異世界転生チートマニュアル
第24話 戦闘
「お、おいフラガ!?」
「わかってる。慌てずに体のコントロールを俺に委ねろ」
ハゲ頭達襲撃者は、それぞれの武器を抜き前後から無言で近寄ってくる。その目は明確な殺意に彩られ、今更話し合いでどうにかなる雰囲気など欠片も無い。囮としての役割は現時点で果たしているものの、後から駆けつけるはずのリーフや兵士達は連中を近寄らせるためにある程度距離を取っているため、すぐこの場に現れるのは無理だった。つまり、しばらくは剛士とフラガで持ちこたえる必要があるのだ。
「よ、よし!」
剛士は手はず通りフラガを持つ手から広がっていく痺れるような感覚に身を委ねる。すると彼の意思とは関係無く、彼の体はフラガを鞘から鋭く抜き放った。
「あぶな!」
いつの間に投げられたのか、目前に迫るナイフを下からすくい上げるような一撃で跳ね飛ばす剛士――フラガ。襲撃者達は立て続けにナイフを投げつつ距離を詰めてくる。このまま中央で踏みとどまると四対一で戦うことになる。そう判断したフラガはナイフを弾きつつ、後方へ向けて賭けだした。まず後ろの二人を叩こうというのだ。
後ろに居た二人組の実力がどの程度なのか剛士には判別できない。しかし、今彼の体を操っているフラガには敵の強さがなんとなくわかるのだ。
「死ね」
短く吐き捨てるような言葉と共に突き出された剣を紙一重で躱し、フラガは胴に横薙ぎの一撃を放つ。吸い込まれるように叩き込まれた刀身は鈍い音と共に襲撃者の体へとめり込み、剛士の手に嫌な感触を伝えてくる。一撃を受けた襲撃者は短く呻きつつその場に崩れ落ちる。
本来なら胴を真っ二つにしてもおかしくない一撃なのだが、今回の戦闘では剣の刃を使わず、腹の部分を叩き込むだけにとどめている。これは別に敵に他対しての慈悲では無く、メンタルの弱い剛士のための対策だった。
「ひええっ! あぶねぇ! 助けてー! 誰かー!」
体を操られているため、唯一自由になる頭だけはさっきから喧しいことこの上ない。ただの斬り合いでもこの状態なのだから、目の前でスプラッタな光景を目にした場合、剛士なら間違いなく気絶する。それだけは避けたいフラガだった。
持ち主に圧倒的な戦闘力を持たせ、数こそ少ないものの魔法も使え、一見万能の武器に思えるフラガにも弱点はあった。持ち主が気を失っていると戦えなくなるのだ。彼は一方的に持ち主を操っているように見えるが、その実、自分を手に持った人間の意識と同調して体を動かしているに過ぎない。言うなればラジコンと同じで、どっちかの電池が切れてる状態では動かなくなる。そんな理由で現在フラガは斬り殺すのでなく、相手を打撲、骨折させる方針で戦っていた。
「ごちゃごちゃ喋りながら戦いやがって! 馬鹿にしてるのか!?」
本来なら冷静かつ無言で戦うような襲撃者達も、悲鳴を上げつつ見事な立ち回りを見せる剛士に苛立ちを隠せなかった。剛士は剛士で、自分の意図しないところで敵の冷静さを欠かせるファインプレーを見せていた。
「ぐふっ!」
また一人、フラガの一撃を受けて襲撃者が地面に崩れ落ちる。しかしそろそろ剛士の体は限界に近づいていた。呼吸が乱れて腕の振りが遅くなり、足下もおぼつかなくなる。戦い始めてから五分と経っていないのにこの状態だ。
「おいフラガ! アレをやるぞ!」
自身の限界が近いと悟った剛士が叫ぶ。一人で何を言っているんだといぶかしげな視線を向ける襲撃者を無視して、フラガは承知したとばかりに一瞬刀身を震わせた。残り二人となった襲撃者達の内、恐らくリーダー格であろうハゲ頭の頭頂部を見つめながら、彼は再び叫んだ。
「おいハゲ頭! おめぇの技借りるぞ! 太○拳んんん!!」
瞬間、夜の闇を一瞬白く染めるほどの光量をフラガが放った。これこそフラガの持つ数少ない魔法の一つ、光の魔法だ。一瞬だけ強力な光を放つ地味な魔法ではあるが、不意を突けば相手の目潰しが出来る便利な魔法でもある。まるで強烈なストロボのような閃光をいきなり目にしてただで済むはずがなく、その場にいる者達全ての網膜を焼いた。
「ぐああ!」
「目! 目がああぁ!」
破滅の呪文を聞いた何処かの大佐を彷彿とさせるセリフを吐きながら、武器を取り落として苦しむ襲撃者達。これで後は戦えなくなった者達に一撃を入れて捕らえればお終いだったのだが、そこはやはり剛士だった。
「め、めがぁぁぁ!」
「なんでお前までやられてるんだ!」
目を押さえたまま地面を転がり続ける剛士に激しくツッコミを入れるフラガ。フラガが魔法を使う直前、剛士が言った言葉は別に孫○空の物真似が目的ではない。相手の不意を突くため、剛士とフラガだけにわかる合図があれだっただけだ。おかげで効果てきめんなのだが、肝心の自分が目を閉じると言う事を忘れていたため、今剛士は無様に地面を転がることになってしまっていた。
「痛いって! 全然見えないって!」
「なんでお前はそんなにアホなんだよ! まったく……! でもまぁ、ようやく援軍のご到着だ」
身動きできなくなった剛士達が倒れる通りに、ようやくリーフ達が駆けつけてきていた。ガチャガチャと鎧を鳴らしながら走り寄ってきた彼等は、素早く襲撃者達を拘束していく。
「大丈夫か剛士!?」
「ちょっと! どこか怪我したの!?」
「死んでないわよね!?」
口々に剛士の安否を確認してくる仲間達。普段口では色々言っているが、本当は心配していたのだ。苦しむ剛士がそれに応える余裕は無いため、そんな彼に変わって応えたのはフラガだ。
「大丈夫だよ。ちょっとドジ踏んで自爆しただけだ。しばらくすりゃ元に戻る」
「なら良いんだけど……。これで一応ロードの手先は全滅かな?」
「これで全て解決……ならいいんだけどね」
どことなく不安を感じながらではあったが、これでロードにまつわる一連の事件は一応の解決を見せたのだった。
「わかってる。慌てずに体のコントロールを俺に委ねろ」
ハゲ頭達襲撃者は、それぞれの武器を抜き前後から無言で近寄ってくる。その目は明確な殺意に彩られ、今更話し合いでどうにかなる雰囲気など欠片も無い。囮としての役割は現時点で果たしているものの、後から駆けつけるはずのリーフや兵士達は連中を近寄らせるためにある程度距離を取っているため、すぐこの場に現れるのは無理だった。つまり、しばらくは剛士とフラガで持ちこたえる必要があるのだ。
「よ、よし!」
剛士は手はず通りフラガを持つ手から広がっていく痺れるような感覚に身を委ねる。すると彼の意思とは関係無く、彼の体はフラガを鞘から鋭く抜き放った。
「あぶな!」
いつの間に投げられたのか、目前に迫るナイフを下からすくい上げるような一撃で跳ね飛ばす剛士――フラガ。襲撃者達は立て続けにナイフを投げつつ距離を詰めてくる。このまま中央で踏みとどまると四対一で戦うことになる。そう判断したフラガはナイフを弾きつつ、後方へ向けて賭けだした。まず後ろの二人を叩こうというのだ。
後ろに居た二人組の実力がどの程度なのか剛士には判別できない。しかし、今彼の体を操っているフラガには敵の強さがなんとなくわかるのだ。
「死ね」
短く吐き捨てるような言葉と共に突き出された剣を紙一重で躱し、フラガは胴に横薙ぎの一撃を放つ。吸い込まれるように叩き込まれた刀身は鈍い音と共に襲撃者の体へとめり込み、剛士の手に嫌な感触を伝えてくる。一撃を受けた襲撃者は短く呻きつつその場に崩れ落ちる。
本来なら胴を真っ二つにしてもおかしくない一撃なのだが、今回の戦闘では剣の刃を使わず、腹の部分を叩き込むだけにとどめている。これは別に敵に他対しての慈悲では無く、メンタルの弱い剛士のための対策だった。
「ひええっ! あぶねぇ! 助けてー! 誰かー!」
体を操られているため、唯一自由になる頭だけはさっきから喧しいことこの上ない。ただの斬り合いでもこの状態なのだから、目の前でスプラッタな光景を目にした場合、剛士なら間違いなく気絶する。それだけは避けたいフラガだった。
持ち主に圧倒的な戦闘力を持たせ、数こそ少ないものの魔法も使え、一見万能の武器に思えるフラガにも弱点はあった。持ち主が気を失っていると戦えなくなるのだ。彼は一方的に持ち主を操っているように見えるが、その実、自分を手に持った人間の意識と同調して体を動かしているに過ぎない。言うなればラジコンと同じで、どっちかの電池が切れてる状態では動かなくなる。そんな理由で現在フラガは斬り殺すのでなく、相手を打撲、骨折させる方針で戦っていた。
「ごちゃごちゃ喋りながら戦いやがって! 馬鹿にしてるのか!?」
本来なら冷静かつ無言で戦うような襲撃者達も、悲鳴を上げつつ見事な立ち回りを見せる剛士に苛立ちを隠せなかった。剛士は剛士で、自分の意図しないところで敵の冷静さを欠かせるファインプレーを見せていた。
「ぐふっ!」
また一人、フラガの一撃を受けて襲撃者が地面に崩れ落ちる。しかしそろそろ剛士の体は限界に近づいていた。呼吸が乱れて腕の振りが遅くなり、足下もおぼつかなくなる。戦い始めてから五分と経っていないのにこの状態だ。
「おいフラガ! アレをやるぞ!」
自身の限界が近いと悟った剛士が叫ぶ。一人で何を言っているんだといぶかしげな視線を向ける襲撃者を無視して、フラガは承知したとばかりに一瞬刀身を震わせた。残り二人となった襲撃者達の内、恐らくリーダー格であろうハゲ頭の頭頂部を見つめながら、彼は再び叫んだ。
「おいハゲ頭! おめぇの技借りるぞ! 太○拳んんん!!」
瞬間、夜の闇を一瞬白く染めるほどの光量をフラガが放った。これこそフラガの持つ数少ない魔法の一つ、光の魔法だ。一瞬だけ強力な光を放つ地味な魔法ではあるが、不意を突けば相手の目潰しが出来る便利な魔法でもある。まるで強烈なストロボのような閃光をいきなり目にしてただで済むはずがなく、その場にいる者達全ての網膜を焼いた。
「ぐああ!」
「目! 目がああぁ!」
破滅の呪文を聞いた何処かの大佐を彷彿とさせるセリフを吐きながら、武器を取り落として苦しむ襲撃者達。これで後は戦えなくなった者達に一撃を入れて捕らえればお終いだったのだが、そこはやはり剛士だった。
「め、めがぁぁぁ!」
「なんでお前までやられてるんだ!」
目を押さえたまま地面を転がり続ける剛士に激しくツッコミを入れるフラガ。フラガが魔法を使う直前、剛士が言った言葉は別に孫○空の物真似が目的ではない。相手の不意を突くため、剛士とフラガだけにわかる合図があれだっただけだ。おかげで効果てきめんなのだが、肝心の自分が目を閉じると言う事を忘れていたため、今剛士は無様に地面を転がることになってしまっていた。
「痛いって! 全然見えないって!」
「なんでお前はそんなにアホなんだよ! まったく……! でもまぁ、ようやく援軍のご到着だ」
身動きできなくなった剛士達が倒れる通りに、ようやくリーフ達が駆けつけてきていた。ガチャガチャと鎧を鳴らしながら走り寄ってきた彼等は、素早く襲撃者達を拘束していく。
「大丈夫か剛士!?」
「ちょっと! どこか怪我したの!?」
「死んでないわよね!?」
口々に剛士の安否を確認してくる仲間達。普段口では色々言っているが、本当は心配していたのだ。苦しむ剛士がそれに応える余裕は無いため、そんな彼に変わって応えたのはフラガだ。
「大丈夫だよ。ちょっとドジ踏んで自爆しただけだ。しばらくすりゃ元に戻る」
「なら良いんだけど……。これで一応ロードの手先は全滅かな?」
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