とある魔族の成り上がり

小林誉

第85話 シオンとの再会

賞金稼ぎ組合で報酬を受け取った俺達は、そのまま必要な物資を買い込んで大森林へと向かった。荷物をペガサスにくくりつけて大森林の上空を飛んでいると、魔族側に近い場所に開けた場所があるのが見えた。シオン達が開拓中の村というのはアレのことだろう。櫓にいる何者かがこっちを指差して警戒の声を上げている。連絡もなしに訪れたから敵だと思われているのかも知れない。このままでは着陸も出来ないので、俺はリーシュを伴って彼等に近づいて行った。敵意が無いことを示すように降下する速度はゆっくりだ。地上から弓で狙われているのが見えるが、万が一放たれたところで暴風スキルがあるので心配はいらない。時間をかけながら互いの姿がわかる距離まで近づいた時、俺の姿に気づいたシオンが慌てて周りの連中に武器を下げるよう指示していた。


「ケイオス様、お久しぶりです! 連絡がなかったので何者かと思いましたよ」
「悪いな。それより仲間を受け入れていいか? いつまでも空の上じゃ可哀想だからな」
「もちろんです」


リーシュが手で合図すると、上空で待機していたハグリー達残りのメンツが地上に降りてきた。それと同時にどこからかワラワラと集まってきた魔族や奴隷が荷解きを手伝い、ペガサスに水や飼葉を与えている。その間ぐるりと周囲を見渡してみたら、思ったより村が発展しているのがわかった。村の周囲は柵が二重に備えられおり、一番外側の柵に沿って深い堀が作られている。住居も全て木造ではなく、数こそ少ないものの石造りの建物まであった。


「シオン、今どれぐらい開拓出来ているのか説明してくれるか?」
「はい。ですがその前に屋敷に向かいましょう。立ち話でする内容でもないので」


シオンの言う屋敷とは、数少ない石造りの建物の事だった。他の建物と同じく平屋ではあるのだが、窓には鉄格子がはめ込んであって、入り口の扉も頑丈そうだ。


「ここはケイオス様が滞在される時に使っていただこうと用意させた屋敷です。他より頑強に出来ていますので、万が一村に侵入者が入り込んでもここなら安全でしょう」


なるほど、つまりここは極小の城なんだろう。指示した覚えもないのにわざわざそんな物を用意してくれるなんて、シオンの気遣いが嬉しい。屋敷の内部は四つの部屋と食堂、そして便所と風呂で構成された造りになっていて、二十人ぐらいなら余裕で寝泊まりできる広さがある。簡素なベッドも運び込まれているので今日からでも問題なく使えるだろう。そんな屋敷の食堂に集まり、俺達は思い思いの席に着く。


「まず、現在この村に住んでいる住人の内訳から説明させていただきます。私を含む魔族が三十三名。これらは以前私のスキルの影響下にあった者達でして、今はケイオス様に忠誠を誓っております。正規の訓練を受けているので戦いがあった場合主戦力として期待できるでしょう。次に奴隷ですが、こちらは格安で手に入ったものや私の実家からの援助が大部分を占めていまして、四十名丁度です。奴隷契約しているのは私ですから、ケイオス様の命令には逆らう場合がございますのでどうかご注意を」


約七十名か。結構大所帯になってきたな。数こそ増えたものの戦力として使えるのは魔族と俺達だけで、奴隷達にはあまり期待できそうにない。なぜならここに来るまでに見かけた連中が、皆痩せ細って戦えるようには見えなかったからだ。


「それと現在耕作地を広げていますが、これは一番早く収穫出来る物でも半年先になります。畑は小麦と各種野菜のみ。将来的には更に数と種類を増やす予定ですが、今は森林を伐採するのを優先していますので、当分先になりそうです。家畜はまだ数頭の牛がいるだけなので、食用に回す余裕はありません」
「状況は理解した。念のために聞くが、お前の両親や他の魔族が俺の存在に気がついた様子はあるか?」
「ございません。この村は私が私のために開拓していると信じ込んでいるようです」


ならひとまず安心だな。魔族側で警戒されない限りここは安全地帯になるだろう。


「ところでケイオス様。見慣れない顔が増えているようですが……」
「ああ、それも含めて説明するよ。俺がこの二ヶ月何をやっていたかを」


シオンと別れた後、俺達が街で傭兵団を立ち上げ、その初めての仕事にイグレシア商会の依頼を受けたところから、イクスを連れて研究施設を破壊しエルフの集落を逃げ出したところまで掻い摘んで説明する。傭兵団や商会の事には特に興味を示さなかったシオンだが、流石に新兵器には興味を持ったようだ。


「少量でも人を死なせうる新兵器ですか。それを量産できれば飛躍的に戦力増強になりますね。奴隷にくくりつけて敵陣に突っ込ませるだけでも大きな被害を与えられるでしょう」
『…………』


嬉々とした表情で話すシオン。そのあまりの発想に彼女以外全員が絶句してしまった。やはりこの女は人を人とも思わない危険な奴だ。コイツが敵でなく自分の配下で本当に良かったと心から思える。


「ま、まあ実際にどう使うかはその時に考えるとして、シオンには用意してもらいたいものがある」
「その新兵器絡みでしょうか?」
「そうだ。新兵器の量産には硫黄と木炭が必要だからな。この二つを何とかして用意しなければならない。木炭は窯をいくつか作れば何とかなるが、硫黄が手に入りそうな心当たりはあるか?」


俺の質問にシオンはしばらく考え込み、たっぷり五分は時間をかけてから再び口を開いた。


「……魔族領の南西に火山があります。確証はありませんが、そこに出向けば手に入る可能性がなくはないかと。商品として取り扱われていたと言う記憶もないので、条件次第で定期的にここに運び込ませることも可能になると思いますが……」
「南西か……一度足を運ぶ必要があるな」


魔族領は自分の故郷とこの大森林ぐらいしか知らない俺だ。出向く時には案内が必要になる。シオンか魔族を連れていけば何とかなるだろう。だがその前に、ここらで一度スキルの確認と譲渡をしておきたい。この先何があるかわからないし、少しでも全体の戦力を強化しておかないとな。 

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