ReBirth 上位世界から下位世界へ 外伝集

小林誉

外伝 王子の留学①

ある日、ガルシア国王からの使いが城を訪れて、ガルシアからもらう予定だった土地の譲渡準備が出来たとの連絡があった。その為一度王城を訪れて欲しいとの事だったので、早速転移でガルシア城まで移動すると、見張りの兵士が丁寧な物腰で対応してくれた。やはり普段の行いが良いからだろう。決して前国王を半殺しにして誘拐したのが原因では無いはずだ。


「久しぶり――と言うほどでも無いか。元気そうで何よりじゃなエスト」
「ありがとうございます。アルフォンソ様もお変わりなく」


挨拶もそこそこに、俺はアルフォンソに連れられて王城内のテラスへと案内された。そこには既にメイドが何人か待機していて、お茶やお菓子の準備が出来ている。そして三つある席の一つには見覚えのある顔が座っていた。誰かと思えばアルフォンソの孫のアルトゥリアスだ。どうやら彼も同席するらしい。


「エスト殿。ようこそガルシアへ」
「アルトゥリアス様がここにいらっしゃると言う事は、冒険者学校の件ですか?」
「鋭いな。ついでと言っては悪いんじゃが、領地の視察がてら孫の事をお主に頼みたいと思ってな」
「ええ、構いませんよ。お安いご用です」


一度ガルシアの領地を見てしまえば、後は転移で一気にグラン・ソラス城へと飛ぶ事が出来る。アルトゥリアスに学校を見学させてから再び転移でガルシア城まで戻ってくるのはそれ程手間じゃ無い。小旅行の付き添いぐらいだと思ったんだが、どうもアルフォンソは別の事を考えていたようだ。


「そう言ってもらえて安心したぞ。付き添いの兵や共の者などの滞在費はこちらが出すから、しっかり孫を鍛えてやってくれ」
「…………はい?」


どうもおかしい。話が噛み合っていないと言うか、同じ話題を話していると思えない。


「えーと……確認しておきますが、俺はこれからアルトゥリアス様と一緒に領地を視察して、その後冒険者学校を案内すればよろしいんですよね?」
「そうじゃよ。で、孫を入学させて一人前に鍛え上げてから、この国に戻してくれれば良いんじゃ」


入学? いつの間にそんな話になったんだ? 俺が聞いているのは見学するって事だけだったんだが、どこで情報がねじ曲がったんだろうか?


「あの……入学させるとか初めて聞いたんですけど……」
「そうじゃろうな。言ってなかったしな」


勝手に決めてたのかよ! しれっとした表情で言い切るアルフォンソと対照的に、今俺は苦虫を噛み潰したような顔をしているはずだ。


「アルフォンソ様……」
「それぐらいやってくれても罰は当たらんだろ? 何も達人にしろとは言っておらん。独り立ちできる冒険者ぐらいにまで鍛えてくれれば良いんじゃて。それに此奴を卒業させたとあれば、学校の良い宣伝になると思うが?」


チラリとアルトゥリアスを見ると、彼は申し訳なさそうに頭を下げた。やれやれ、面倒な事は嫌だったんだが、この状況では嫌とも言えない。アルフォンソを助けた見返りに領地を貰うとは言え、彼等とは仲良くやっていきたい。それにアルフォンソの言うように、王族を卒業させたとあればこれ以上無い宣伝になるだろう。しかし、気になる事がある。なぜわざわざ冒険者学校なのかと言う点だ。ガルシアには大陸最大規模のダンジョンがあるのだし、わざわざ俺の領地でなくてもいいと思うんだが。その疑問を口にすると、予想していたとばかりにアルフォンソが理由を話してくれた。


「簡単に言えば、ガルシアのダンジョンは人が多すぎるんじゃ。浅い階層は魔物の取り合いになっとるし、深い階層だと強力な魔物だらけで危険すぎる。その点お主の作ったダンジョンに入るのは生徒だけと聞いておる。それに武器の取り扱いや、身分を気にすること無く集団行動の機会を得られるのは貴重じゃろ。此奴は生まれてからずっと周りの人間に頼りっぱなしだったからな。一度外に出て心を鍛えるべきなんじゃ」


言わんとしていることはわかる。確かに今のアルトゥリアスは見るからに頼りないし、このまま成長してもアルフォンソみたいに老獪にも、彼の父であるベルナルドのように屈強な男にもなれそうにない。鍛えてやりたくなるのも無理は無いと言ったところか。


「……わかりました。お引き受けしますよ。ただし、一度入学したからには特別扱いはしません。他の生徒と同じように規則には従って貰いますし、身の回りのことは自分でやってもらいます。勿論身分によって扱いに差をつけるなんて事も無いので、相当な覚悟が必要です。それでも良いですか?」


「勿論じゃ。特別扱いされては鍛える意味がないからな。ただ、遠巻きに身を守る程度の事は赦して欲しい。此奴に死なれると我が王家は途絶えてしまうからの。アルトゥリアスよ、お主もそれで良いな?」
「は、はい。お爺様。このアルトゥリアス、精一杯頑張って参ります」


いまいち不安だが、本人もやる気になっているようだし、ここは一つ鍛えてやるとしますか。



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