マグ拳ファイター!!

西順

186

「これは……時計塔!?」
 脚こそ生えていないものの、その形はオレたちが戦った時計塔そのものだった。
「何でこんなものが地下に埋まってるんだ?」
 皆の視線がオレに集中するが、
「分からん」
 まぁおそらく、天人戦争時代に造られたものだろうけど。
「しかし軽いな」
 とは三郎。軍艦ほどの大きさの代物が、たった数十人の天使によって地上に持ち出された。と聞けばその軽さが分かるだろう。
「ああ、それは時計塔の特徴の一つだ」
「そうなのか?」
「オレたちが戦った時計塔も相当軽かった。でなければ軍艦を街まで移動なんてさせられないだろ?」
「確かにな」
 と三郎以下天使たちも納得してくれた。
「どうする? これ」
「どうするかねえ」
 と掘り出したはいいものの、この場に置いておく訳にもいかない。いつ脱天集会に見付かって、利用されるか分からない。こいつには天使を弱体化させる鐘が付いているのだから。
 などとオレたちが手をこまねいているうちに、タマが鳴きながら船内に入っていってしまった。
「犬なのに自由だな、タマ」
 そんなことを思いながら、オレと三郎もその後に続いて時計塔の船内へと入っていった。

 タマは匂いを嗅ぎながら、真っ直ぐに機関部に向かっていた。
「機関部に何かあるのか?」
「確かデカい石があったはずだ」
「デカい石?」
「オレなんかはなんともなかったけど、ブルースたちは魔力を吸われるって言って避けてたな」
 そう言ってるうちにタマは機関部に到着。オレたちにも、早くこっちへ来いと、言いたげにワンワン吠えている。
「はいはい、分かった分かった」
 オレと三郎が機関部に入ると、やはり巨大な石というよりは岩と表現した方がいい代物が、ドンと鎮座ましましていた。
「やっぱりあったな。どうだ三郎?」
 オレに言われて三郎が岩に触れる、がすぐにその手を離した。
「確かに、何だか魔力が吸われるような感覚を覚えるな」
 と三郎は岩に触れた方の手をブラブラと振って答えた。

 その後、指令室にも行ってみたが、機械類はウンともスンとも言わなかった。
 結局、無用の長物を掘り出しただけだったな、と三郎と二人でもう一度この時計塔を埋めようと話ながら外に出ると、外にいた天使たちがワッと集まってきて一斉に何か話し掛けてくる。
「ち、ちょっと落ち着けよ。何があったんだ?」
 オレが尋ねると、代表して一人が話してくれた。
「船の側面に一瞬だけ翼のタトゥーと同じ紋章が顕れたんだ」
 ? どういうことだ? どうやら外にいた天使たちは、それに驚いたらしい。そう報告されても、当然中からそれは見えなかったし、指令室は動かなかった。他におかしな所というと…………!
「機関部か」
 と三郎が口を開く。
「だろうな。おそらく、この時計塔も、オレたちが戦った時計塔も、人から魔力を吸収して、それで動いているんだ」
 そして翼のタトゥーが時計塔の側面に顕れたんだということは、おそらく……。
「三郎」
「ああ、オレは機関部に行く。リンは指令室に行ってくれ」
 オレたちはそれぞれ機関部、指令室に向かった。

 指令室に着いて10分ほど経っただろうか? 時計塔全体がガタガタと揺れだしたかと思うと、それはすぐに終息した。
 なんだったんだろう? とオレがボーッとしていると、プリンがオレの前の機器にピョンと飛び乗る。すると、時計塔の機械類が音を立てて動き出した。
 そして、プリンが体を薄く伸ばして機器類をどんどん操作していく。モニターが復活し、外の景色を映し出したかと思うと、時計塔に翼が生え、そして時計塔は中空へと浮き上がったのだ。
「スゲエな……」
 船が空を飛ぶだけでもスゴいのに、その船の操縦を、スライムがやっている。意味が分からん。
 その後時計塔は天使たちを回収し、浮遊島レーゲンランドへと飛んでいったのだった。ちなみにレーゲンランドに着く頃には、三郎はバテバテになっていた。

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