ReBirth 上位世界から下位世界へ 外伝集

小林誉

外伝 ランクアップ②

久しぶりに訪ねたギルドに以前俺ともめた事のある受付嬢はおらず、代わりに新人ぽい若い女の子が応対してくれた。元気いっぱいで真面目に仕事に励むその姿は好感を覚え、自然と人の笑顔を誘う。だと言うのに、クレアやディアベルの視線が厳しいのはなぜなんだろうと不思議に思う。そんな受付嬢に案内された俺達は、ここのギルドマスターであるリリエラの執務室へと案内された。コンコンとノックすると聞き慣れた声で「開いてるよ」と中から応答があり、扉を開けた部屋の中には以前と変わらぬ姿のリリエラが政務に励んでいるところだった。


「やあ、久しぶりだね勇者くん。いや、もうエスト陛下と呼んだほうがいいかな?」
「人の目がなければどっちでもいいですよ。久しぶりですねリリエラさん」


立ち上がり握手を交わしたリリエラの視線がクレア達に向けられる。俺を除くと彼女と面識があるのはディアベルだけか。と言っても以前は防壁の建設で忙しく、ろくに会話もせずに顔を合わせただけだから、初対面に近いだろう。


「初めまして皆さん。私はこのグリトニルにあるギルドマスターのリリエラだ。よろしく頼むよ」
「初めまして。クレアです」
「一度お目にかかったことはあるが、挨拶するのは初めてだったな。ディアベルだ。よろしく頼む」
「レヴィアよ。よろしくね」
「シャリーで~す!」
「グワッ」


賑やかなことこの上ない自己紹介にもリリエラは動じない。見た目少女でも流石はアラフォーといったところか。本人に言うと切れられそうだから黙っておくが。


「君のパーティーが全員来てくれたと言うことは、私の使いから話を聞いたと思っていいんだね?」
「ええ。ランクアップの件です」
「わざわざ悪いね。君達もこれから忙しくなるだろうに。私が出向けばよかったんだが、今この国は仕事が山積みだから。以前君とやりあった受付のケイトも、私の代理で各地を飛び回ってる最中だ」


事務机の脇にあった金庫の鍵をいくつも開けているリリエラの口から現状が説明される。やはりグリトニル国内は未だ混乱の最中か。正規軍は正規軍で人手不足で忙しいだろうけど、何でも屋の冒険者にとっては今が稼ぎ時と言えなくもない。魔物の討伐や家族の安否確認、荷物の配達から旅の護衛まで、冒険者ほど使い勝手のいい連中はいないのだから。俺のところに素人同然のパーティーが来たのもそれが理由だろうと推測できる。ならば当然冒険者達を管理する側のギルドも忙しい訳で、以前のようにゆっくりもしていられないはずだ。


「あったあった」


そうこうしている内にリリエラが金庫の中から取り出したのは見慣れぬ色のプレートだ。少し青いそのプレートは一瞬ブロンズと見間違えそうになるが、見る角度次第で光を反射しては美しく光るので、ブロンズとはまるで別物だとすぐにわかる。あれがアダマンタイトのプレートなのだろう。


「一、二……うん、ちゃんと全部で六枚あるね」
「え?」


リリエラの言葉に思わず首を傾げる。冒険者登録をしているのは俺、クレア、ディアベル、シャリーの四人だけなんだが、六枚? 


「ああ、そう言えば枚数のことまで手紙には書かなかったっけ。実は君達四人の他に、新しく加わった妹君のレヴィア嬢と、ドラン君にもプレートを与えることが決まっていたんだよ」
「本当に!? やったねドラン!」
「グワーッ!」


思ってもいなかった幸運に興奮して、レヴィアとドランがはしゃいでいる。抱きしめられたままグルグル回されるドランが少々迷惑そうな顔をしているが、姉弟の微笑ましいじゃれ合いだと思って大目に見よう。


「いいんですかリリエラさん?」
「いいんだよ。君ならもう察しがついてると思うけど、これはギルドの宣伝も兼ねているからね。それに君達の名前は今や万民が知るところだ。君達は知らないかもしれないが、レヴィア嬢と幼竜のドラン君も有名だ。まぁ、人の口を伝っているので容姿が多少誇張されていたりするけどね。最近聞いた話じゃ、ドラン君など体長五メートルほどになってたかな?」


体長五メートルのドランて……そんなドランが頭の上に乗っかってくれば重さで潰れてしまうぞ。確かにこのまま順調に成長していけば最終的にファフニルぐらい大きくなっても不思議じゃない。でもそれははるか未来の事であって、俺達が生きている間に実現することはないだろう。


「という訳で、君達全員分のプレートは用意してある。上は本来なら大々的に宣伝して衆人環視の下授与式をやりたかったんだろうけど、生憎と今は人手も金も不足しているからね。質素ながら手渡しで終わりだ」


そう言って、リリエラは俺達一人ずつにプレートを差し出してきた。懐にしまってあったゴールドランクのプレートを差し出し、代わりに真新しいアダマンタイトのプレートを受け取る。シャリーとドランのプレートには特別なケースが用意されていて、紐を通して首にかけられるようになっていた。二人共あまり意味を理解せずに喜んでいるようだが、首からプレートをぶら下げた姿はとても可愛らしい。


「以上だ。そのプレートさえあれば乗合馬車や商店での割引など各種特典が受けられるが……君達にはあまり関係ないかな」
「いえ、そんなことありませんよ。ありがとうございました」


苦笑するリリエラに礼を言っておく。リリエラの言うとおり、今の俺達がプレートの恩恵を受ける場面はそうそう無いだろうけど、それでも自分達がやったことを公式に褒められるのは嬉しいものだ。貰ったばかりのプレートを懐にしまい、いつか役に立つ日が来るかもしれないと思いつつ、俺達はギルドを後にした。

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