とある魔族の成り上がり
第89話 ケニス②
「今説明したとおり、俺には他人からスキルを奪う与える能力がある。そこで俺はシオン達を配下に収め、大森林で自分の領地を開拓しているんだ」
再び席に着き、興味深そうに聞いているケニスが続きを促してくる。彼が知りたいのはそこではなく、なぜ俺達が南西にわざわざ向かっているかだ。
「実はな、俺達は最近人間の国が開発していた新兵器を奪取した」
「新兵器!? それは興味深いね。一体どんな武器なんだい? 形は? 重さは? 叩きつけるのか切りつけるのか、はたまた矢のように飛ばす武器なのかな? いや~気になるね!」
新兵器という言葉に過剰反応するケニスをシオンが苦々しい表情で見つめていた。ケニスの事をよく知らない俺達は急に身を乗り出さんばかりの勢いに呆気にとられている。何となく思った事だが、コイツはラビリントに居た研究員、ヴァイセと同類なのかも知れない。あいつも自分の興味のある事だと饒舌になっていたし、あながちこの予想は外れていないだろう。
「……詳しくは言えんが、従来の武器とは全く違った形をしているとだけ言っておく。それは使い方次第で精強な軍隊だろうが堅牢な砦だろうが、一撃で破壊しうる兵器だ」
「そんなに凄いのかい? 話に聞いただけでは信じられない性能だな。となれば、剣や槍みたいな個人の武勇を頼りにする武器は今後役に立たなくなるな……。もちろんそれが量産できる事が前提だけど」
ちょっと話に聞いただけでそこまで考えるのか。言動は危なっかしいものの、なかなか頭の切れる男らしい。
「ま、どんな物かは実際に見てみるのが一番だろうから説明は省く。とにかく、それを作るためには硫黄が大量に必要になるんだ」
「なるほど。てことは、君達は火山を目指しているんだな? 確かにあそこなら硫黄がゴロゴロしているし、手に入れるのは簡単だろう。現地の有力魔族か商人に話を持ちかければ、定期的に輸送するのはそう難しい事でも無い。……それでか。君達が補給を求めてやって来たのは。大方ハーフや人族が居るから街へ入れなかったんだろう?」
……鋭い。僅かな情報で確実に答えを出してくる。思った以上に危険な男だ。裏切られた時の事を想像すると怖いが、仲間に引き込んだ場合俺達にとって大きな力になるかも知れない。
「お前の言うとおりだよ。俺達はそれが理由でここにやって来た。シオンの案内でな」
「ふむ……そうか」
考え込むケニス。難しい顔で黙り込む彼は今何を考えているのだろうか。
「……君達の勢力は今どの程度なんだ? 開拓を進めているならそれなりの人数が集まってそうだが」
「百に満たない数だな。ただ、ケイオス様を含めてスキル持ちが何人か居るし、実際の数より戦闘力があると思って良い」
答えたのは俺の横に座っていたシオンだ。流石にいつまでも落ち込んではいないか。シオンの返答を聞いたケニスは更に考え込んでいる。自分が身を寄せて大丈夫なのかをその回転の速い頭で考えているに違いない。やがて彼は結論を出したのか、その口を開いた。
「ハッキリ言って戦力と呼ぶのもおこがましいような弱小勢力だけど、それを自分達の力でどこまで大きく出来るのか……僕はそこに魅力を感じるよ。正直言ってここの生活にも飽き飽きしていたからね。僕のため込んだ知識と君達の言う新兵器、それで独自の勢力を築き上げるのも面白そうだ。是非協力させてくれ」
もっと慎重に考えると思ったのに、意外と簡単に協力を申し出てきた事に意表を突かれる。だが支配の影響下にあるわけでも無く、奴隷契約を結んでいるわけでも無い男を簡単に信用できるはずもないため、俺達はどうしても疑いの目で見てしまう。そんな俺達の反応などお見通しだとばかりにケニスは笑みを浮かべていた。
「すぐ信用しろと言っても無理があるのはわかっているよ。だからこれからの僕の行動で判断してもらうしか無いね。ちなみに僕もスキル持ちだから、仲間に入れてもらえれば君達の役に立てると思うよ」
「スキル?」
「そう、スキルだ。僕のスキルはなかなか使えるぞ。君の『支配』ほどじゃないけどね」
チラリと横に座るシオンに視線をやると、心得たとばかりに彼女は口を開いた。
「ケニスまスキルは『防壁 弱』といいます。自分の正面だけと言う狭い範囲だけですが、盾を展開して身を守る事が出来るのです。それは物理的な攻撃やスキルで生み出された精神に作用する物まで区別無く防ぎ、絶対の守りと言えるでしょう」
「へえ……」
確かにそれは便利そうなスキルだ。こと守りに関しては、今のところケニスのスキル以上に便利な能力を見た事が無い。これは是非とも取り込みたい力だった。
「いいだろう。ではお前を俺達の仲間に歓迎するよ。これから役に立ってくれる事を期待するぞ」
「任せてくれ。ああ、それにしても楽しみだな。早くその新兵器とやらをこの目で直接見てみたいよ」
浮かれて機嫌の良いケニスとは違い、俺は全く別の事を考えていた。彼のスキルは魅力だが、別に持ち主が彼のままである必要は無い。少しでもおかしな行動を取った場合はスキルを奪ってから始末してやろう。防壁のスキルで俺の吸収まで防げるかどうかは試してみないとわからないが、なに、動けなくする方法などいくらでもある。それまでは、ケニスが役に立つかどうか、じっくりと見定めてやろうじゃないか。
再び席に着き、興味深そうに聞いているケニスが続きを促してくる。彼が知りたいのはそこではなく、なぜ俺達が南西にわざわざ向かっているかだ。
「実はな、俺達は最近人間の国が開発していた新兵器を奪取した」
「新兵器!? それは興味深いね。一体どんな武器なんだい? 形は? 重さは? 叩きつけるのか切りつけるのか、はたまた矢のように飛ばす武器なのかな? いや~気になるね!」
新兵器という言葉に過剰反応するケニスをシオンが苦々しい表情で見つめていた。ケニスの事をよく知らない俺達は急に身を乗り出さんばかりの勢いに呆気にとられている。何となく思った事だが、コイツはラビリントに居た研究員、ヴァイセと同類なのかも知れない。あいつも自分の興味のある事だと饒舌になっていたし、あながちこの予想は外れていないだろう。
「……詳しくは言えんが、従来の武器とは全く違った形をしているとだけ言っておく。それは使い方次第で精強な軍隊だろうが堅牢な砦だろうが、一撃で破壊しうる兵器だ」
「そんなに凄いのかい? 話に聞いただけでは信じられない性能だな。となれば、剣や槍みたいな個人の武勇を頼りにする武器は今後役に立たなくなるな……。もちろんそれが量産できる事が前提だけど」
ちょっと話に聞いただけでそこまで考えるのか。言動は危なっかしいものの、なかなか頭の切れる男らしい。
「ま、どんな物かは実際に見てみるのが一番だろうから説明は省く。とにかく、それを作るためには硫黄が大量に必要になるんだ」
「なるほど。てことは、君達は火山を目指しているんだな? 確かにあそこなら硫黄がゴロゴロしているし、手に入れるのは簡単だろう。現地の有力魔族か商人に話を持ちかければ、定期的に輸送するのはそう難しい事でも無い。……それでか。君達が補給を求めてやって来たのは。大方ハーフや人族が居るから街へ入れなかったんだろう?」
……鋭い。僅かな情報で確実に答えを出してくる。思った以上に危険な男だ。裏切られた時の事を想像すると怖いが、仲間に引き込んだ場合俺達にとって大きな力になるかも知れない。
「お前の言うとおりだよ。俺達はそれが理由でここにやって来た。シオンの案内でな」
「ふむ……そうか」
考え込むケニス。難しい顔で黙り込む彼は今何を考えているのだろうか。
「……君達の勢力は今どの程度なんだ? 開拓を進めているならそれなりの人数が集まってそうだが」
「百に満たない数だな。ただ、ケイオス様を含めてスキル持ちが何人か居るし、実際の数より戦闘力があると思って良い」
答えたのは俺の横に座っていたシオンだ。流石にいつまでも落ち込んではいないか。シオンの返答を聞いたケニスは更に考え込んでいる。自分が身を寄せて大丈夫なのかをその回転の速い頭で考えているに違いない。やがて彼は結論を出したのか、その口を開いた。
「ハッキリ言って戦力と呼ぶのもおこがましいような弱小勢力だけど、それを自分達の力でどこまで大きく出来るのか……僕はそこに魅力を感じるよ。正直言ってここの生活にも飽き飽きしていたからね。僕のため込んだ知識と君達の言う新兵器、それで独自の勢力を築き上げるのも面白そうだ。是非協力させてくれ」
もっと慎重に考えると思ったのに、意外と簡単に協力を申し出てきた事に意表を突かれる。だが支配の影響下にあるわけでも無く、奴隷契約を結んでいるわけでも無い男を簡単に信用できるはずもないため、俺達はどうしても疑いの目で見てしまう。そんな俺達の反応などお見通しだとばかりにケニスは笑みを浮かべていた。
「すぐ信用しろと言っても無理があるのはわかっているよ。だからこれからの僕の行動で判断してもらうしか無いね。ちなみに僕もスキル持ちだから、仲間に入れてもらえれば君達の役に立てると思うよ」
「スキル?」
「そう、スキルだ。僕のスキルはなかなか使えるぞ。君の『支配』ほどじゃないけどね」
チラリと横に座るシオンに視線をやると、心得たとばかりに彼女は口を開いた。
「ケニスまスキルは『防壁 弱』といいます。自分の正面だけと言う狭い範囲だけですが、盾を展開して身を守る事が出来るのです。それは物理的な攻撃やスキルで生み出された精神に作用する物まで区別無く防ぎ、絶対の守りと言えるでしょう」
「へえ……」
確かにそれは便利そうなスキルだ。こと守りに関しては、今のところケニスのスキル以上に便利な能力を見た事が無い。これは是非とも取り込みたい力だった。
「いいだろう。ではお前を俺達の仲間に歓迎するよ。これから役に立ってくれる事を期待するぞ」
「任せてくれ。ああ、それにしても楽しみだな。早くその新兵器とやらをこの目で直接見てみたいよ」
浮かれて機嫌の良いケニスとは違い、俺は全く別の事を考えていた。彼のスキルは魅力だが、別に持ち主が彼のままである必要は無い。少しでもおかしな行動を取った場合はスキルを奪ってから始末してやろう。防壁のスキルで俺の吸収まで防げるかどうかは試してみないとわからないが、なに、動けなくする方法などいくらでもある。それまでは、ケニスが役に立つかどうか、じっくりと見定めてやろうじゃないか。
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