいかないのも確かだった。今回は仕方ないと自分に言い聞かせ、それ以上のことは頭の隅においやった。
 速度計をチラリと見遣ると、速度はすでに一三〇キロ近くになっている。深夜の道を走る車は、みんな一概に法定速度などはるかに上回る速度で走るため、とても一三○近くも出ているとは思えない。感覚としては、まだ百キロ出ているかどうかという具合だ。
 互いに交わす言葉もないまま、高速の緑色をした標識が目的地まであと四〇キロであることを告げる。このペースでなら、目的地までどう長く見積もっても三〇分とかからない。しかし、俺はそこまで行くつもりは毛頭なかった。
「次の出口で降りるぜ」
 標識には、次の出口まで一キロとも表示されてあった。もっとも近い出口まで行けるのが理想ではあるけども、ミスター・ベーアのことだから、尾行をつけていないとはいえない。今のところは、まだ俺が裏切り者であるとはバレてはいないようだが、向こうには、あの真紀がいるのでもしかすると、あの女狐から何かしら入れ知恵されないとも限らない。
 ちょくちょくサービスエリアに立ち寄り、尾行の車がないかも確かめてきたので大丈夫だとは思うが念には念を入れて、数十キロも手前で高速を降り、そこから地道で行くことにしていた。もちろん、そこからは今のこの車も乗り捨てて、新しい車に乗り換えるつもりだった。大した錯乱にはならないだろうが、十分な時間稼ぎにはなるだろう。
 綾子ちゃんは俺の一声にただ頷くばかりで、神妙な顔つきを崩すことはない。今までは高速ということもあって、こちらからもあまり声を発することはなかった。しかし、これからの地道ではそんなわけにもいかない。一応、一緒にいる以上はこちらに従ってもらう必要がある。なんせ、強力な軍や部隊を持ち合わせた奴らを、同時に相手にしなくてはならないのだ。
 前もって告げていた通り、出口が見えてきたところで俺たちの乗る車以外、誰も降りそうにない田舎道へと続く出口へ、キャッシュで料金所を抜けて地道に出る。地道に降りたこともあってアクセルを緩めた。速度計は四十キロを示しているが急激な速度変化のため、とてもそんなに出ているとは思えないほど、のろのろ運転に感じて仕方ない。
「とりあえず、そろそろ降りる準備をしておいてくれ。業者が見つかり次第、この車とはおさらばするからな」
 まぁ、荷物ははじめから足元に置いてあり、準備らしい準備もないがそういった俺に対し彼女は、表情を曇らせるだけで頷くことはなかった。きっとミスター・ベーアの屋敷で、この車を拝借したのを思い出しているのだろう。もしくは昨晩、俺に告げられたことをまだ考えているのかもしれない。
 昨晩、屋敷で今後の活動について考え練っていたところ、割り当てられた部屋を訪れた綾子ちゃんにどうしてもとせがまれて、渋々、俺が彼女と再会するまでの経緯と春からの一連の出来事について、かい摘まんで説明することにしたのだ。彼女はその間黙ってこちらの話に耳を傾け、頷くことさえほとんどしなかったのが印象的だった。
「……まぁ、この数年間のおおざっぱな概要としてはこんなもんさ。別に君のことが嫌いになっただとか、そんなわけじゃない。結果として君を裏切ったにしてもな」
 じっと俯き加減に見つめていた綾子ちゃんから、俺は逃げるように虚空へと視線を泳がせる。どうにも俺は、彼女の向けてくる視線には弱いらしい。それは罪悪感がなせるものなのか、それとも別のことからくるものなのか定かではないが。
「……九鬼さんは、さやちゃんのために今までの生活を捨てた……そういうことなんですよね?」
 ゆっくりと告げられた言葉に、俺は肩をすくめるだけだった。往生際が悪いといわれるかもしれないだろうが、なんとなく素直に認めることができない。
「動機としてはそうだが、一概にそれだけでもないよ」
 逃げともとれるこんな台詞をいうだけで、そのときの俺には精一杯だった。こんな俺の話に愛想を尽かせるというのなら、それはそれで結構なことだ。少なくとも俺との縁は切れるだろうし、俺の肩の荷も降りるというものだ。
 しかし綾子ちゃんは目を伏せると座っていた椅子から立ち上がり、無言で部屋から出ていった。これで彼女との繋がりも、完全に終わった……そう思い、翌日の朝には屋敷をトンズラする予定で今後の活動を考えていたら不覚にも、ベッドの上に伏せた形で眠ってしまっていた。
 朝から俺は屋敷から抜け出すための準備に取りかかり、夕方には屋敷を離れる予定でいたのだ。しかしそこで予定外なことがあった。朝から動いていた俺に不審げに思っていたに違いない綾子ちゃんが、旅の道連れになることを自ら望んだのだ。その心中は俺には理解しがたくもあり、同時に感謝の気持ちもあるのは間違いないが。
 それでも見方によっては、当面はまだ組織の一員として行動することがあるはずなので良いが、どのみちミスター・ベーアが敵になることは確実なのだから、こちらの手の届くところに綾子ちゃんがいるならば、それはそれで安心もできるのも確かだ。結果として彼女を巻き込むことになってしまうけども、こうなった以上、後悔していたって何も始まらない。
 そこで今回俺は、一路関西に向けて車を走らせることにした。関西の港には、海外から運ばれてくる多くの物資に紛れて、秘密裏に輸入される物がよくある。持ち込まれる物量自体は東京のほうがもちろん上だが、その割合が高いというのが正確な表現だ。
 密輸によって入ってくる品物などはどこの国でも同じようなものだが今回、俺がわざわざ関西にまで走ることになったのは屋敷を抜け出して毛利の医院に戻ったとき、そこで思わぬ収穫を得ることになったためだった。
 医院で休んでいたエリナが田神に招集されたらしく、今夜から早速動くと言い張ったのだ。はじめは罠かとも疑いはしたが、田神がどうやって伝達させるのか手段を知らないこちらとしては、エリナが田神からだというのであれば信じるしかない。
 内容は、田神が関東と関西の両方に行かないといけないが一人では無理かもしれないから、関東で動いてくれとエリナに依頼したのだ。関西のどこかとは書かれていなかったものの、俺には田神がいそうな場所がおおよそ予測ができたので、そこに行ってみることにしたわけだ。もちろん、田神に会うためだけではない。奇しくも、やつの仕事と俺の仕事が重なったことによる。
 何がなんでもミスター・ベーアと武田の二人を出し抜かなくてはならない俺だけども、田神が伝えてきた情報によれば関西に、ある大物スパイがO市に入ったという情報がもたらされたのだ。それだけなら俺もわざわざ動く必要もないが、その大物スパイというのが、春にあった政治家連続狙撃事件に関わっているらしいというのだ。
 これだけで動くには十分な理由だった。それはつまるところ、あの忌ま忌ましい武田の野郎と繋がりがある可能性が高いと考えていいだろう。あの事件の犯人にしたてあげられそうになった身としては当然、そもそもの犯人が野郎の手先であることは間違いない。もっと砕けていえば、その大物スパイというのが、武田である可能性だってあるのだ。
 そこで俺は、俺が動くのなら自分は田神のほうに行くと言い張るエリナをいいなだめ、関西に向かうことにした。エリナの話によれば、田神は全国を動く際に、いたる所に中継地点ならびに使えそうな業者やなんかも押さえておいたらしい。行くのであれば、そういったものを使ったらと、エリナはブーたれながらも教えてくれた。
 そんなわけで、俺は念のためにエリナの話にあった業者を訪ね、この車を乗り捨てることにしていた。ミスター・ベーアの屋敷を半ば脱走する形で出てきたこともあって、追手がかかってないとも限らないし、屋敷から持ち出したこの車に、追跡用のGPSが取り付けられてある可能性だって考慮しておかなくてはならない。
 エリナの話にもあった業者の一つである車の解体業者の店舗にまでついたところで、俺は早速店主の男に新しい車を買い付けた。改造車ということもあり、なかなかにいい装備らしい。
「こいつのアクセルを全開にすれば、トップスピードまでたったの三秒とかからない。二百五十キロは確実に出せるはずさ」
 こんな謳い文句で買った車に乗り込み、再び車を西に向かって走らせる。乗ってきた車は、業者の男にくれてやった。男は一緒にいる、明らかに場違いな雰囲気の綾子ちゃんには一瞥するだけで、特に詮索することはなかった。以前、田神からいただいて金と、まだ新品同様の高級感ある車を代わりにくれてやったのだから、まぁ、多少の口止め料にはなったろう。
 新しく乗り込んだ車でこれから向かうのは、O市の港だ。そこを取り仕切る業者に会ってみれば、武田がなにをやろうとしているのかわからなくとも、何か手がかりが見つかるに違いない。
「……いつもあんなことをしてるんですか?」
 地道でO市に入ろうとしたところ、綾子ちゃんがぽつりと、そうつぶやいた。
「あんなこと?」
「はい。さっきの業者さんに頼んだことって、本当はいけないことなんじゃないですか?」
 先ほどまで無言だった彼女から漏れた言葉は、無表情でありながらも、どこか批難の色が窺える。ついてくると聞かない彼女には、こちらのやることには従ってもらうというのを条件にしてはいるが、やはりいざとなれば、思わず口にしてしまいたくなるのかもしれない。おまけに俺たちは、もともと気心の知れた仲なだけに余計だろう。
「否定はしないさ。だけど、こいつは必要な措置だから、そういうわけにもいかないんだ。屋敷から出る際に乗ってきた車に最悪、追跡装置が取り付けられていないとは絶対にいえないんだ」
 俺がこういうと綾子ちゃんは、首を横に振った。
「そういうことじゃありません。昨日、あの男性の方と、私と藤原さんがくるまでの間、何か話していましたよね。そのことです」
 あんなこととは要するに、自分を蚊帳の外に置くことについて尋ねているわけか。彼女をあまり邪険にしたくはないが、仮に事細かに事情を話したところで、俺にはなんのメリットもない。もちろん、そいつは綾子ちゃんにしても同様だ。知ったところで彼女になにかできるとは思えないうえ、彼女をますます危険に曝すことになりかねない。ただでさえ、今この状況だって決して良いものではないのに。
「私に話してはくれないんですか……?」
「……君にいったところで、事態が好転するわけじゃない」
 突き放していう俺に彼女の表情がにわかに崩れ、わずかに陰りが感じられる。こんなところにきてまで、まだ俺を信じようとしてくれている彼女には申し訳ないが、紛うことなき本心だった。安い同情など、欲しくはなかった。
 とりあえず屋敷で話はしたけれど、人を殺しただとか、そういった暴力的なエピソードは一切語ることはなかったので、そこらへんは問題ないだろう。しかし、それも今だけだ。このままずっと俺と行動しているとなれば、必然的にそういったことにも遭遇し巻き込まれるのは目に見えている。勘のいい綾子ちゃんのことだから、つい二日前にあったホテル襲撃のことからも、そこらへんは薄々勘づいているに違いないだろう。

 O市に入った俺はまず、手頃なビジネスホテルへと行き部屋をとった。本当ならもっとちゃんとした拠点を用意したいところだったが、今回はあまりに急だったので仕方ない。それにビジネスホテルなら、シティホテルほどは堅苦しくないうえ、深夜の来客でもあまり怪しまれることはないはずだ。
 さすがの長い移動で疲れたのか、綾子ちゃんはホテルに着く前後からうつらうつらとし始めており、部屋につくやいなや、ベッドの上に倒れこむように寝転がった。そのまま寝息を立て始めたので、俺は彼女をそのままに布団をかぶせてやると、部屋をロックし足早に繁華街へと向かった。どのみち、ここからは自分一人で動くつもりでいたので好都合だ。
 O市の繁華街は平日の夜だというのに、やけに人が出歩いているように思われた。人々の、にわかに浮かれた様子に小さな疑問が浮かんだところ、そばをすれ違った通りすがりの会話を小耳にはさんで、理由が判明した。どうやら世間は八月もなかばに差しかかり、明後日から盆休みに入るという。なるほど、通りで人が多いわけだ。中には有給を使って、今日明日、あるいはすでに昨日から休みに入っている連中だっているかもしれない。
 俺は繁華街の通りに入ってすぐのところにある、古く小汚いビルとビルの間の路地へと折れる。灯りは三、四〇メートルほど先の路地が切れたところにある街灯一つだけで、薄暗い陰気な路地だった。
 その路地の中腹にある、さらに狭まって身体を横にしなければ通れなさそうな隙間道に身を滑らせる。隙間道をまっすぐいくと、目の前にビルの地下へと続く、所々ひび割れた階段が現れた。階段の幅は大人二人が横に並べるほどの幅があり、通ってきた隙間道は、設計ミスだったのではないのかと疑うほどのものだった。
 ひび割れた階段を降りると、左手に安物の金属ドアがあった。向かって左上部の枠には、時代錯誤もいいところの裸電球が取り付けられていて、その古さを象徴するかのように光はとても弱々しく、今にも尽きてしまいそうなほどだ。俺は錆ついて軋む音のするドアを開け、中へと入る。
「……こんな時間にくるだなんて、とんだ客もいたもんだね」
 軋む音のするドアを閉めると同時に、薄暗く埃っぽい部屋の奥から、低くしゃがれた声が室内に響く。老人のようだけども、しゃがれにしゃがれた声からは、声の主が男なのか女なのか窺い知ることはできない。姿形にしても、ここからではどこにそいつがいるのかすら、見ることができないほどに暗かった。
「深夜のほうが、そっちの都合がいいと聞いたもんでね」
 部屋の中は薄暗いため、どんなものが置いてあるのか把握しにくく、おまけに、まごまごと大小様々な物が散らばっているせいで、奥まで進めないようになっている。早くも暗闇に慣れてきた視界には、両の壁に何が入っているのかわからない、一メートル平方大の箱が何段にも積み上げられてあるのがわかった。
「聞いた? ほう、誰にきいたんだね。それにおたく、ここいらじゃあまり見ない顔だね」
 ひっひっと老人はうすら寒くなるような醜い笑い声をあげながら聞いてくるが、その手には乗らない。自然に聞いてきながらも、その実、俺から新たに情報を仕入れようとしているのだ。俺は肩をすくめながらいう。
「誰だっていいさ。そいつが、あんたに聞けばわかるかもしれないといっていたから来ただけだ。
 それよりも、ここ数日でO市に、ある大物スパイが入ったという話を聞いた。そいつに関して情報を買いたい。それと、もう一つ。それに前後して、アンダーグラウンドでなにか起こっているはずだから、そいつも知りたい」
 簡潔にいった俺に、老人は薄気味悪い囁き声で語りだした。
「……若いのに随分と警戒心が強いね。ふん、まぁいい。スパイについてだったね。
 何日か前に、O市の港からスパイらしい人物が入国してきたというのは事実さ。もちろん、わしには目的なぞわからん。だが間違いなく事実だ。そいつが入港する前に、O港にある取引がされたという話も伝わっておるから、もしかするとそれとなんらかの関係があるのかもしれんな。その取引と前後して、ある外資系の会社が周辺の請負業者やなんかに、地周りしていたそうだ」
「ある外資系の会社?」
「うむ。いわゆるハゲタカファンドというやつだ。元々の資本はフランスだそうだが、国内ではここ十年ほどで急激に伸びてきておる会社で、業界内ではすでに大手の一つとしても数えられておるらしい」
「そんな外資が、なんだって地周りなんてしているんだ」
 業界大手の一つにもなっている連中がどうしたって、今さら地周りをしなくてはならないのか別にしてはいけないわけでもないが、少しばかしの興味が湧いた。これまでの経験上、こういった話には大抵裏があるのは火を見るより明らかで、先のスパイに関しても確実に繋がっているに違いない。
「おかしな話さ。連中は八月一日の夜に、一日だけ港を使いたいから、誰か荷の運び出しを手伝ってくれというものだった。それも、日付も変わった頃になるべく人知れず、という注文付きでね。深夜にそんなことをしていたら、警察に目をつけられかねない。そんな上手い話、そうそうあるはずもない。しかし、どうにかして一軒の零細業者を見つけ、承諾させたらしい。数年は豪遊していけるだけの報酬を代わりにね。
 そしてその日、取引が行われた。何が取引されたのかは、その業者には伝えられなかったよ。それでも、危険なブツだというのはすぐに理解できた。そもそも数年分もの報酬を一挙に支払うわけだから、中身を知らないに越したことがないものだったとは、考えるまでもなかったろうがね。
 取引では一日の深夜一時に、一万トンクラスの船が入港するから運ばれてきたコンテナを、トラックに運び出してほしいというものだった。この内容なら大したことではなかった。おかしかったのは、運ばれてきたコンテナがたったの三つしかないということだった。それと、もう一つ。入港した船の船員が、立ち会った外資の幹部に、あるトランクケースを手渡していたというのもだ」
「トランクケースだと」
 思わず眉をひそめて聞き返した俺に、部屋の奥にいるらしい人物が肯定する。
「拳銃だったのか、大量の札束だったのか、あるいは麻薬だったのか……ケースの中身はわからん。ただ開けられたケースからは、幹部の男がおもむろに小さなケースを取り出していたのは確かだ。
 問題は、この取引が終わってからものの数日で、O市内にあるいくつかのクラブやなんかで、あるドラッグが売りさばかれるという話が出回りおった。これはお前さんの欲しい、二つ目の情報だな。これに限っていえば現在進行形のようだから、そこらの不良どもにでも聞けばすぐにわかるだろうがの」
 老人の話を聞きながら俺は、かつてロンドンにいた頃にデニスから聞いた話を思い出していた。まさか、そのドラッグというのは……。
「ヘヴンズ・エクスタシー……そのドラッグはヘヴンズ・エクスタシーじゃぁないのか」
 俺は思わず口にしていた。間違いない。確証などないが、それはヘヴンズ・エクスタシーであるに違いない。
「ほう、知ってるのかね」
「昔、ちょいとな」
「ならば話は早い。そのヘヴンズ・エクスタシーが今アンダーグラウンドじゃ流行ってるらしいんだよ」
「だが、ヘヴンズ・エクスタシーはかなりの劇薬だぜ。吸引したら瞬く間に廃人だっていう話だからな」
 やや早口にいうと、老人もそれに同意するニュアンスで話を続ける。
「それでもやりたがる、どうしようもない連中がいるのさ。まぁ、売り手もそれをわかっているからこそ売りさばくんだろうがね。
 まぁいい。とにかくそのドラッグが出回るようになったと同時に、例のスパイが動き出したという話も流れたのさ。いや、むしろこのスパイ自身がわざと流すように指示した可能性もある」
「なんだって、わざわざそんなことをする必要があるんだ」
「一情報屋のわしにはわからんよ、そんなことは。だが、わしは、それは十二分にあり得ることだと思うがね。なんたって外資ファンドの幹部連中がそのスパイと会合していたという話で、目撃談もある。ま、その目撃者はここのところ行方知れずということもあって、ますます信憑性も高くなるというものさ」
 俺は適当に頷きながら、これからの行動を思案し始める。老人のいう通り、わざと情報を流すよう指示したというのならば、そこにはなんらかの目的があることは疑いない。おまけに業者が見たという小さなケースというのは、あのベケットの事件で見たサンプルケースのことではないのか……。ヘヴンズ・エクスタシーについてもそうなのだから、そう見て間違いない。
 もしこれらが俺の思っている通りであるなら、この辺りの事実関係は追っていくうちに判明していくのは確実であるはずから、今ここで深く追求する必要はないだろう。
 ここはやはり、その取引のために無茶な依頼を受けたという業者と、そこから外資の幹部を洗っていく必要がある。もちろん、今からはまだ営業中だろうクラブを、どさ周りすることが最優先だ。
「ところで、以前ここに男が一人訪ねてきたはずだ。身長は俺と同じくらいか少し大きめの、二枚目なんだが」
「……あんたはここを単なる事務受付かなんかだと思ってるのかい」
「そうだったな、ここは情報屋の根城だった。一枚多く払おう」
「二枚だ」
 俺は明らかに足元をみていう老人に対し舌打ちしながら、ジーンズのポケットにしまってあった軍資金をつまみだすと、そこから適当に六、七枚の一万円札をつかんで老人のほうへと投げる。
「いい心がけだ、若いの」
「いいから、さっさとしゃべりな、古いの」
 老人の証言によると、十日ほど前にそれらしい人物が現れたという。なんとも奇妙な情報を買っていったそうで、過去にあった、ある惨殺事件の詳細を聞きにきたというのだ。探偵かなにかなのかとも考えはしたけれど、ずっと一人なにかを調べているらしい田神のことだから、そうした一見奇妙な情報を買ったにしても、あり得ない話ではのもまた事実だ。
 その後、その人物は古都に向かったということだった。その人物が本当に田神であるならば、場合によっては俺も古都に向かうことになるかもしれない。直感ではるが、田神は俺にとっても重要になりそうな何かを握っているような気がするのだ。



 そろそろ夏の早い夜明け時刻のため、東の空がうっすらと色づき始めている。俺は繁華街を南に移動し、やや外れた一角にあるビビルを訪れていた。ビルの地下には、最近O市で流行りのクラブが店を構えている。
 階段を降りきってなんの飾り立てもされていない、こげ茶色の金属ドアを開けて店の中へと進む。もう夜も明けようという時刻なのに、中ではまだ熱気がこもり、何十という若者が引き締めあっている。カウンターにいるバーテンにシーバス・リーガルを注文し、酒が出されるまでのわずかなあいだ、大音量で流れるトランス・テクノに耳を預けながら店内をざっと見渡した。カウンターはダンスフロアから一段高くなっていることもあり、全体が見渡すことが容易だ。
 フロア自体はなんの辺り触りもない標準的なものだけども、周りをぐるりと囲むように席が並べられており、まるでローマにあるコロッセオの極小規模版といった風だった。客はそうした雰囲気には似つかわしくない、ホストよろしく髪を金髪に、重力に逆らわせておっ立ている大学生らしい数人のグループが、いたるところにいて目をついた。服装も似たり寄ったりで、皆一様に安っぽい、薄手の黒い合皮のスラックスを穿いている。俺にはよく理解できないが、あれで恰好いいと思っているつもりらしい。
 しかし、それ以上に気になったのは彼らに混じり、一人でいる数人の外国人だった。国籍は様々だが、連中は暗いフロアにも関わらず、サングラスをつけていてどことなく滑稽だ。
 ふと、フロア隅の目立たないところで、ずんぐりとした外国人の男が長い茶髪を巻き毛にした女二人に、何か話しかけているのが見えた。一見楽しげに会話をしているようにも見えるが、俺はこいつが怪しいと睨みをつける。
「やっぱり外国人というのは、日本の女が好きなんだな」
「かもしれませんねぇ。彼、良くうちの店にくるんですけど、両刀じゃないかって話がありますからね」
 バーテンに顎で男の方向へ指示しながら探りを入れてみると、そういった。両刀……つまりはバイ・セクシャルということになるが、そんなことはありえない。もちろん、別にバイの連中をどうこういうつもりもないが、少なくともあの男に限ってはまず、バイなどではない。
「ところでお客さん、あまり見ない顔ですね。ここは初めてですか」
「ああ。この街にたまたま仕事できたんでね。もしかすると、この街で飲める最後の夜になるかもしれないから、寄ってみたんだ」
 スコッチを差しだしてきながら、バーテンが話しかけてくる。俺は視界の脇に男と女二人の行動をおさめ、差しだされたスコッチを一気に半分ほど胃の中におさめ、適当に相槌を打ってやった。
「それで、ちょいと聞きたいんだがいいかな。最近、ここの売上ってどうだい」
「売上ですか? まぁ、この昨今じゃぁ嬉しいことに右肩上がりですけど……それがなにか」
「ああ、いや、実は将来的に店を構えたいと思っててね。ここの経営者と会って、話をしてみたいと思ってるんだ」
 こう告げるとバーテンは、今上にいますよと教えてくれたので、呼んでくれないかと俺の言伝を快く引き受けて姿を消した。話しかけられるのはさほど嫌いなわけではないが、反面、面倒でもある。あれこれ自分のことを聞かれる都度に嘘をつかなくてはならないし、流行りなどには全く興味のない俺だから、話題にもついていけないのだ。元々、あまり人付き合いがうまいわけでもないから、そこらへんも関係しているかもしれない。
 ともかく、このビルの経営者が例の外資ファンドの常務だというのは、先ほど訪れた情報屋から仕入れている。つまり、ここは完全に連中の巣窟といっていい。クラブの売上と、その中で秘密裏に麻薬の売買を行っているというわけで、まさに一石二鳥の隠れ蓑にしているのである。
 それと、先の情報屋が一つ気になることを告げていた。このビルは元々七〇年代に建てられたもので、売りに出されたところを外資ファンドが買いつけたらしく、クラブのオープンと合わせて、ほんの一年半ほど前にグランドオープンさせたという。これは要するに、はじめからここをこれから市場に流すであろう、ヘヴンズ・エクスタシーのための事前工作とみていい。
 スパイが動き出したのと、ヘヴンズ・エクスタシーが流れ出したのがほぼ同時期であることから、こいつが一連の工作をおこなった張本人であることも疑いえない。そのためにも、これから会えるだろうファンド幹部を絞り上げてやるつもりだった。
「失礼します。ご相談というのはお客様ですか」
 スコッチに口をつけたところで、一見優男風のこじゃれたスーツを身にまとった男が、先ほどのバーテンに連れられてやってきた。細いフレームの眼鏡をかけた男は、年齢もまだ三〇代前半といったところで、幹部というわりにかなり年若い青年だ。
「ええ、そうなんですよ。実はここの経営者の話を小耳に挟みまして」
「ああ、そうなんですか。でしたら、こちらへどうぞ」
 いかにもな愛想笑いを浮かべている男に会釈してみせると、男が手で案内してみせながら移動する。
 男の後についてやってきたのは、ビルの二階にあたるフロアだった。エレベーターを降りると、八畳ほどの木張りの部屋へ通され、黒い革のソファーに腰かけるよう告げられた。中に入ったとき閉められたドアに、さりげなく鍵をかけておくのを忘れない。
「それにしても驚きました。わざわざこんな時間に、それも経営についてお話を伺いたいだなんて」
「いえ、本当は日を改めようと思ってたんですが、まさか連れてきてもらえるとは思わなかったんです」
 互いに頷きあい、男が長方形のテーブルを挟んだ反対側、真正面のソファーに座る。
「それでご相談とは、どういった?」
「ええ、実はですね」
 顔を伏せがちにつぶやいた次の瞬間、俺は男に飛びかかる。一瞬で呆気にとられている男の喉元を右手で、左手で右手首を掴みあげる。
「こういうことさ」
「あぐっ、ぐっ……」
 喉を掴まれて、男は呼吸困難に陥っている。それだけでなく、左足で男の右足を動かないよう思い切り踏み付けており、さらに右膝で腹のあたりをいつでも蹴ることができるよう、押さえ込んでいるのだ。
「さぁ、吐いてもらおうか。おまえに口答えする権利はないぜ。俺の質問に答えることだけを許す。馬鹿な真似をしたら、すぐにでも指をへし折る。いいな」
 ぶるぶると小さく頷いた男に、喋れるよう少しだけ喉の力を緩めてやる。
「ま、待ってくれ。あ、あんたは一体……ぐっ」
「おいおい、話を聞いてなかったのか。あんたに質問する権利はないといったはずだぜ。黙って俺の質問に答えればいいんだ。次、わけのわからんことを抜かしたら、容赦なくへし折る。こいつが最後通告だ、わかったな」
 手首から指へと掴むと、俺の本気が伝わったのか男は黙りこんだ。表情に恐怖心を滲ませていることからも、こちらのいう通りにするはずだ。
「最初の質問は今いった通りだ。おまえらはここを拠点のひとつとして、薬をさばくためだろう。違うか」
 ぶるぶると震えながら、男が首を縦に振った。やはり……。俺は自身の考えに納得がいったところで、さらに質問する。
「お前たちは八月一日の夜に、あるドラッグの密輸をしたはずだな。そいつについてしゃべってもらおう」
 握る手に力をこめ相手の指を圧迫すると、男が惨めな呻き声をあげて早口にしゃべりだした。
「そうだ、した、したよ。ヨーロッパから流れてきた新種で、ヘロインの何倍も強いドラッグだ。そいつを独占するために、ここをオープンさせたんだよ」
「そのために港を使えるよう、業者を探したそうだな。なぜだ」
「おれは知らない。う、上からそう命じられただけなんだ。本当に知らないんだ」
「上だって? 冗談いうもんじゃぁないぜ、あんただってファンドの幹部じゃないか。そのあんたが知らないなんて、そんなことあるもんか」
 見え透いた嘘はよせと告げた俺は、掴んだままの人差し指と中指を同時に手の甲へと反らし、そのままへし折った。鈍く篭った響きとともに、硬いものが折れる衝撃が手に伝わる。
「かっ」
 まさか本当にへし折られると思わなかったのか定かではないが、男は目を見開いて情けない呻きをあげる。
「いったろうが、冗談じゃないってな。自業自得だ。それよりもさっさと吐け」
「あ、あうぅ……ほ、本当だ、本当に知らないんだよ……社長しか……知らないんだよっ、本当だっ」
「なら社長の名前と住所は」
「大友……大友孝也おおとも たかなり……住所は、N区のHにある。三階建ての大きなモダンなデザイン建築の家だから、すぐにわかるよ……」
 男は必至に赦しをえようと震える声でいうが、俺は気にすることもなく薬指に手をかける。
「ドラッグはどこから仕入れてきたんだ」
「オ、オランダでだが、もともとはイギリスで作られたという噂もあるやつだ。それがどういうルートでか、東欧や中東方面にも一部流れたところを、社長がそれを独占して上海ルートで仕入れたんだ。社長自身がいっていたから間違いない」
 男の話に、おもわず小さく舌打ちしていた。イギリスで作られたという話がどこまで信用できるかは別として、イギリスからもたらされたという点が重要だった。これがヘヴンズ・エクスタシーであることは確実だろう。気に食わないのは俺がイギリス脱出前後にはすでに、国外に持ち出されていたということに何ともいいえぬ、敗北を喫したような気分になったのである。
 この男の言い分が本当であれば、イギリスにあったサンプルは、遺伝子工学者だったチャールズ・メイヤーの元にいくはずだったやつしかない。もちろん、あれ以外にもなかったともいえないが、もし二つ以上あったとすれば、ベケットもメイヤーもあんなにまで必死になることはなかったはずだ。つまり、ヘヴンズ・エクスタシーを作るための薬は、あの時点では一つしかなかったということではないのか。
 結局はメイヤーの手に渡ることもなく、メイヤーが雇ったという殺し屋が持ったまま、有耶無耶になってしまっていたはずだ。あの殺し屋はメイヤーとは別に依頼主、あるいは自身のための別の意をもっていたように思われた。そもそもがメイヤーになぞ、渡すつもりはなかったようだったので、あの黒づくめの殺し屋があの時点で、すでにオランダ方面に流していた可能性は否定できない。
 第一、ヘヴンズ・エクスタシーの原材料になったものが、あの沙弥佳の血液から精製して作られたものだというから、俺自身、一概に無関係とはいえない。そして、これらが微量ながら出回るというのは、あいつがまだ生きているとは考えられないだろうか。決定的な証拠に欠ける現在としては、ただの希望的観測の一面があるのも確かだが。
「よし。だったら、あんたに社長のお宅にまで案内してもらおうか」
「な、なんでおれが……うっ……わ、わかった、わかったよ。お願いだからこれ以上はもうやめてくれ……」
 言い終えれば解放されるとでも思ったのか、男は惨めにすすり泣く声をもらしながら俺になかば引きずられる形で、ドアのところにまでやってきた。
「もちろん、今これからだ。いいな」
 そういって念のためにかけておいた鍵をあけ、ドアが開いたところ、横から勢いよく襟元をつかまれたような感覚があり、ひっぱられたと思った次の瞬間、向かいの壁に叩きつけられていた。
「くっ」
 俺は叩きつけられた衝撃を受け身で和らげて、床に倒れこみかけながらもこれをこらえ、叩きつけた奴のほうを睨む。
「大丈夫ですかい、ボス」
 流暢な日本語で話す男は、先ほど下のクラブで、女二人を相手にしていた野郎だった。ボスというのは惨めにすすり泣きをあげていた男のことだろう。
「あ、ああ、よくやった。時間どおりだ。まさか、本当に指をへし折られるとは思わなかったが……」
「時間どおり?」
 つまり男は、バーテンに呼ばれてやってきたとき、すでにこうなることを予想していたということになる。俺に暴力を受けることは当然、惨めにすすり泣く様も全ては演技だったというのだ。
「ちっ、うかつだった」
 思わずつぶやいた言葉に、男が俺を見下して笑った。
「折角仕入れた情報も、こうなっちゃぁ元の黙阿弥だなぁ」
 男の前に売人の男が立ち、腕を組んで見下しながら威嚇する。この野郎は、売人と男のボディガードを兼任しているらしい。
「おら、立ちな」
 ずんぐりとしたボディガードの男が、ゆっくりと俺のほうへと向かってくる。それを丹田呼吸で息を整えつつ、ぐっと身体に力を溜め込む。
「なんだ、もう終わりか。ジャップなんて所詮はこの程度だな」
 油断し嘲笑してみせる野郎が俺の髪を掴んで持ち上げたと同時に、俺は右手で野郎の股間を掴みあげた。そのまま、今出せる力の限りに引っ張りあげる。
「ぎっ!」
 そんな悲鳴をあげて顔を歪めた男の目に、人差し指と中指で作った握り拳を叩き込む。ぶよぶよとしたゼラチン質の眼球が潰れ、眼球を形成していた組織が絡み付いてくる感触があった。
「があああっっっ!?」
 眼球を潰され眼窩からは、半透明の体液と赤い血液が混じり合った、ややとろみがかった液体が流れていっている。俺は容赦なく眼窩に埋まった二本の握りこんだ指をひねり、さらに眼球をすり潰す。
 だがこれで攻撃の手を緩めるつもりはなく、さらに相手の顔面、鳩尾へと鋭い拳と手刀を叩き込み男を床に沈めた。倒れたあたりからは、少しずつ血が流れだしてきており、床が赤に染まっていく。
「……さて、馬鹿な真似をしてくれた落し前、しっかりとつけさせてもらう」
「ひ、ひぃぃぃっ! わ、悪かった。もう二度としないっ! だ、だから赦してくれっ!」
 よほどボディガードだった男の腕前に自信があったのか、男はあっけなく倒された野郎と見下ろす俺を交互に見返しながら、全身をがたがたと異様なほどに震わせている。そして不様に拡げられた足の付け根の間から、それを強調するかのようにスーツを濡らしていく。
「安心しな、殺しやしない」
 少なくとも今はな……。言葉をみなまでいわずに男にゆっくりと近づき、顔面を思い切り殴りつける。これくらいで済ますつもりもないが、今のところはこれだけで我慢しておいてやろう。
「形勢逆転だな。いや、はじめから何も変わっちゃぁいないか。ただ内容が少しばかし変わっただけでな。
 さぁ、立ちな。本当なら案内だけですませてやるつもりだったが、そういうわけにもいかなくなったぜ。大友のところまで、しっかりと連れていってもらわないとな」
 低い声で脅しつけ、アンモニア臭のする男を立たせる。動かなくなったボディガードの体を蹴って道を作ると、エレベーターまで強制的に歩かせた。車までの途中、作業用の黄色と黒が螺旋を作ったロープを見つけると、案内できるよう口だけはそのままにしておき、車の中で男を縛って後部座席の床に放りなげる。
 身じろぎする男を無視し、ドアを閉めた。頭が当たりそうになって思わず体をビクリとさせたのが滑稽だった。
 朝の出勤ラッシュ時間がくる前までに事を終えておきたい俺は、素早く運転席へと座り即座にエンジンをかける。今日はこれからいくらもやらなくてはならないことがある。綾子ちゃんは心配するかもしれないが、一段落終えるまでは帰れそうにない。
 今日一日の行動予定を頭の中で組み立てると、車を一路、大友の家に向けて発進させた。




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