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勇者のやり直し~世界を救った勇者は美少女に生まれ変わる

小林誉

第177話 協力者

――フレア視点

「そんな事があったのですか……」

話し終えた教皇様は、疲れのためか再び横になりました。メリアに生命力を奪われたというなら、消耗はかなりのもののはず。今は安静にしておいた方が良いのでしょう。

メリア……。妹が生きていたのは嬉しい。でも、教皇様の話を聞く限り、あの子は既に何人もの命を奪っている。そして今度は大がかりな悪事を計画している可能まであるとすれば……。喜んで良いのか悲しんで良いのか、自分でもよくわかりません。

「フレアよ。メリアを……あの子を救ってやってくれ。メリアは確かに罪を犯したかもしれんが、自分の命がかかっていたとなれば、それは仕方のない事じゃ。あの子を救い、何とか更正させて、神殿で働かせることで罪を償わせよう。あの子がああなってしまったのはワシら教会側の責任じゃ。皆も事情を説明すれば、きっと納得してくれる。だからフレアよ……どうかメリアを……」
「教皇様……。わかりました。あの子が救われるように、私が何とかしてみます。だから今はお休みください」

次第に意識が朦朧としてきた教皇様が伸ばす震える手を、私は両手で包み込み、安心させるように微笑みました。安心したのか再び眠りについた教皇様を神官に任せ、私は戻ってきたばかりの大神殿を後にしたのです。メリアが何を企んでいるのかはわかりませんが、何としても見つけ出して説得しなければ。そうでないと、あの子だけでなく、大勢の人が不幸になってしまう……そんな予感がしたのです。

メリアが私を恨む理由は理解出来ます。仮に逆の立場だったとして、一人だけ助かった妹を恨まずに生きていける自信は……私にはありません。他者を思いやる余裕というのは、自身が満たされてからはじめて生み出されるものだと私は思っています。現に、浮浪児だった私に余裕など無かったのですから。

だから必ずメリアを助けてみせる。私は心に誓いました。

§ § §

教皇様の話を思い出しながら、私は貧民街へと足を向けました。メリアの話では、あの子には志を同じくする仲間が何人かいるはず。数はわかりませんが、世の秩序をひっくり返そう言うのなら、規模が数人とは思えない。かなりの大人数になるはずです。そして、人数が増えれば増えるほど組織としてのまとまりがなくなるのは自明の理。末端の人間なら口が軽い者もいるはずです。

そして潜伏するのにも場所を選ぶはず。普通の住民として街に住んでいたり、神官として大神殿に潜入している者が居るかも知れませんが、現状ではあぶり出す方法もないので後回しです。

その点、治安の悪い貧民街は潜伏するのに打って付けでしょう。顔が隠れるほどローブを深く被り直し、私は慣れ親しんだ路地を歩きます。不衛生で酷い臭いの籠もった路地は至る所で鼠が走り回り、野良犬の死骸をカラスがついばむなんて光景が日常茶飯事です。通りには腹を空かせた浮浪者や、徒党を組んで通行人から金品を巻き上げようとする者や、捨てられた残飯を奪い合う浮浪児も目に付きます。

「変わっていませんね……ここは」

私も昔はああだった。辛い過去を思い出して、知らずにため息が漏れます。

彼等を救うため教会は定期的に炊き出しをしたり、働き口を斡旋したりはしていますが、多くの者は再びこの貧民街へと戻ってきてしまうのです。私やメリアのように魔法の才能があれば別ですが、多くの人々は商家の下働きや日雇いなど厳しい肉体労働ばかりなので、彼等には厳しい労働環境なのです。それでも真面目に働き続ければ評価され、お給金も上げて貰えるのでしょうけど、多くの人は耐えきれずに辞めてしまいます。

満腹とはいかなくても食べることはできる。どうせ真面目に働いても将来など知れている――そんな考えが拭えずに、ここに戻ってきてしまうのです。理想としては一人の浮浪者も出したくはないのですが、現実はとても厳しい。歯がゆいですが、本人がやる気にならない限りどうにもならない。人の生き方まで強制することはできないのです。

「なあ、あんた。金持ちってないか?」

路地を進む私の前に、一人の浮浪者が立ちはだかりました。身に着けている物がまだ綺麗なので、最近流れてきたのかも知れません。返答しようと私が口を開きかけたその時、横からもう一人の人物が現れました。

 「止せ。その方に絡むな」

その人物が短く告げただけで、最初に現れた浮浪者は気圧されたように下がりました。その人物は浮浪者にしては体が大きく、鍛え上げた肉体からは隙が感じられません。そう、まるで過去に戦いを生業としていたように。

「ご無沙汰していますね、カイル」

馴染みのあるその人物が現れたことで、自然と口元がほころぶのを自覚しました。

「お久しぶりですフレア様。今日はどんなご用で?」

ニコリともせずに答えたカイルに、私は苦笑を禁じ得ませんでした。

「力をお借りしたいのです。浮浪者のまとめ役でもあるあなたに、この街での人捜しを」

私の言葉にカイルはピクリと眉を動かしました。

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