炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~
5節 天使様は性格が悪い
▼▼
「あ、アノニム。おかえりなのだ」
「……ミコトか。そこにいたんだな」
追い出されるようにシアラの部屋から出てきた顔色が悪いアノニムを見上げるように地面に座り込んでいるミコトが言った。てっきり何処かに行っていたと思っていたアノニムは相手にするのもめんどくさそうな目で温度の無さそうな声で答えた。
「我はワカナを無事にヤツのところに送らなければならないのだ。目を離せばすぐズィミアとかヒトミとかシアラに連れていかれそうだからここに残ってたのだ」
アノニムが出てきた扉をじっと見て時々手を伸ばしたそうにしながらミコトは言った。
「そのワカナは今あの天使と二人で話してるけどな」
「……シアラが相手なら何かあったら逃げてくるだろ」
目をゆっくりとそらしながら言い訳するようにミコトが言うと、アノニムは数歩遠ざかって言った。
「うっわ責任感の欠片もねぇな」
わざとらしくミコトを見下して無表情に嘲るような声で言った。そう言われたのに何故か瞳は笑顔になっていた。
「嫌なことは忘れたのだ? 」
「……ああ。ミコトには関係ないことだけどな」
「わかっているのだ。ほら、そろそろワカナが帰ってくるのだ」
細い指で扉を指差してにっこり笑ってミコトは言った。しばらくするとその扉がバンッと勢いよく壊れるように開き、ワカナが弾かれるように出てきた。背中を打ち付け、起き上がったワカナが背中を痛そうに擦りながら涙を流していた。
「何があったのだ? 」 
「……彼女を怒らせてしまったようですね。投げ捨てられました」
ミコトの問いにワカナはまた勢いよく歪むほどの力で閉まった扉の先を見つめるように睨んだまま答えた。
「気付いてなかったのか? あそこから出てきたとき既に泣いてたぞ」
「……」
アノニムの言葉にワカナは無言で目を押さえて涙を拭いた。強く下唇を噛み、それ以上涙が出るのをおさえ、泣き声が漏れるのも防いだ。
「み、見間違いじゃないんですか。背中が痛くて少し涙が出ただけですよ」
微かに震えた声で、それでも隠そうと小さく抑えた声で言った。
「あの天使様は性格がかなり悪いのだ。ここに来てから悪化しているし、気にしない方が良いのだ」
「そういうことだ。ほら、用も済んだし早く戻るぞ」
「……」
何かしら言われたか見せられたんだろうと勝手に理解して納得したミコトが気を遣うように言うと、それを鼻で笑い捨ててワカナに手を伸ばした。差し出された手を見上げ、左手でその手を取ると、ワカナは無言で立ち上がって何故か右目をかなり気にしながらミコトが歩く後を追った。
「どうした。ぶつけたか? 」
「いえ、何でもないです」
目に触れ続けるワカナをアノニムが気にして声をかけるが、ワカナは手を離して何もないと答えた。
「ん? 色も変じゃないし、ゴミが入るわけもないし、平気なのだ」
「……ならいいが」
歩きながら振り向いたミコトがじっとワカナの目を見たが、いつも通りの少し濃い赤色の目で両目とも同じ色だった。白目も異状なく、特に問題ないと判断したミコトの顔を少し疑い深くアノニムが睨んだ。すると、ワカナが見てない隙にウィンクを返された。殴り伏せたくなる思いを心の底にどうにか封じ込めてアノニムは笑顔を返した。
「あ、アノニム。おかえりなのだ」
「……ミコトか。そこにいたんだな」
追い出されるようにシアラの部屋から出てきた顔色が悪いアノニムを見上げるように地面に座り込んでいるミコトが言った。てっきり何処かに行っていたと思っていたアノニムは相手にするのもめんどくさそうな目で温度の無さそうな声で答えた。
「我はワカナを無事にヤツのところに送らなければならないのだ。目を離せばすぐズィミアとかヒトミとかシアラに連れていかれそうだからここに残ってたのだ」
アノニムが出てきた扉をじっと見て時々手を伸ばしたそうにしながらミコトは言った。
「そのワカナは今あの天使と二人で話してるけどな」
「……シアラが相手なら何かあったら逃げてくるだろ」
目をゆっくりとそらしながら言い訳するようにミコトが言うと、アノニムは数歩遠ざかって言った。
「うっわ責任感の欠片もねぇな」
わざとらしくミコトを見下して無表情に嘲るような声で言った。そう言われたのに何故か瞳は笑顔になっていた。
「嫌なことは忘れたのだ? 」
「……ああ。ミコトには関係ないことだけどな」
「わかっているのだ。ほら、そろそろワカナが帰ってくるのだ」
細い指で扉を指差してにっこり笑ってミコトは言った。しばらくするとその扉がバンッと勢いよく壊れるように開き、ワカナが弾かれるように出てきた。背中を打ち付け、起き上がったワカナが背中を痛そうに擦りながら涙を流していた。
「何があったのだ? 」 
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ミコトの問いにワカナはまた勢いよく歪むほどの力で閉まった扉の先を見つめるように睨んだまま答えた。
「気付いてなかったのか? あそこから出てきたとき既に泣いてたぞ」
「……」
アノニムの言葉にワカナは無言で目を押さえて涙を拭いた。強く下唇を噛み、それ以上涙が出るのをおさえ、泣き声が漏れるのも防いだ。
「み、見間違いじゃないんですか。背中が痛くて少し涙が出ただけですよ」
微かに震えた声で、それでも隠そうと小さく抑えた声で言った。
「あの天使様は性格がかなり悪いのだ。ここに来てから悪化しているし、気にしない方が良いのだ」
「そういうことだ。ほら、用も済んだし早く戻るぞ」
「……」
何かしら言われたか見せられたんだろうと勝手に理解して納得したミコトが気を遣うように言うと、それを鼻で笑い捨ててワカナに手を伸ばした。差し出された手を見上げ、左手でその手を取ると、ワカナは無言で立ち上がって何故か右目をかなり気にしながらミコトが歩く後を追った。
「どうした。ぶつけたか? 」
「いえ、何でもないです」
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