炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~
17節 改装工事
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『……ワカナ、何やってんのよ』
「ちょっと改装工事を、と思いまして」
隣の部屋とこの部屋を遮る壁の前に立って軽く叩いてみたり耳を近づけて向こう側の様子を伺っている若菜にシアラが尋ねた。壁から離れてワカナは部屋のなかを探りながら答える。
『何でまた……』
「この先に人がいます。私、気になります。ドアから入るのは失礼なので改装中に間違えてしまったということにします」
『あのさぁ、説明するなら俺がわかるようにしてくれない? 』
シアラの問にワカナが探るのをやめて壁の向こうを指差し、壁を壊すジェスチャーを混ぜながら説明した。それを第三者視点から見ることが出来ればまだ何が違うのであろうが、ワカナの見ているものしか見ることのできないシアラにはワカナが何をするつもりなのかいまいちわからない。
いや、わかってはいるのだ。しかし、どうしてその思考に行き着いたのか想像がつかないだけだ。
「まあ、見ててくださいよ」
ワカナは言う。ちょうど良さそうなハンマーを見つけて少し嬉しそうに笑っている。
そして、そのハンマーを大きく振りかぶり、壁に叩きつけた。
本来ならば素手でも簡単に粉々に出来るが、何か道具を使っている方が改装しているように見えると思って叩いたは良いが、よく考えれば誰がいるかなどまったく考えていなかった。
『普通はこんな綺麗に壁は抜けないわよ。欠陥住宅ってやつね』
「私もそう思います。結構音は抑えましたし、下には気付かれませんよね。ところで……寝てますね」
初めの一発でかなり手加減したからかボロッとしか崩れなかった。そして、中にいる人がワカナに気がついていないことにワカナが気付くと、その穴を広げて中に入った。
『壁の破片を落とす前に拾う……。ワカナって馬鹿よね、本当』
「馬鹿ですよ、どうせ」
間取りは変わらない。家具も同じもので違うのは一ヶ所だけ、扉の色だけが違う。そして、ベッドに膨らみがあり、布団が若干だが上下している。それを見てワカナは空返事をした。
『ロロ役ね。顔は見ない方がいいって俺の勘が言ってるわ。やめといて戻りましょ』
「もったいないような気もしますけど、私の勘も同じことを言ってます。そうしましょう」
この部屋に入った時、足を捕まれた様な悪寒が背筋を走った。この場にはいないシアラでさえそれを強く感じた。この中にこれ以上いれば、この部屋の主を見てしまえば、取り返しのつかないことになる。そんなことを二人して感じ取ったのだ。
『きっとわかる時が来るわ。その時を待つことね』
「シアラに仕切られると腹が立ちますね。ふぁぁあ、眠い」
自分に与えられた部屋にワカナが戻ると、気が抜けたのか欠伸が出てきて瞼が重力に逆らえなくなった。そのままベッドに倒れ込み、ワカナは布団をかけた。
『寝ると決めたら早いわね。おやすみなさい、ワカナ』
「おやすみなさい……シ、アラぁ」
言葉にならない挨拶をすると、ワカナはそのまま眠りに入った。そこまで遅い時間でもなければ疲れていたわけでもないが、何となく眠くなったのだ。
真っ暗になった視界にシアラは小さく溜め息をついた。何かを言っていたが、それはワカナを含めて誰の耳にも届いていない。誰もその呟きを聞いてなどいない。
眠くはない、寝過ごすわけにもいかない。シアラは自分の作ったイロクの人形を見つめた。イロク役とも本物とも違う自信なさげな顔。これにシアラは布を掛けて自分からも見えないようにと隠した。
『……ワカナ、何やってんのよ』
「ちょっと改装工事を、と思いまして」
隣の部屋とこの部屋を遮る壁の前に立って軽く叩いてみたり耳を近づけて向こう側の様子を伺っている若菜にシアラが尋ねた。壁から離れてワカナは部屋のなかを探りながら答える。
『何でまた……』
「この先に人がいます。私、気になります。ドアから入るのは失礼なので改装中に間違えてしまったということにします」
『あのさぁ、説明するなら俺がわかるようにしてくれない? 』
シアラの問にワカナが探るのをやめて壁の向こうを指差し、壁を壊すジェスチャーを混ぜながら説明した。それを第三者視点から見ることが出来ればまだ何が違うのであろうが、ワカナの見ているものしか見ることのできないシアラにはワカナが何をするつもりなのかいまいちわからない。
いや、わかってはいるのだ。しかし、どうしてその思考に行き着いたのか想像がつかないだけだ。
「まあ、見ててくださいよ」
ワカナは言う。ちょうど良さそうなハンマーを見つけて少し嬉しそうに笑っている。
そして、そのハンマーを大きく振りかぶり、壁に叩きつけた。
本来ならば素手でも簡単に粉々に出来るが、何か道具を使っている方が改装しているように見えると思って叩いたは良いが、よく考えれば誰がいるかなどまったく考えていなかった。
『普通はこんな綺麗に壁は抜けないわよ。欠陥住宅ってやつね』
「私もそう思います。結構音は抑えましたし、下には気付かれませんよね。ところで……寝てますね」
初めの一発でかなり手加減したからかボロッとしか崩れなかった。そして、中にいる人がワカナに気がついていないことにワカナが気付くと、その穴を広げて中に入った。
『壁の破片を落とす前に拾う……。ワカナって馬鹿よね、本当』
「馬鹿ですよ、どうせ」
間取りは変わらない。家具も同じもので違うのは一ヶ所だけ、扉の色だけが違う。そして、ベッドに膨らみがあり、布団が若干だが上下している。それを見てワカナは空返事をした。
『ロロ役ね。顔は見ない方がいいって俺の勘が言ってるわ。やめといて戻りましょ』
「もったいないような気もしますけど、私の勘も同じことを言ってます。そうしましょう」
この部屋に入った時、足を捕まれた様な悪寒が背筋を走った。この場にはいないシアラでさえそれを強く感じた。この中にこれ以上いれば、この部屋の主を見てしまえば、取り返しのつかないことになる。そんなことを二人して感じ取ったのだ。
『きっとわかる時が来るわ。その時を待つことね』
「シアラに仕切られると腹が立ちますね。ふぁぁあ、眠い」
自分に与えられた部屋にワカナが戻ると、気が抜けたのか欠伸が出てきて瞼が重力に逆らえなくなった。そのままベッドに倒れ込み、ワカナは布団をかけた。
『寝ると決めたら早いわね。おやすみなさい、ワカナ』
「おやすみなさい……シ、アラぁ」
言葉にならない挨拶をすると、ワカナはそのまま眠りに入った。そこまで遅い時間でもなければ疲れていたわけでもないが、何となく眠くなったのだ。
真っ暗になった視界にシアラは小さく溜め息をついた。何かを言っていたが、それはワカナを含めて誰の耳にも届いていない。誰もその呟きを聞いてなどいない。
眠くはない、寝過ごすわけにもいかない。シアラは自分の作ったイロクの人形を見つめた。イロク役とも本物とも違う自信なさげな顔。これにシアラは布を掛けて自分からも見えないようにと隠した。
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