マグ拳ファイター!!

西順

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 ダダダダダダダダダダ……!!

 戦闘ヘリがこちらに向かってガトリング砲で掃射してくる。

 ボシューッッ!! ボシューッッ!!

 戦闘機からはミサイルが発射された。
 そこから懸命に逃げた先にいたのは、巨大ロボットである。

 ボオオオオッッ!!

 ロボットの両腕からロケットミサイルが発射された。古典的過ぎないか!? 
「アキラ! マグ拳はいつからSFになったんだ!?」
「オレに聞くなあ!!」
 迫り来る攻撃をオレの重力とアキラの火炎で叩き落とす。
 あの後、一人トラップに捕まったオレが、落とし穴に落ちたと思った先にいたのは、アキラたち無双前線だった。
 しかし無双前線は現代、いや、未来兵器の前にその数を半分に減らしていた。
 さらに追い討ちとばかりにパワードスーツを着込んだ兵隊が、アサルトライフルを撃ちながら吶喊(とっかん)してくる。
「ちっ!」
  思わず舌打ちしながら石壁に隠れ、オレはポーチからダイヤを手に握れるだけ取り出すと、金剛弾を撃ち出す。
「ぐふっ」
 ダイヤに撃たれた兵隊たちは倒れたものの、すぐに立ち上がり、またライフルを撃ち込んでくる。どうやらオレの金剛弾ではパワードスーツ相手には撃ち抜けないらしい。
「だったら!」
 オレのグラディオマギアを取り出し、重力ブレードを撃ち出す。

 ザシュッ!!

 見事に兵隊たちを真っ二つにしたというのに、ジャンヌのようにこの兵隊たちも蠢いている。
「ハァー、こんなのばっかり相手にしないといけないのか」
 オレと星剣☆燎さんは頷き合い、ピックポケットを取り出し、兵隊たちにトドメを刺していく。

「で、何がどうなってるんだ?」
 いきなり戦場に突き落とされて、オレは困惑している。ちなみにいまだ戦闘ヘリやロボットとは交戦中である。
「オレも良く分からんが、サンタが現れたんだ」
「頭大丈夫か?」
 オレに詰め寄られたアキラが、オロオロしながら素っ頓狂なことを言い出す。
「ホントなんだよ! 自分でも何を言っているのか分からなくなりそうだけど、ファルシフィックと交戦状態になろうかってときに、サンタが通路の奥から現れたんだ。あの赤白の格好して。そしてサンタの持ってる大きな袋から次々と兵器や武器が出てきて……」
「今みたいなことになった、と?」
 こくりと頷くアキラ。なるほど、嘘みたいな話だが、事情は分かった。
「おそらく、アキラたちが交戦しているのは、ニコラスの一団だな」
「ニコラス?」
「ああ、聖ニコラスはサンタクロースの語源と言われているんだ。それになぞらえた戦闘スタイルなんだろう」
「つまり、サンタを殺せってことか?」
 「いや、サンタは敵のチート能力だろう。あの兵隊たちの中にニコラスがいると考えた方が妥当だ」
「結局殲滅戦かよ」
 と愚痴るアキラ。
「この戦いが始まる前から分かってたことだろ。チート使いは全員殺処分だ」
 オレも疲れて嘆息するが、そこに、

 ドーンッ!!

 いきなり砲弾が撃ち込まれる。壊れた石壁越しに見てみれば、あいつら戦車まで用立ててきやがった。もう何でもありだな。
 と思っていると、世界がブレる。世界振動だ。そしてガラガラと崩れていく遺跡。
「演出にしても酷いんじゃないか?」
 とアキラ。
「演出じゃねえよ。ホントに世界が崩壊しようとしてるんだ」
 オレの言葉に青ざめる無双前線の面々。オレたちから、チートで引き起こされる可能性、このマグ拳の世界に取り残される、またはプレイヤーの精神崩壊が頭を過ったのだろう。
「みんな!」
 クランリーダーである星剣☆燎さんの呼び掛けに、真剣な目をしたクランの面々が頷きを返す。
 そしてファンタジー対SFの戦いが始まった。

 アサルトライフルにパワードスーツで武装する兵隊たちに、炎が、大水が、大風が、大岩が襲い掛かる。
 戦車を、戦闘ヘリを、戦闘機を、アキラのエネルギー波が撃ち落としていく。
「うおおおッッ!!」
 星剣☆燎さんの剣が巨大化し、巨大ロボットを縦一文字に斬り裂く。
 しかしまるでそれを意に介さないかのように、相手は物量で勝負してくる。おそらくあちらはチートでいくらでも出せるのだろう。しかしそれを乗りこなせる人材は有限だ。
 オレが一人一人確実に溶かしていくと、現代未来兵器もただの鉄屑に変わる
 こちらも、アキラと星剣☆燎さん以外を失ったが、相手はサンタの横にいるまだ幼い少年だけになった。こいつがニコラスだろう。
「た、助けて……!」
 サラサラ髪の美少年は、目を潤ませながらサンタとともに懇願する。アキラと星剣☆燎さんは顔を見合わせるが、その瞬間だった。ニコラスがなにやらスイッチを押したのは。

 ドーンッ!! ドーンッ!! ドーンッ!!

 鉄屑となった兵器たちが自爆していく。オレは重力バリアを展開することでこれを防いだ。星剣☆燎さんは一瞬の判断でピックポケットをこちらへ投げ渡したが、自身とアキラは爆発に巻き込まれてこの戦いから脱落していった。
「ちっ!」
 舌打ちするニコラスに、オレは沸騰する怒りを嘆息で吐き出し、静かに近付いていく。
「まあ待てよ。オレの有用性は、さっきの戦闘で証明されただろ? どうだ? あんた、ぼくと組まないか?」
 それに対してオレがにこりと微笑むと、ニコラスもにこりと微笑み返す。
「また今度な」
 オレはピックポケットでニコラスの首を掻き斬った。
「くそ! ゲームオーバーか」
 そうしてニコラスは溶けて消えていった。
「ハァー、やっと二人か」
 こんなのが残り四人もいると思うと、げんなりするな。

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