炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~
55節 天使が呼ぶ神の名
地面に足を降ろし、シアラはイロクを探した。突然のことに驚き、飛べることも忘れて地面に叩きつけられたイロクを探した。殺しても死なないイロクを探した。
「あ……いた」
少し走った先にある木の茂みに引っ掛かるようにしてぶら下がっていた。傷もないのに気を失っているイロクがまるで首を吊ったような姿でいるのをシアラは見つけた。
自然と口角が上がった。引っ掛かっている服を木から外し、地面に付けないようにしていつもの小屋に運んだ。まだいくつもの死体が腐り転がっているいつもの倉庫のような小屋に運んだ。
シアラは口角を上げたままイロクを見つめ、椅子に座らせた。逃げられないように腕を足を首を椅子から離れられないように拘束し、椅子を地面に融かして付けた。
「もうすぐ目が覚める。これなら逃げないし、待ってないとねー♪ 」
シアラは上機嫌にイロクの目の前に座り、手を頬に当てて言った。いつも通り未来を見ながら話すことをうっとりと考えながら閉じているイロクの目を見ていた。
▼▼
「……ぅ……ぁあ? ゴホッ……ゴホゴホッ」
乾いた咳を繰り返しながらイロクが目を覚ました。そして、頭すら動かせない違和感に青い目を見開いた。
「時間通り。目が覚めたのね、お人形」
「は? ……記憶が曖昧だ。シアラ、私に何をした」
眉を寄せて青い顔をさせながらシアラを睨み尋ねるイロクのことを、シアラは微かに頬を赤く染めてずっとニコニコと微笑んで返した。
「記憶が曖昧なのはあの高さから落ちたショックで一時的なもの。俺はぁ、お人形が勝手に動いて逃げないようにそこに固定しただけよぉ」
「なぁ……さっきから私のことを人形って呼んでないか? 」
「そうよ。貴方は俺のお人形。まだ時間はあるわ。たぁくさんお話ししてあげるわ」
シアラは話した。
初めて会ったときからイロクを操っていたこと。神に対しての恨み。イロクに思っていること。崩れる直前、宮殿で怒っていた理由。
「俺は未来が見える。どんな未来でも見えた。そんな俺が他人を自由に動かすなんて簡単でしょ? だからイロクを俺のお人形にした。俺に恋するように。俺のためだけに動くようにね」
「え? 神は俺を利用するだけ利用してとっとと殺すつもりだったんだよ? 逆手にとる方法なんて無数にある。例えバレていても抗いたくなるでしょ? 俺はその心に正直に生きて恨んでただけ」
イロクに一切の発言を許さず、シアラは自分の好きなように語り続けた。そして、イロクのことを見て口角をさらに上げた。
「貴方のことはもちろん大好きよ。でもね、俺が好きなのは先にも後にもお人形でいてくれるイロクだけ。いうこと聞いてくれないイロクなんて殺してたかもしれないわ。よかったね、生きてて」
「だって、貴方が俺が見たことのない行動をするんだもの。怒りたくもなるわ。でもね、冷静になって思ったの。貴方は人形じゃなくて悪魔だものね。だから殺したかったんだけど、貴方って殺しても死なないのよねぇ。だぁかぁらぁ、改心してお人形に戻ってほしいの」
人形だとか何だとか。イロクの想像を遥かい上回るほどシアラの言っていることはイロクを驚かせた。半分以上シアラの言いたいことが理解できなかった。
それでも構わないと言うような顔をしたシアラがイロクに近づいた。
「まあ、無理なんだけどね」
何をしてほしい。何であってほしい。そんな願望を並べていたとしてもシアラはわかっている。このすぐあと、何があるのか。今さら知らないと偽る誤魔化しなんて意味がない。
この直後、この世界が終わることをシアラは一人でわかっていた。
カオルとナノカは、この短い数時間で楽しめただろうか。もう未来も過去も見る気がない。意味がない。そんなことするならば、その時間にやりたいことがある。
「ねぇイロク。こっち見て」
イロクの右頬に左手を当ててシアラは呼び掛けた。そして、目が合ったイロクの右の赤い目に長く延びた爪を入れた。
「お人形じゃないんだから、返してね」
交換した自分の目を返してほしかった。そうすればイロクはもうシアラにとってどうでもよくなる。耳障りだから叫ばれないように声が出ないようにしている。泣いているが関係ない。眼球さえ奪ってしまえばこんな人形どうでも良い。
「ありがとうね。もう貴方は俺のお人形じゃなくて良いよ」
取り出した眼球を左手で優しく握り、シアラは小屋から出ていった。自分の目は痛いから取り出さない。
シアラはそのまま宮殿があった場所に向かった。
「どういうことだ」
そこには既に神がいた。またシアラには見えていないことだった。
「わかってたことを知られてるってわかってるくせに、そんな言い方するんですね。俺は邪魔なものを排除して欲しかったものを手にしただけで何もしてませんけど? 」
もう敬意の欠片もない。黒い翼を羽ばたかせてシアラと神は見つめ合った。何をいっても返される言葉がわかっていて何も言えない神とそれをわかっていてにこりと笑うシアラ。性格が悪い。
「ま、まぁいい。破壊することには代わりがない。私がここから消えれば同時に消滅する。言っても意味がないがな」
「神……コト様。二度と俺のような能力を与えないことをおすすめしますよ。こんな風に面倒になるわ」
静に粒子になるように消えていく神にシアラがアドバイスをした。もう消える。悲しくもないが、念のためだ。神は返事をしなかった。
シアラは最後に神の名前を呼んだ。誰も知らないはずの名前を呼んだ。コト。それが神の名前だと直感したから呼んだ。全く反応をしなかったが。
「あ……いた」
少し走った先にある木の茂みに引っ掛かるようにしてぶら下がっていた。傷もないのに気を失っているイロクがまるで首を吊ったような姿でいるのをシアラは見つけた。
自然と口角が上がった。引っ掛かっている服を木から外し、地面に付けないようにしていつもの小屋に運んだ。まだいくつもの死体が腐り転がっているいつもの倉庫のような小屋に運んだ。
シアラは口角を上げたままイロクを見つめ、椅子に座らせた。逃げられないように腕を足を首を椅子から離れられないように拘束し、椅子を地面に融かして付けた。
「もうすぐ目が覚める。これなら逃げないし、待ってないとねー♪ 」
シアラは上機嫌にイロクの目の前に座り、手を頬に当てて言った。いつも通り未来を見ながら話すことをうっとりと考えながら閉じているイロクの目を見ていた。
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「……ぅ……ぁあ? ゴホッ……ゴホゴホッ」
乾いた咳を繰り返しながらイロクが目を覚ました。そして、頭すら動かせない違和感に青い目を見開いた。
「時間通り。目が覚めたのね、お人形」
「は? ……記憶が曖昧だ。シアラ、私に何をした」
眉を寄せて青い顔をさせながらシアラを睨み尋ねるイロクのことを、シアラは微かに頬を赤く染めてずっとニコニコと微笑んで返した。
「記憶が曖昧なのはあの高さから落ちたショックで一時的なもの。俺はぁ、お人形が勝手に動いて逃げないようにそこに固定しただけよぉ」
「なぁ……さっきから私のことを人形って呼んでないか? 」
「そうよ。貴方は俺のお人形。まだ時間はあるわ。たぁくさんお話ししてあげるわ」
シアラは話した。
初めて会ったときからイロクを操っていたこと。神に対しての恨み。イロクに思っていること。崩れる直前、宮殿で怒っていた理由。
「俺は未来が見える。どんな未来でも見えた。そんな俺が他人を自由に動かすなんて簡単でしょ? だからイロクを俺のお人形にした。俺に恋するように。俺のためだけに動くようにね」
「え? 神は俺を利用するだけ利用してとっとと殺すつもりだったんだよ? 逆手にとる方法なんて無数にある。例えバレていても抗いたくなるでしょ? 俺はその心に正直に生きて恨んでただけ」
イロクに一切の発言を許さず、シアラは自分の好きなように語り続けた。そして、イロクのことを見て口角をさらに上げた。
「貴方のことはもちろん大好きよ。でもね、俺が好きなのは先にも後にもお人形でいてくれるイロクだけ。いうこと聞いてくれないイロクなんて殺してたかもしれないわ。よかったね、生きてて」
「だって、貴方が俺が見たことのない行動をするんだもの。怒りたくもなるわ。でもね、冷静になって思ったの。貴方は人形じゃなくて悪魔だものね。だから殺したかったんだけど、貴方って殺しても死なないのよねぇ。だぁかぁらぁ、改心してお人形に戻ってほしいの」
人形だとか何だとか。イロクの想像を遥かい上回るほどシアラの言っていることはイロクを驚かせた。半分以上シアラの言いたいことが理解できなかった。
それでも構わないと言うような顔をしたシアラがイロクに近づいた。
「まあ、無理なんだけどね」
何をしてほしい。何であってほしい。そんな願望を並べていたとしてもシアラはわかっている。このすぐあと、何があるのか。今さら知らないと偽る誤魔化しなんて意味がない。
この直後、この世界が終わることをシアラは一人でわかっていた。
カオルとナノカは、この短い数時間で楽しめただろうか。もう未来も過去も見る気がない。意味がない。そんなことするならば、その時間にやりたいことがある。
「ねぇイロク。こっち見て」
イロクの右頬に左手を当ててシアラは呼び掛けた。そして、目が合ったイロクの右の赤い目に長く延びた爪を入れた。
「お人形じゃないんだから、返してね」
交換した自分の目を返してほしかった。そうすればイロクはもうシアラにとってどうでもよくなる。耳障りだから叫ばれないように声が出ないようにしている。泣いているが関係ない。眼球さえ奪ってしまえばこんな人形どうでも良い。
「ありがとうね。もう貴方は俺のお人形じゃなくて良いよ」
取り出した眼球を左手で優しく握り、シアラは小屋から出ていった。自分の目は痛いから取り出さない。
シアラはそのまま宮殿があった場所に向かった。
「どういうことだ」
そこには既に神がいた。またシアラには見えていないことだった。
「わかってたことを知られてるってわかってるくせに、そんな言い方するんですね。俺は邪魔なものを排除して欲しかったものを手にしただけで何もしてませんけど? 」
もう敬意の欠片もない。黒い翼を羽ばたかせてシアラと神は見つめ合った。何をいっても返される言葉がわかっていて何も言えない神とそれをわかっていてにこりと笑うシアラ。性格が悪い。
「ま、まぁいい。破壊することには代わりがない。私がここから消えれば同時に消滅する。言っても意味がないがな」
「神……コト様。二度と俺のような能力を与えないことをおすすめしますよ。こんな風に面倒になるわ」
静に粒子になるように消えていく神にシアラがアドバイスをした。もう消える。悲しくもないが、念のためだ。神は返事をしなかった。
シアラは最後に神の名前を呼んだ。誰も知らないはずの名前を呼んだ。コト。それが神の名前だと直感したから呼んだ。全く反応をしなかったが。
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