炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~

黄崎うい

51節 悪魔の話とお説教

「シアラはな……、最初はただの良い子だったからつまんないやつだと思ったんだ。可愛かったけどな。それでな……」

「……私の知ってるシアラ先生は最初から良い子なんかじゃありませんでしたけどね。……そんな目で見ないでくださいよ。悪かったですから」

 話せと言われてイロクが話していたらナノカは思ったことを普通に言ってきた。他だ聞いてるだけってことはできないのかとイロクが何も言わずにジトーッと見ていると、その視線に気がついたナノカが謝ってきた。

 悪かったと言っているからもう口を挟んでくることはないかとイロクは咳払いをし、話を続けた。

「ゴホン……。それでな、私はただの喧嘩好きで術はいまいち、能力が不明だが将来有望だから。シアラはおとなしくて良い子だが術は先頭において負けることはないもので能力はカオルと同じで武器にもなる。将来有望だ。だから当時の大天使と大悪魔に組まされた」

 よく覚えてる。忘れてしまってもおかしくないくらい昔のことなのに不思議なくらい覚えている。思い出そうとするほど鮮明に。実際に今がそのときのように。

「可愛いとは思ってたけど良い子すぎて嫌いだったな、確か。嫌いと言うか苦手。悪魔ってのは私もそうだったが基本はサボって喧嘩して真面目な方が少ないだろ? 集会はサボるし。言われたことをちゃんとやるやつは苦手なんだ。……まぁ、根っから真面目なナノカにはわからないかもしれないけどな」

 イロクが昔の自分のサボり様をナノカに話していると、キョトンとした目でナノカはイロクを見た。ナノカにも全くわからないわけではない。現に表に出さずとも真面目なナノカを嫌う悪魔は多かった。イロクの話を聞きながらその事かと軽く頷く。

「これはあんまり関係ないと思うが、シアラは一人称『私』だったし私は一人称『俺』だった頃もある。ヒサに性別間違えられてからしばらくはそうだったんだが、しっくり来なくて二日で戻った」

 イロクが一息ついてナノカを見ると興味はあるが、絶対にしょうもないと思ってるだろう目をしていた。それでも真面目に口も挟まず表情だけで聞いてるのは感心せざる終えない。言いたいことは表情が言っているから大人しいとは言えないけれど。

「普通の悪魔の仕事なんて寿命が近い貴族を張ってればあとは殺して終わり。なのにシアラは私に真面目にやれだの真剣になれだの。殺し漏れなんてなかったんだぞ? ただ、重要書類を少し……かなり間違えて処分しただけだ。な? 私悪くないだろ? 」

 イロクがナノカの意見を求めるように視線を向けてもナノカは、何だこいつはとでも言いたげな表情を向けているだけで何も言ってくれない。何か言ってくれと心の底からイロクが思っても何も言わない。

 訂正。ナノカは真面目に聞いてはいるが心を読んでそれっぽいことを考えることもしないから今は真面目ではない。イロクは仕方ないから言ってやることにした。

「そんな顔してないで何か言ってくれ。……確かにさっきは黙っててほしかったが、お前に意見を求めただろ? 頼むからそんな顔するな」

「……真面目に真剣にやってれば重要書類を処分したりしないということではないんですか? シアラ先生が気の毒になってくるのでもう少し考えてから発言してほしいですね。……そもそも、少しは要約する努力をしてください」

 ナノカに意見を求めたら怒られた気がした。いや、実際怒られた。ひどいなぁと思いたかったが、言っていることは正しいのでイロクは反省して少し考えてから話すようにすることにした。

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