ReBirth 上位世界から下位世界へ 外伝集

小林誉

外伝 凱旋⑥

「久しぶりだなエスト」
「ちゃんと話すのは久しぶりだよね。元気だったエスト君?」
「お久しぶりですお二人とも。おかげさまで元気にやってますよ」


魔族との戦いではリオグランドもグリトニル同様に大きな被害があったと聞く。魔族が大陸中央を突破する事に力を注いでいたため王城まで押し寄せてくると言った事は無かったようだが、それでも多くの民や兵士が亡くなったらしい。


「リオグランドの状況はどんな感じですか? 少しは落ち着きました?」
「もっと手こずるかと思ったが、思ったより早く復旧できそうだぞ」
「ファータの魔法使い達も手を貸してくれてるからね。他の国より速く立て直せるんじゃない?」
「なるほど」


確かにファータの精霊使い達が手を貸してくれるなら、荒れた国土を元に戻すのも難しくないはず。この協力関係が続くなら、リオグランドとファータは当分上手くやっていけるだろう。


「それよりエスト、聞いたぞ。自分の領地で闘技場を造ったそうじゃないか」
「ええ、まあ。町おこしの一環として真似させてもらいましたよ」


パクった事を悪びれもせずに言い切る俺に、細かい事を気にしないフォルザはガハハと豪快に笑うだけだ。やはり彼は器の大きい、気持ちの良い人物だ。国民に人気があるのも納得できるというものだ。


「うちの国の闘技場も普段使ってないからね。兄貴、この際エスト君のやり方を参考にさせてもらって、新しい娯楽にしてしまうのもいいんじゃない?」
「そうだな。その為にも、一度エストの領地を見てみる必要がある。どのような施設で集客して利益を出しているのか、大変興味深い」
「その時は大歓迎しますよ」


手を振ってその場を後にするフォルザ達。この場は確かに戦勝祝いの席でもあるが、同時に彼等国の重鎮にとっては外交の場でもある。俺と話す以外にも他国の人間と話さなければいけない事が山積みだろう。俺も一息つくかと思い料理の乗ったテーブルに足を運ぶと、そこにはファータからやって来たレベリオとアミスターの姿があった。


「エスト殿、久しいな」
「お、エストじゃないか。元気そうだな」
「二人ともしばらくだな。ファータの様子はどうなんだ?」


彼等の住むファータは今回の戦争で直接被害を受ける事は無かった。以前ならともかく、今はレヴィアの力で海流が操作されているので、リオグランドとの間にある一部の航路を除き、船で侵入する事が出来なくなっている。その為、魔族達もファータへの侵攻を後回しにしたと言う訳だ。


「お陰様で順調に復興しているよ。以前捕らえたシーティオの奴隷達がここに来て高値で売れているからね。言葉は悪いが、戦争特需に沸いている」
「そっか。元軍人の奴隷なら体力もあるだろうしな」
「景気が良くなったのもあって、国外に逃げていた奴等が最近戻って来てるんだよ。この調子だと、すぐ元通りになるかもな」


結構な事だ。ファータはもともと魔法使いが多い上に元の住民達が戻って来るのであれば、侵略で受けた傷も早く癒える事だろう。


「失礼、ご一緒してもよろしいですか?」


その時、談笑する俺達に一人の人物が声をかけてきた。誰かと思えばシーティオのフォルティス公爵だ。彼女は普段かっちりとした軍服っぽい服を着ていたはずだが、今日は式典なのでドレスを身に纏っている。もともと美人なので着飾るとますます美しさに磨きがかかっていた。


「もちろんです。どうぞこちらに」
「フォルティス公爵、貴女とは一度じっくり話をしたいと思っていたのですよ」
「私もですレベリオ殿」


フォルティス公爵が国王を打倒するまで、シーティオは軍事国家であり侵略国家だった。最もその被害を受けたのは他ならぬファータだ。ファータは多くの民を殺害されたり奴隷にされたりと、シーティオに対しては恨みが積もっているはず。にもかかわらず、レベリオとフォルティス公爵は微塵もそんな素振りを見せず、普通に会話していた。


「ファータは復興が順調なようですね。まずはその事をお祝い申し上げます」
「ありがとうございます。シーティオこそ公爵の指揮の下、生まれ変わったように状況が改善していると耳にしました。その手腕は是非とも参考にさせていただきたい」


うーむ……二人とも相手に対して悪意はないんだろうけど、どこかよそよそしい感じがするな。まあ、片や侵略を受けた側、片や自分に直接責任が無いとは言え侵略した側の人間。ぎこちなくなるのも無理はないってところか。そうなる事がわかっていたのに話しかけてきたって事は、それだけフォルティス公爵は各国との関係改善を望んでいると言う事だ。そして、この場に俺が居たと言う事も意味があるのだろう。


「お互いに余裕が出来たのなら、何か一つ交易でもしてみればどうですか? 直接は国民感情が納得しないでしょうから、第三国経由で。リオグランドを間に挟めば文句も少なくなるでしょう」


関係改善は簡単な事ではない。シーティオは人間で大部分を構成しているため世代交代が早く、過去に自分達の先祖が起こした侵略戦争もすぐに忘れてしまう――が、ファータは妖精族の国だ。彼等は長命であるため、今生きている国民達が後数百年は元気なままだ。自分達が直接被害を受けた事柄をそう簡単には許せはしないはず。それでも両国の未来を考えた場合、少しでも関係改善の糸口を作っておくべきだろう。思いもかけぬ俺の申し出にレベリオは一瞬面食らったような表情をしていたが、すぐに冷静さを取り戻す。


「ファータの恩人であるエスト殿に言われては、嫌とは言えんな」
「ありがたい。では早速ですが、細かい話に移ってもよろしいですか?」


目配せで俺に礼をするフォルティス公爵。公爵が俺に期待していた役割はこんな所だろう。両国にとって恩人であるところの俺の仲介では、レベリオも無視はできないはずだ。別にシーティオの肩を持つつもりはないが、将来の事を考えて両国の関係をよくしておくのは悪い事ではない。景気が良くなれば俺の国にも恩恵があるかも知れないからな。俺とアミスターをそっちのけで話を始めた二人を見ながら、俺はそんな事を考えていた。

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