ReBirth 上位世界から下位世界へ 外伝集

小林誉

外伝 凱旋⑤

式典が終わり、参加した俺達と各国の代表はグリトニルの王城内へと招かれた。普段謁見に使われる広間には色とりどりの料理が並べられ、各国から取り寄せた珍しい酒がこれでもかと集められている。壁際に座った楽士達が自らの楽器を持って美しい音色を流し、この宴に花を添えていた。


広間に招かれたのは王族だけでなく、俺達のように戦いで功績を上げた者や、避難する際に多くの人を助けた者など身分の差なく人が集められていたので、王城での宴だと言うのに格式ばった雰囲気は皆無だ。ざわざわと人々が騒めく中アスローン王が宴の開始を宣言すると、さっきまで厳かな曲を奏でていた楽士達が軽快な音楽を鳴らし始め、広間の雰囲気を一変させる。それに触発され、ある者は踊りだし、ある者は料理を手に取り、ある者は杯を片手に喝采を送っていた。そんな賑やかな雰囲気の中、俺達パーティーは早速多くの人々に囲まれる事になった。


「エスト様、お会いできて光栄です! よければ魔王や邪神との戦いの様子を語ってはいただけませんか?」
「クレア様、同じ獣人として貴女の活躍を誇りに思います!」
「ディアベル様、貴女の魔法の腕はエスト様以上とか。是非私に魔法の神髄をご教授願えませんか?」
「レヴィア様の御父上は古の勇者その人だと耳に挟みましたが、真でしょうか?」
「シャリーちゃん、お兄さんとあっちで遊ぼうか? 美味しいおやつがあるよ」
「凄い! 幼竜を直に目にする機会が訪れるなんて!」


と、こんな感じで次から次へと質問攻めだ。取りあえずシャリーに声をかけたロリコンを思い切り睨み付けて退散させた後、彼女の手を取って俺の側に避難させてから、俺達はそれぞれ詰めかけた人々の相手をする羽目になった。やれ剣技を見せろ、魔法がどうだ、邪神や魔王はどんな奴だった、うんたらかんたら――などなど、同じ質問ばかり繰り返されてうんざりし始めた頃、ようやく俺達を解放してくれる人物が現れた。


「おお。エストよ! 楽しんでおるか!?」
「これはリギン様。お久しぶりです」


堂々たる体躯のドワーフの登場で俺達に群がっていた人々は蜘蛛の子を散らしたように離れていく。それと入れ替わるように近づいてきたリギンは既に出来上がっているのか、体から強烈な酒気を放っていた。シャリーなど露骨に顔をしかめているが、リギンはそんな事気にもしていないのか、その髭面をほころばせている。


「元気そうではないか。前会った時より逞しくなっていないか?」
「邪神と戦うなんて滅多に出来ない経験をしましたからね。そのおかげかも知れません」
「違いない」


ガハハと大きな声で笑うリギンは上機嫌だ。そう言えば彼は今日一人で来たのだろうか? 一人娘であるスフィリ王女の姿が見えないんだが。すると、俺の探るような視線から何かを察したリギンが、質問する前に答えてくれた。


「スフィリならリムリック殿と一緒だろう。この宴が始まって早々に姿を消しおったわ」
「意外でした。リギン様はてっきり二人の事に反対なさると思っていたんですが……」
「正直言って父親としては気に入らん! しかし、国王として考えた場合、あれ以上の男は居るまい。出自に文句はなく、頭も切れる上に自ら戦いの場に赴く勇気も持っている。……それに、当人同士の気持ちが大きいしな」


頑固親父を絵に描いたようなリギンならもっと猛烈に反対するのかと思ったが、彼は父親である前に国王である事を優先させたようだ。当然と言えば当然だが、やはりただの頑固親父ではなかったらしい。王子達が結婚した場合、すぐ両国が一つになると言う事は無いと思う。しかし将来的にはどうだろうか? 二人の子供が一人だけであればグリトニルの王位に就くだろうが、二人男子が生まれれば、その内の一人がバックス王になる可能性も出て来る。そうやって長い時間をかけて血縁関係を深めていき、遠い将来両国が統一される可能性だってありえるのだ。リギンとしては、どういった形でも国が発展するのであれば黙認する方向なのだろう。


「では、そう遠くない内に二人は一緒になるのですか?」
「そう簡単にはいかんな。バックスはドワーフ以外の者が王になった事などない。仮に二人の子供が出来たとして、民達が素直に受け入れてくれるかどうか……」


下手をすれば国が分裂する――ハッキリと口にした訳では無かったが、それぐらいの事は俺でも予想出来た。


「あの二人なら何とかしますよ」
「……散々不可能を可能にしてきたお前にそう言われれば、本当に何とかなりそうな気がするな」


俺の気休めに、リギンは来た時と同じようにガハハと笑いながら去って行った。そんな彼と入れ替わるようにこちらに近づいてきた人物が視界に入る。リオグランドのフォルザとティグレだ。かの国の国王はかなり体が弱っているので今回参加したのは彼ら二人のみ。リギンとの話ではリムリック王子とスフィリ王女の面白い話が聞けたが、さて、フォルザ達からはどんな話が聞けるだろうか?

「ReBirth 上位世界から下位世界へ 外伝集」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く