俺の高校生活がラブコメ的な状況になっている件

ながしょー

第3話 新しい部活「自演乙」

みんなは高校に入学したらまず何がしたいだろうか?
学生の本分である勉強……って言う人はたぶん少ないだろうが、それぞれやりたい事や目標にしている事があると思う。
入学して早々クラス中のみんなはどの部活に入ろうか、友達と勧誘ポスターを見たり、実際に体験入部したりと盛り上がっていた。
でもその時、俺は部活など入る気にはならなかった。
だって、勉強しに来て、毎日それだけで疲れるのにさらに苦労を積んでどうすんだよ。
でも、結局俺はある部活に入部する羽目になった。


クラスマッチが終わり、夏休みまであと1週間となったある日の平日の昼休み。
俺と美月は1つの机に向かい合わせになってそれぞれ用意してきた昼食を食べていた。
それにしても美月って本当に男なのか?
入学してから一緒に昼食を食べて思っていたのだが、毎回低カロリーのヘルシー弁当。
肉がほとんど入っておらず、おかずが野菜しかない。
それでよく午後の授業もつな……。
それに比べ、俺の弁当ときたら……


「翔太の弁当って本当に面白いね!」


美月は俺の弁当を見てニコニコ微笑んでいた。
そんな優しい気遣いいらないよぉ!
俺の弁当の中身は白飯と真ん中にちょこんとある梅干しだった。
どこの時代の弁当なんだろうか。
もしかして何かの拍子で弁当の中身だけタイムスリップして入れ替わった……とか?
まぁ、そんな異次元的な事は現世界で起こりうるわけがない。
……六花しかいないよな……というか、この弁当作ったのアイツだし。


「美月悪いが売店で何か買ってくるわ」


もしゃもしゃ食べている美月にそう伝え、売店がある事務室横まで向かった。


売店の前に辿り着くと、商品が残り僅かになっていた。
レジの方には会計を済ませようと、長蛇の列が出来ている。
今日はやけに多いな……
そんな事を思いながら、残り僅かとなった商品を眺め、手に取っていく最中、列の方で見知った女の子を見つけた。


「アイツ……俺の弁当は散々なものにして自分は買い弁かよ…」


「アイツ」というのはもちろん六花の事である。
六花は何かと俺に手料理を食べさせたがる。
イマドキの女の子はそんなもんなのかなと思い、弁当はいつも六花が作っている。
普段の弁当ならとても美味しくて「また食べたい!」と思うのだが……


「おい、なんで今日は日の丸弁当なんだ?」


六花が会計を済ませたと同時に俺は手に持っていた商品を置き、教室に戻ろうとするところを捕まえた。
六花は少し驚いたような表情をしたが、すぐに俺の質問に答えてくれた。


「だって……」


あれ?なんでそこで溜めるの?
そんなに言い難いことなの?


「だってめんどくさかったんだもん!テヘッ☆」


六花は舌を出し、片目を瞑り、首を傾げ、拳で自分の頭を軽くポン。
そんなぶりっ子みたいなポーズ古くないすか?
ある意味で絶句して固まってしまった俺を真顔で数秒眺めたのち、教室に帰ろうと歩きだした六花。


「ちょ、ちょっと待てぇぇぇえええ!」


それに気づき慌てて叫ぶ俺。


「まだ何かあるの?」


キョトンと首を傾げる六花。


「いやいやいや、ありまくりでしょ?!」


弁当の事とか弁当の事とか弁当の事とかさ!
とにかくあの弁当は今後やめてもらわなければ!


「あのさ、めんどくさい時は弁当作らなくていいよ!」


「なんで?」


「な、なんでって言われてもな……」


なんて答えたらいいのだろう。
不味いから?美味しくないから?食えないから?
結局全て一緒じゃないか!
そんな正直に言って六花は傷付いたりしないだろうか?
あの弁当は要するに俺のために作っているわけだし……どうする俺!?


「…………」


何その目は?!真顔でみつめないで!


「いえ……なんでもないです……」


俺は六花から噴出されている謎の気迫によってそう答えてしまった。
一方で六花は、


「そう?じゃあ、これまで通りね!」


と、先程までの真顔からニコニコとした優しい表情に戻った。
何この人。
二重人格か何かですか?
怖かったんですけど!


よろめきながら教室に戻ると美月はもうすでに昼食を終えていた。


「ど、どうしたの?!」


そのまま先程まで座っていた席に戻るなり、美月は驚いたように声をあげた。


「別に……」


「ちょっとおでこ貸して」


そう言うと、美月は俺の前髪を右手で上げ、顔を近づけてきた。
え……。
どんどん近づいてくる美月の顔。こう見ると本当に女の子みたいだ。髪型もショートボブに近い感じだし……。
……って、何してんの?!
そう気づいた時には遅かった。
俺の額と美月の額が当たり、お互いの吐息がかかる。
どのくらいその状態が続いたか体感時計では分からなかった。


「熱はないみたいだね」


「お、おう……」


よく見ると美月の頬は紅くなっていた。
なんで紅くなってるの?!
相手が女の子だったら良かったんだけどなぁ。


……ヒューヒュー


クラス中のみんなからそんな声が聞こえた。
俺はみんなの視線を見ると、なぜか全員こちらを向いている。
………………。


「ご、誤解だああああああああ!」


俺は本日1番の大声で叫び、美月は耳まで真っ赤にして俯いていた。
お前なんで真っ赤なの?!男だろ?!
そして、どこからかクラス中のみんなではない鋭い視線を感じた。

それから時間は過ぎ、放課後。
なんとかみんなの誤解を解いた俺は、ヘトヘトに疲れていながらも教室で正座させられながら、仁王立ちしている六花の説教に付き合わされていた。


「お、男同士だからって…あ、あんなにベタベタイチャイチャしたらダメでしょ!」


別にベタベタイチャイチャしてたわけでもないのだが、それを指摘するとさらに説教が長くなるため黙っておいた。


「も、もうあんなことしたらダメなんだからね!」


最後のセリフなんかツンデレみたいだったな。


「で、なんで僕までここに残されてるの?」


今まで説教を椅子に座りながら見ていた美月。
確かに最初は美月も一緒に説教するために残したのかと思っていたが、結局理不尽だが、俺だけだった。

「それは新しい部活に参加してもらうためよ!」


六花は美月の方を見て、そう告げた。
新しい部活……何をするのだろうか?
そしてそれに俺も参加しなくちゃいけないのだろうか?


「その部活名は……自演乙!」


六花は凛々しい表情で発表し、それを聞いた俺と美月の頭の上には「?」マークがたくさん浮かんでいた。
六花さんその部活名どこかで聞いた事があるのですが、パクりでしょうか?


コメント

  • 音街 麟

    あれだな。彼女的なのが幼馴染的なのと修羅場的になるやつだな。

    1
  • ペンギン

    たしかに、ありますね〜w

    2
  • ぱんれお

    自演乙は草

    3
コメントを書く

「学園」の人気作品

書籍化作品