マグ拳ファイター!!

西順

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「それで? そっちはどうだったんだ?」
 オレの問いに、二人はげんなりした顔を見せる。
「カルトランドが最近貴族による合議制になっただろ?」
「ああ」
「あれが全く機能していない」
 まあ、そうだろうな。
「一応広く議会まで意見が入ってくるようにはなっているのだが、そこの議会を開いている貴族たちに合議制の自覚がまるでない」
「どういうこと?」
 オレは首を傾げる。
「つまり、議会の決定を個人が勝手にひっくり返すんだよ」
「はあ? そんなの合議制の意味無いじゃん」
 オレの言にブルースと三郎が頷く。
「その通りだ。一応議会があるが、議会で意見が割れれば多数決に従うもののはず。だというのに、議会で少数派になった貴族は、納得がいかない、と我が儘を言って、勝手なことをするんだよ」
 頭が痛くなってきた。
「そんなの、自分の領地を国ってことにして、そこで王様名乗ってればいいじゃん」
 頷くブルースと三郎。
「前回の時計塔の時もそうだったらしい。何せ街一つを壊滅させた古代兵器相手だ、どこの機甲騎士団を向かわせるか、かなり喧々囂々の議論がなされたようだ」
「まあ、どこも自分の騎士団を死地に送り出したくはないよな」
「逆だ」
「逆?」
「カルトランドの貴族的には、そういう死地に赴いて下々の民を助ける、ってのが英雄的行動として褒め称えられるらしくてな、どこの機甲騎士団も我先に行きたがったし、各機甲騎士団を所持する貴族も、自分のところの機甲騎士団に行かせろ、と引き下がらなかったようだ」
 面倒臭い自尊心だな。基本的に見栄っ張りなんだな。
「それで議論がまとまるより早く、第一機甲騎士団が独断専行で時計塔にやって来たようだ」
 あの人たち独断専行だったのか。
「第一機甲騎士団がそうやって独断専行をしたことで、他の機甲騎士団も遅れを取ってはいられない、とあの場にやって来たようだ」
 なるほどねえ。
「騎士団て名前だから、どこかの貴族の麾下なんだろうけど、立場的にはどうなってるだ?」
「完全に貴族の私設軍だな。国軍とは別だ。国軍は動かすのに議会の全会一致が必須らしくてな、自然と私設軍である機甲騎士団が動くことが多くなっているようだ」
 完全に国軍が形骸化してるやないかい。
「で、各騎士団が言ってた、ぐちゃぐちゃの命令系統を使って、私腹を肥やしている奴ってのはいるのか?」
「それはこれからだな」
 これからなのかよ。まあ、それだけ命令系統が乱れてるってことなんだろうけど。
「オレの私見だけど、多分、国外との貿易関係を探ると出てきやすいと思うぞ」
 オレの意見に二人の目が光る。
「それだけ国の中央が機能してないと、末端はやり放題だろうからな。関税関係ガバガバになってるだろう」
「なるほどな。そうなると、アウルムともグラキエースとも連絡取らないといけなくなってくるなあ」
 う~ん、面倒臭そうだが、確かにこの案件、双翼調査団(オレたち)じゃないと大変そうだなあ。
「まあ、そっちは二人に任せる。オレはこのままウーアに向かう」
「ウーア?」
 と事態を静観していた三郎が口を開く。
「何かあるのか?」
「いや、オレたちに伝わる創世神話に、天人戦争と言うものがあるのだが、その舞台がウーアと呼ばれる街なんだ」
 珍しくちょっと興奮しながら話す三郎。
「多分、そのウーアで合ってるよ」
 オレが答えると、にわかにソワソワしだす三郎。
「行きたいなら行っていいぞ」
 とブルースが声を掛ける。
「ほ、本当か?」
 三郎ガッツポーズ。
「いいのか?」
 とオレが心配して尋ねると、
「ああ、こっちは四子に応援を頼むからな」
 まあ、応援を頼むなら大丈夫か。
「じゃ、一緒に行くか三郎」
「おう!」
 こうしてオレは三郎とともに、西のウーアに向かうことになった。

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