マグ拳ファイター!!
63
「最近どうなんだ?」
 11月の頭、父にそう聞かれた。それは何? 月頭に息子とコミュニケーションを取るために、何か話し掛けよう的なものが流行ってるの?
「順調順調、超順調だよ」
 適当に相づちを打つオレに父は、
「…………そうか」
 何か含みがある返事だ。
「どうかしたの?」
「いや、この間と反応が違うからな」
 この間って、1ヶ月も前のことじゃないか。大人との体感時間の違いを感じる。確かそのときはトレシーに入ったばかりで、どこにも居場所がなかったときだな。確かに、あの時とじゃ返事の仕方が変わるよな。
「まぁ、楽しくやってるよ」
「そうか。…………じゃあ行ってくる」
「え? あ、うん。行ってらっしゃい」
 親子関係も言葉を交わせば多少は改善されるもんだな。
「ちょっとオレらに頼り過ぎじゃないですかね?」
 オレたちは今、フィーアポルトに向かうため、アインスタッドに立ち寄っている。フィーアポルトはトレシーの北東でアインスタッドの東だ。北東に向かって道なき道を進むより、街道を進んだ方が馬車に負担が少ないという判断だ。
 折角アインスタッドに来たのだから、と冒険者ギルドに顔を出したら、また四方のダンジョンから魔物が溢れてきそうだから、ダンジョンコアの回収を頼むと依頼された。
 相変わらず新人の育成には苦労しているようだが、いつまでもオレたちを頼られても困る。まあ今回は、新武具であるオレの小鬼の小手と、マヤの鬼面の大盾の慣らしを兼ねて引き受けたが。
 マヤの鬼面の大盾は、普段は鏡面となっている大盾の表面が、魔力を通すと鬼面に替わるという「何それ?」な盾だ。もちろん鬼面になった方が防御力は増すそうだが、何ともファンタジーな盾である。マヤ自身はとても気に入ってるみたいだから別に構わないが、初めて見たときはビクッとさせられた。
 さて、さっさと四方のダンジョンを攻略して冒険者ギルドに帰ってきてみれば、ギルドマスターであるハッサンさんは宝石の鑑定をしていた。
「どうかしたんすか?」
「うん? う〜む」
 オレが尋ねると、何とも渋い顔を返された。
「これが何か分かるかい?」
「ルビーですよね?」
 ハッサンさんの前にあるのは赤い宝石だ。赤い宝石と言うとルビーかガーネットだが、ガーネットはもう少しで色が暗かったと思う。
「確かにルビーなんだが、どうも偽物だという話なんだ」
「偽物?」
 オレたちはソファーに座り、ユキさんが出してくれたお茶をすする。
「何でも海の向こうの隣国「ルベウス」で造られた、人工ルビーなんだそうだ」
 隣国はルベウスというのか知らなんだ。っていかこの国ってなんて名前だっけ?
(この国ってなんて名前?)
 オレがマヤ、マーチ、ブルースの三人にそれとなく尋ねると、物凄い驚いた顔をされた。分かってる。常識知らずだって自分でも分かってるよ。
(アウルム王国よ!)
 マヤ、分かったからそんな残念なモノを見る目で見ないでくれ。後の二人も。
「……で困ってるんだ」
「え? 何がですか?」
 やべ、聞いてなかった。
「だから人工のルビーやらサファイアやらが出回って困ってるだ」
 なるほど。ん?
「ルビーとサファイアなんですか? 出回ってるのは?」
「ああ、そうだが?」
 ハッサンさんが頷きで返してくれた。
「もしかしてそのルベウスとかいう国、最近鉄器が強化されてませんか?」
「ああ、そうだ。最近は錆びないとか頑丈だとかで、ルベウス産の鉄武器が出回るようになってきたな」
 やっぱりか。
「何か分かったの?」
 知りたそうにしている周りの雰囲気を読んで尋ねてくるマヤに頷きで返す。
「多分、クロムです」
「クロム?」
「希少な金属です。それが混ざると鉄は錆びず頑丈になり、鋼玉に混ざればルビーやサファイアになります」
「クロム……」
「多分クロムのデカい鉱脈がその国で見つかったんじゃないかな。それでこの国まで人工宝石なんてモノが出回ってきたんだと思う」
 う〜ん、みんな難しい顔をしてしまったな。
「それでどうやって見分けるんだ?」
 確か暗い中でブラックライトに当てると、人工ルビーは光るってモノの本に書いてあったけど、この世界にそもそもブラックライトなんて無いしな。
「やっぱり、内包物じゃないですかね。人工のモノは内包物がなくて綺麗過ぎるはずです」
「まあ、そうなるか」
 分かってたんじゃん!
「でもやっぱり元を断たないと、いたちごっこですよねぇ」
 ハッサンさんにユキさん、何ですかその期待に満ちた目は?
「そうか、やってくれるか」
「何も言ってないですよねオレら?」
 思わず立ち上がって抗議してしまった。
「まあ、そう言うな。今数多く人工宝石が出回っているのは、君らがこれから行くフィーアポルトだ。行くついでに、チャチャッと解決してきてくれ」
 なんじゃそりゃ〜!?
「分かりました」
 いや、マヤも即答すんなよ! 後の二人もなんか義心に燃えてるし!
 マジかー、これやるパターンのやつやー。ああ、またしんどいのきたなぁ。
 11月の頭、父にそう聞かれた。それは何? 月頭に息子とコミュニケーションを取るために、何か話し掛けよう的なものが流行ってるの?
「順調順調、超順調だよ」
 適当に相づちを打つオレに父は、
「…………そうか」
 何か含みがある返事だ。
「どうかしたの?」
「いや、この間と反応が違うからな」
 この間って、1ヶ月も前のことじゃないか。大人との体感時間の違いを感じる。確かそのときはトレシーに入ったばかりで、どこにも居場所がなかったときだな。確かに、あの時とじゃ返事の仕方が変わるよな。
「まぁ、楽しくやってるよ」
「そうか。…………じゃあ行ってくる」
「え? あ、うん。行ってらっしゃい」
 親子関係も言葉を交わせば多少は改善されるもんだな。
「ちょっとオレらに頼り過ぎじゃないですかね?」
 オレたちは今、フィーアポルトに向かうため、アインスタッドに立ち寄っている。フィーアポルトはトレシーの北東でアインスタッドの東だ。北東に向かって道なき道を進むより、街道を進んだ方が馬車に負担が少ないという判断だ。
 折角アインスタッドに来たのだから、と冒険者ギルドに顔を出したら、また四方のダンジョンから魔物が溢れてきそうだから、ダンジョンコアの回収を頼むと依頼された。
 相変わらず新人の育成には苦労しているようだが、いつまでもオレたちを頼られても困る。まあ今回は、新武具であるオレの小鬼の小手と、マヤの鬼面の大盾の慣らしを兼ねて引き受けたが。
 マヤの鬼面の大盾は、普段は鏡面となっている大盾の表面が、魔力を通すと鬼面に替わるという「何それ?」な盾だ。もちろん鬼面になった方が防御力は増すそうだが、何ともファンタジーな盾である。マヤ自身はとても気に入ってるみたいだから別に構わないが、初めて見たときはビクッとさせられた。
 さて、さっさと四方のダンジョンを攻略して冒険者ギルドに帰ってきてみれば、ギルドマスターであるハッサンさんは宝石の鑑定をしていた。
「どうかしたんすか?」
「うん? う〜む」
 オレが尋ねると、何とも渋い顔を返された。
「これが何か分かるかい?」
「ルビーですよね?」
 ハッサンさんの前にあるのは赤い宝石だ。赤い宝石と言うとルビーかガーネットだが、ガーネットはもう少しで色が暗かったと思う。
「確かにルビーなんだが、どうも偽物だという話なんだ」
「偽物?」
 オレたちはソファーに座り、ユキさんが出してくれたお茶をすする。
「何でも海の向こうの隣国「ルベウス」で造られた、人工ルビーなんだそうだ」
 隣国はルベウスというのか知らなんだ。っていかこの国ってなんて名前だっけ?
(この国ってなんて名前?)
 オレがマヤ、マーチ、ブルースの三人にそれとなく尋ねると、物凄い驚いた顔をされた。分かってる。常識知らずだって自分でも分かってるよ。
(アウルム王国よ!)
 マヤ、分かったからそんな残念なモノを見る目で見ないでくれ。後の二人も。
「……で困ってるんだ」
「え? 何がですか?」
 やべ、聞いてなかった。
「だから人工のルビーやらサファイアやらが出回って困ってるだ」
 なるほど。ん?
「ルビーとサファイアなんですか? 出回ってるのは?」
「ああ、そうだが?」
 ハッサンさんが頷きで返してくれた。
「もしかしてそのルベウスとかいう国、最近鉄器が強化されてませんか?」
「ああ、そうだ。最近は錆びないとか頑丈だとかで、ルベウス産の鉄武器が出回るようになってきたな」
 やっぱりか。
「何か分かったの?」
 知りたそうにしている周りの雰囲気を読んで尋ねてくるマヤに頷きで返す。
「多分、クロムです」
「クロム?」
「希少な金属です。それが混ざると鉄は錆びず頑丈になり、鋼玉に混ざればルビーやサファイアになります」
「クロム……」
「多分クロムのデカい鉱脈がその国で見つかったんじゃないかな。それでこの国まで人工宝石なんてモノが出回ってきたんだと思う」
 う〜ん、みんな難しい顔をしてしまったな。
「それでどうやって見分けるんだ?」
 確か暗い中でブラックライトに当てると、人工ルビーは光るってモノの本に書いてあったけど、この世界にそもそもブラックライトなんて無いしな。
「やっぱり、内包物じゃないですかね。人工のモノは内包物がなくて綺麗過ぎるはずです」
「まあ、そうなるか」
 分かってたんじゃん!
「でもやっぱり元を断たないと、いたちごっこですよねぇ」
 ハッサンさんにユキさん、何ですかその期待に満ちた目は?
「そうか、やってくれるか」
「何も言ってないですよねオレら?」
 思わず立ち上がって抗議してしまった。
「まあ、そう言うな。今数多く人工宝石が出回っているのは、君らがこれから行くフィーアポルトだ。行くついでに、チャチャッと解決してきてくれ」
 なんじゃそりゃ〜!?
「分かりました」
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