日常論

鈴芽

日常論 #2

 「よっこらしょ」
俺が席に着くときはいつも小声でこれを言う。自分でも無意識なのである。
「飛鳥!?なにそのじーさんみたいな声!」
真由香が驚いた声で言ってくる。
「ん?え?俺なんか言った?」
「え?....ううん!何でもない!聞き間違えかも!」
「そか」
短い返事で終わった会話。大した発展や面白味もなくすぐに終わる。



キーンコーンカーンコーン

美術の時間が始まるチャイムがなる。
「はぁ。始まった。」
俺がそういうと賑やかなクラスの中先生が入ってきた。

「はーい!今日は...うるさいちょっと静かに!」
先生が甲高い声で言うと教室は静まり返る。
「今日は前回の続きの絵を描いてください!」
「はーい!!」
クラスの大体の奴が空返事だ。

「おお!倉ちゃんうまい!」
「そんなことないよ~!えへへへ」

「拓はめっちゃ下手やな!」
「うるせぇ!おまえの見せろよ!」

俺的に美術あるあるだがクラスの中は騒がしい雰囲気でいろんなところからいろんな人の声が聞こえる。うるさいくらいにだ。

「へぇ~。こんな感じで描けばいいのか!」
斜め後ろから吉田の声がする。
「...」
返事をしないまま少し間が空く。
「え?無視?酷くない?」
「うるさい虫」
「え?虫?無視だけに?虫が無視されるってか?やかましいわ!」
「やけに長いその乗り突っ込みと声量。なんでそんなテンション高いんだよ。」
「んな高くないわぼけ」
そう言うと吉田は俺の二の腕を叩いてくる。

「吉田さん!?ちゃんとやってください!」
美術の先生が注意すると吉田はすこし萎れた感じで席に戻る。
先生は注意したあと教室の中を見回る感じで歩いていた。そして俺の机の前でピタリと足を止めた。
「如月さんって絵上手ですね!」
「ありがとうございます。」
俺はやる気のない返信をする。もはやこれが特技だ。
「これは何を表しているのですか?」
「人生ですね」
俺がそういうと先生は不思議そうな顔でこちらを見てくる。
「そうですか...」
どこか不安そうな...いや納得のいってないような反応をされた。
そう。俺はだから美術が嫌いなのだ。
絵の良し悪しと共に表現したいこと。価値観。視点。人それぞれだ。しかし、美術の先生は先生である以上価値観の違う人の絵を評価しなければならない。それが気に入らないのだ。

有名な画家a,bがいるとしよう。
その二人がとある素人2人の絵をみてこう評価する。
aさんは片方の絵は気に入ったがもう片方はあまり気に入らなかった。
bさんはaさんが気に入らなかった方の絵を気に入って、もう片方を気に入らなかったと。
そう。これは価値観の違いを表している。
有名人でさえ価値観が違うのだから同じ人の作品の絵を評価してもしょうがないのだ。

「はぁ...」
俺は先生が俺の絵を気に入ってないことを見据えてため息をつく。



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