とある魔族の成り上がり

小林誉

第136話 地盤固め

ディアボが死に、領主がケイオスと言う名のハーフに変わったと言う知らせを出したら、各地で予想通りと予想外の反応があった。まずハーフには従えないと反発する領地が半分。これは当然あるだろうと思っていた事なので今更慌てたりはしない。そして素直に恭順を示したのがその半分で、残りは回答なしだった。恐らくこちらの出方次第で敵にも味方にもなるんだろう。


そこでまず俺は、恭順を示した連中を城に招待し、これ見よがしに歓待した。暴君そのままと言ったディアボに従った連中だけあって、そのディアボを倒した俺はもっと恐ろしく、冷酷な奴だと思っていたのだろう。それが実際会ってみると真逆の対応をしてくるのだから、かなり戸惑ったに違いない。


「中には俺の事を舐める奴も出てくるんじゃないのか?」
「出るだろうね。でも問題ないさ。じきに君の怖さを思い知る事になるんだから」


今やすっかり軍師の枠に収まったケニスはそう言って笑う。今回の策はケニスの発案だ。今この時、いきなり広大な領地を手に入れた俺に対して、全ての者が実力を推し量っている最中だという。そんな連中を上手く纏めるためにどうすれば良いのか? そこで出たのが飴と鞭作戦だった。


味方をする者は厚遇し、敵対者は容赦なく討伐する。同時に離反した者は敵対者以上に残虐に殺し、怒らせればどうなるのかを周知徹底させる――それがこの作戦の目的だった。俺に厚遇された連中が周囲の魔族を勧誘したり、敵対した時の説得役に使えれば良し。そこまでしなくても味方になって離れなければ良い。搾取する領主と共存を掲げる領主、どちらが自分達のためになるか、考えなくても解る事だ。これが飴。


そして鞭の部分。最初から敵対している者達は、占領後領主他責任者数名の首を取るだけで味方に組み入れる。その後は他と同様、厚遇して忠誠を誓わせる手はずだ。そして肝心の裏切り者に対しては、これは仲間内で意見が分かれたものの、結局見せしめの意味も込めて一族郎党皆殺しと決定した。ただし、拷問して殺すのではなく、磔など人目のあるところであっさり殺す方法になった。


「連中の討伐に君が動くのも良いけど、それはもう人任せにした方が良いと思うな」
「俺が動くとマズい事でもあるのか?」
「これだけ広い領地の領主様が、おいそれと出歩くのは感心しないな。威厳が損なわれるし、何より、ディアボみたいな目に遭わないとも言い切れないしね」
「…………」


ディアボの哀れな最期を思い出して自然と背筋が寒くなった。言われてみればその通りだ。俺はたまたま吸収スキルを手に入れて上手くやって来たが、俺以上に幸運な奴がいないとも限らない。エルフの件もあるし、他の吸収スキル持ちには注意しないとな。


結局、俺は城の兵士をある程度の人数に分けて、それぞれを敵対表明した領地へと派遣した。まず一番数の多い魔族の兵を率いるのは、配下になったばかりのバイスだ。もともと兵士長だし、兵達も彼を信頼しているのでそのまま登用の運びとなった。


グラディウス達アードラー三兄弟もバイス同様に魔族兵を率いてもらう。名の通った彼等になら、魔族達も素直に従うだろう。


次にハグリーとルナールの二人に、獣人のみで編成した部隊を任せた。この街は他の街と違って多様な種族が多い。城にも相当数の他種族がいたので、部隊編成には困らなかった。獣人特有の強力な身体能力で敵を圧倒してくれるはずだ。


次はレザール率いるリザードマン部隊。彼等とは種族的に隔たりがありすぎて、正直言って見分けがつかないの。きっとその固い鱗と水中でも自由に動ける機動力で活躍してくれるに違いない。


ラウとグルト、そしてリンの三人には、エルフと人族の混成軍を率いてもらう事になった。この部隊は大半の者が奴隷だが、全て戦闘経験者なので戦力的には問題ない。


リーシュが率いるのは翼人部隊だ。流石に翼人の数は少ないので、彼等の主な任務は偵察や伝令になる。その内ペガサスを利用した戦力増強も考えなくてはならないな。


そして最後にシーリだが、彼女は俺の側で親衛隊を統率する事になった。新たに募集した兵の中から特に腕が良く、尚且つハーフや他の種族に対して偏見を持たない者という厳しい条件に当てはまった二十人の小部隊を、シーリが直々に鍛え上げて俺の身を守る親衛隊に仕立て上げる予定だ。シーリは軍出身だけあって新兵訓練のやり方ぐらい知っているだろうから、彼等はそう遠くないうちに俺の周囲を固めてくれるに違いない。


そして大森林に留まっているイクスとシオンの二人も城に呼ぶ事にした。今や俺の領地は大森林から魔族領の一帯を占める規模になっている。大森林と接触する魔族領側の領地を俺が押さえたのだから、彼女達が大森林に留まる理由がなくなったのだ。と言っても大森林の拠点は放棄せず、ここの兵達を使って要塞化させるつもりでいる。あそこは人族と何かあった時に最前線になるのだから、守りは固めておかなければならない。


同時に南の土地から入る硫黄は大森林ではなく、この街へ運ばせる事になる。これからはこの城で火薬を生産していく事になるだろう。


着々と進む地盤固めに、俺はひとまず満足していた。



「とある魔族の成り上がり」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く