ReBirth 上位世界から下位世界へ 外伝集

小林誉

外伝 ランクアップ①

「客が来ている?」
「はい。グリトニルの王都から訪れた、ギルドマスターリリエラの使いと名乗っています」


祝勝会から戻って数日経った頃、城の正門で警備を努めていた兵にそう告げられた。てっきりガルシアから例の領地の使いが来るとばかり思っていたから、予想もしてなかった訪問に少し戸惑う。とりあえず中に通すように言って造ったばかりの謁見の間で使者を迎える準備をする。まだ部屋だけ造って内装が手付かずなので、絨毯も無ければ調度品も置いてない。あまりにも殺風景なので急遽いくつかの花瓶を置いてみたが、これが意外と部屋の造りにあっていたようで、みんなからセンスがいいと好評だった。そんな謁見の間は部屋の広さで言えば他国の半分もなく、玉座も機能性を優先しているので華美な装飾は施していない。座り心地優先だった。まだ正式に即位していない状態で使うのはどうかとも思うが、他に使える部屋もないので仕方がない。いそいそと玉座に腰掛けると息つく暇もなく扉が開けられ、リリエラの使いが入ってきた。


使者はまだ若い冒険達のようで、戸惑いながらまっすぐこちらに進んでくる。全員駆け出しなのか、歳は俺と大差がないように見えた。男と女が二人ずつの四人パーティーだ。彼等は正面に座る俺を若干緊張しながら見つめ、数メートル手前で静かに膝を折る。


「えっと……あの、エスト様におかれましては、ご機嫌麗しゅう……」
「ああ、別に緊張しなくていい。まだ俺は正式に即位していないんだから。それより、要件を聞かせてもらってもいいかな?」
「は、はい! では、これを御覧ください」


リーダーらしき冒険者が懐から一通の書状を取り出し、左右に控えていた親衛隊の一人がそれを受け取って恭しく差し出してきた。王様ともなると毎回こんな面倒なやり取りをしなければならないのかと思うと今からウンザリするが、それは実際に王様業をやり始めてから考えるとしよう。蝋で固めてあった書状の封を切り、書かれている文字を目で追うと、そこには俺がすっかり忘れていた内容が書かれてあった。


「……なるほど、要件はわかった。すぐにでもグリトニル王都へ全員で出向かせてもらうことにする。ところで、君らはこれからどうするんだ?」
「はい、俺達はこの後この街のギルドに顔を出して、適当な依頼を受けてから王都に帰るつもりです」


見たところ、彼等の平均レベルは6ぐらいか。まともな討伐依頼を受けるには低いレベルだし、装備を見てもあまり良いものを身に着けていない。お使いクエで日銭を稼いでいるのだろうと予想できる。


「そうか。ならギルドに寄った時、冒険者学校の事を聞いてみるといい。君らのように冒険を初めて間もない連中を支援するための施設だからな。俺の紹介だと言えば悪くはされないはずだ。きっと力になってくれるよ」
「あ、ありがとうございます! 早速訪ねてみます!」


何度も礼を言いながら去っていく彼等の姿を見送って、俺は改めて書状の中身を確認する。彼等が持ってきた書状には、リリエラからの頼み事が書かれていたのだ。


「ランクアップねぇ……ランクがある事自体、完全に忘れてたな」


リリエらからの頼み事――それは王都のギルドを訪れて、ゴールドからアダマンタイトへのランクアップの手続きを行ってほしいとのことだった。この世界の冒険者はブロンズ、シルバー、ゴールド、アダマンタイトの順にランクが高くなっていく。上のランクに上がる毎に数々の特典が受けられるありがたいシステムではあるのだが、既に冒険者としてほとんど活動しなくなっている俺達パーティーにとって、今更有り難みのないものなのだ。なので別に必要もない手続きではあるのだが、ギルドとしての体面のために是非受け取って欲しいらしい。


「まあ、くれるって言うなら貰っとくか。別に損するわけでもないし、久しぶりにリリエラの顔も見てみたいしな」


そうと決まれば行動あるのみ。俺はクレア達に話をつけ、翌日グリトニルの王都へと移動していた。復興に忙しいグリトニル王都は多くの人や物でごった返しており、通りを歩くのも一苦労だ。


「ゴールドランクになったのが随分昔のことのように感じますね。あの頃はアミルさんも一緒にいましたし」
「ゴールドの恩恵も特に受ける場面がなかったしな。乗合馬車など数えるほどしか乗らなかった」
「惜しいなぁ~。私も冒険者登録してれば同じプレートをもらえたかもしれないのに」


クレアとディアベルも俺同様にランクの事など完全に忘れ去っていたようだ。唯一このメンツの中で冒険者登録していないレヴィアが悔しがっているが、こればっかりは我慢してもらうしか無い。あとで服屋にでも連れて行って、気を紛らわせてやろう。


「それにしてもご主人様、なぜ今更ランクが上がるんですか?」
「うーん……どうもね、俺達のランクアップをギルドの宣伝に利用したいみたいなんだよ」


リリエラの書状には国の上層部の意向で――と言う一文が書かれていたので、恐らくリムリック王子あたりが今回の件を言い出したのかも知れない。今グリトニルは暗い話題ばかりだし、俺達勇者パーティーに最高ランクを授与したという、少しでも明るい話題が欲しいのだろう。最近俺の領地にある冒険者学校ばかり注目されるものだから、グリトニルのギルドの宣伝効果も狙ってるんだと思う。王子やグリトニルには散々世話になっているし、協力するのもやぶさかではない。


「あ、あれがギルドみたいですね」


クレアの指差す方に、見慣れた建物の姿が目に入った。そう言えば、ここのギルドに来たことがあるのは俺だけだったか? まあ、いいか。さっさと手続きを済ませてしまおう。

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