とある魔族の成り上がり

小林誉

第41話 奴隷達

「ケイオス様、お帰りなさい。指示されていた物資は運び込んでおきました」


屋敷に戻ると、ちょうど中から出てきたシードと玄関で鉢合わせになった。彼にはセイスに頼んでおいた武具や食料などの荷運びを頼んであったのだ。屋敷の中には商店から運び込んだと思われる物資が山積みになっている。これだけあれば、増えた奴隷達の装備も問題なく整える事が出来るだろう。


「ご苦労だったなシード。ちょうどいい。お前も中に入れ。顔合わせをしておこう」
「わかりました」


身なりの良いシードに対して尊大な態度をとる俺に後ろの奴隷達が戸惑っていたが、それを無視して中に入ると、手ぬぐいで鼻と口を覆ったリーシュとハグリーが掃除をしている最中だった。埃まみれの二人とは対照的に、屋敷の中は随分と片付いている。どうやら俺の居ない間にせっせと掃除に励んでくれていたらしい。


「ケイオス……後ろの連中が新しい奴隷か?」
「女も居るのか。ふうん……」


新しい顔ぶれを見た二人の反応は様々だ。新顔の奴隷達も掃除道具を片手にした二人を見て戸惑っている。


「ここらで自己紹介といこうか。まず俺はお前達の主であるケイオスだ。そっちの男がシード。この街の議員であるセイスの側近でもある。それでそっちの翼人がリーシュ。見かけによらず短気だから気をつけろ。そしてそっちがハグリー。コイツと酒を飲む時は気をつけろよ。じゃあお前達、一人ずつ名乗ってくれ。それが終わったら全員で掃除の続きといこう」


簡単な名乗りを済ませてから二人の手伝いをするつもりだったのだが、新しくつれてきた奴隷の言葉によって中断を余儀なくされた。


「ちょっと待ってよ。私、ハーフが主人になるなんて納得いかないんだけど」
「俺もだ。半端者にこき使われるなんてごめんだな」


文句を言って来たのは二人。エルフの女と人間の男だ。他の奴隷は成り行きを見守るように無言を貫いている。やれやれ、こいつ等はまだ自分の立場が理解できていないらしい。奴隷になったと言う事は、主人に生殺与奪を握られている事を意味しているんだがな。


「……納得いかないって、じゃあどうするんだ?お前等はもう俺の奴隷になったんだ。これからは俺の下で働く事になるんだから、文句言ったって仕方ないだろう?」
「それでもよ! エルフである私が黙って従うなんてあり得ないわ!」
「大体その男みたいな口調はなんなんだ? 男か女かわからん奴に偉そうにされたくないんだよ!」
「はぁ~……」


知らずに深いため息が口から洩れていた。こいつ等を買ったのは失敗だったかもな。ここまで主人に反抗的だと先が思いやられると言うものだ。かと言ってすぐに返品すると言う訳にもいかないだろうから、しばらく様子を見るしかない。いくらセイスが金持ちだからと言って、急に資産が目減りすれば怪しむ奴も出て来るだろうしな。仕方ない。ここは強制的に言う事を聞かせよう。俺は文句を言う二人に無言で近寄ると、それぞれの首輪に手を添えた。


「命令する。俺に対して口答えするな。主人に対する反抗は許さない」


俺の発した命令が効力を発揮し、二人の首輪が淡い光を放った。


「何を……!」


咄嗟に悪態をつこうとでもしたのか、血相を変える二人は口をパクパクと開き自分の口から言葉が出ない事に驚いている。その目はさっきまで違って憎しみが籠められていて、視線だけで人が殺せそうだ。よほど気に入らないらしい。それでも反抗しようと試みたのか、瞬時に締まった首輪に息が出来なくなり、その場に崩れ落ちた。


「かはっ! はあ……はあ……」
「く、糞が……!」


俺に逆らう行動を取らなければ首を絞められるのは解除される。男とエルフは悔しそうにしながらも、それ以上反抗する事は無かった。


「じゃあ改めて、自己紹介してもらおうかな。まずお前からだ」


そう言って、俺は向かって一番左側に立っていた若い人族の男を指さす。奴隷達は行動を制限された結果どうなるかを目の前で見た直後の為か、さっきとは態度がまるで違う。若干怯えながらも素直に口を開いた。


「俺は……グルト。歳は十七で人族だ。賞金稼ぎをやって生計を立ててたが、仲間に騙されて身に覚えのない罪を被せられた。奴隷落ちしたのはそれが理由だ」


この中でも一番若いから騙されやすかったんだろうか? 俺のようにガキの頃から人間扱いされていないと基本的に他人は疑うものだと考えるんだが、こいつはそうじゃないらしい。育ちが良いのかも知れないな。


「俺はレザール。歳は三十ちょうど。見ての通りのリザードマンだ。決闘を申し込まれた時に相手を殺してしまってな。それ以来奴隷として扱われている」


次に話したのはリザードマンの男だった。物腰や寡黙な雰囲気から察するに、ハグリーとは違ったタイプの戦闘馬鹿っぽいな。上手くコントロールすれば扱いやすい人種かもしれない。


「あたしはルナール。狐族の獣人よ。今年で二十四になるわ。もと盗賊だから正面切った戦いは苦手だけど、細かい作業なら得意よ」


その次に自己紹介したのが獣人の女だ。やはりそうか。素早そうな体格と周囲を常に観察している用心深さは堅気の人間じゃないと思ってたんだ。だが盗賊だったと言うならこれから先色々と便利に使えるだろう。いい人材が手に入ったな。


「……俺はリーチ。歳は四十ちょうどだ」


さっきまで苦しんでいた人間の男が手短に自己紹介を済ませた。本当に必要最低限の情報しか話さないつもりらしい。これが出来る限りの反抗ってところなんだろうか? なんだか凄くしょうもない男に思えるが、こっちも戦いで役に立つのならそれ以上は望まない。そして最後になったのがリーチと共にひどい目に遭ったエルフだ。


「私は……ラウ」


……それだけかよ。何とも反抗的な奴だ。先が思いやられるぜ。まあいい。とにかくある程度人数が増えた事で戦力は増強したんだ。傭兵団の立ち上げといこうじゃないか。

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