炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~
37節 悪魔と天使が素直。
「あ、イロク帰ってきたのね。ちょっと汚れてるけど、まあ気にしないで入ってちょうだい」
シアラの小屋にイロクが戻ると、入り口付近にシアラが座り込んで眠そうにしていた。シアラは何事もなかったようにいつも通りイロクを小屋の中に入れた。
「違う。今日はシアラを呼びに来た」
「え? そんな笑顔だから俺はてっきり遊びに来たんだと思ったよ」
立ち上がってイロクに近寄ったシアラは不思議そうにイロクの笑顔を覗き込んでいた。イロクの知っているシアラなら恐らくしないことだ。
「宮殿でヒサとラウカが待ってる。私は、呼びに来ただけだ」
「楽しそうね。もしかして……俺、殺されちゃうのかなぁ~なんて」
表情と声が全く一致していないイロクを見てシアラは楽しそうだと言った。声が聞こえないのかとイロクが思うほど楽しそうだと言った。そして、自分は殺されると言った。イロクが驚かないわけもなく、その様子を見たシアラが何故か頷いた。
「連れてくるように言われたなら急がないとだね。ヒサに会うなんて久しぶりだな~」
「シアラは知ってるだろ、この事もこの後の事も」
シアラの予知術を使えば、この程度のこと予め理解して何も言わずとも着いてくると思った。だが、そんなことはなかった。イロクの言葉にシアラは返した。
「未来を見るも見ないも俺の自由だもの。最後に見たのはイロクが宮殿に行く前だからこの事を見ようなんて思わないわ」
術を使うも使わないも個人の自由なことに変わりはない。けれど、シアラがこの事を知らないなんてイロクには思えないのだ。
当然シアラは知っていた。すべてを知った上で計画し、行動するために考えていた。
「そうか。じゃあ、覚悟しておくんだな」
「はいはい、イロクが頼むなら仕方ないわね」
イロクは気まずくなったのか、その後話を振ることはなかった。
しばらくして、シアラが寂しげにイロクに感謝を話した。
「ありがとう、イロク。俺のために長引かせてもらっちゃって」
「別に私はそうしたかっただけだ」
いきなり感謝されてイロクはどうにか動揺しないで返せた。いや、そのつもりだがシアラが見たら完全に動揺しまくっていた。飛ぶ軌道は乱れてるし、言葉にはつまりかけるしでそれに気づいてないイロクが哀れに思えるほどだ。
「優しいよね、俺はそんなイロクのこと大好きだよ」
「……そうか」
照れるわな。これは照れるわ。イロクは顔にこそ出さなかったが、飛んでいた高度が数十センチほどガクッと落ちた。それにも気づかないんだから動揺しまくっている。これから死ぬかもしれないとわかると口が軽くなるらしい。シアラの口から思っていることがどんどん出てくる。
「イロク、弟思いで優しいし、俺のこと大事にしてくれるし、大好き」
「……もう黙れ」
さすがに自覚するほど恥ずかしくなったようで、イロクはシアラの口を手で塞いだ。
これまでも二人は平行して飛んでいるように見えて実は手を繋いでいたりした。シアラが素直だとイロクは流されてしまうようだ。
シアラの小屋にイロクが戻ると、入り口付近にシアラが座り込んで眠そうにしていた。シアラは何事もなかったようにいつも通りイロクを小屋の中に入れた。
「違う。今日はシアラを呼びに来た」
「え? そんな笑顔だから俺はてっきり遊びに来たんだと思ったよ」
立ち上がってイロクに近寄ったシアラは不思議そうにイロクの笑顔を覗き込んでいた。イロクの知っているシアラなら恐らくしないことだ。
「宮殿でヒサとラウカが待ってる。私は、呼びに来ただけだ」
「楽しそうね。もしかして……俺、殺されちゃうのかなぁ~なんて」
表情と声が全く一致していないイロクを見てシアラは楽しそうだと言った。声が聞こえないのかとイロクが思うほど楽しそうだと言った。そして、自分は殺されると言った。イロクが驚かないわけもなく、その様子を見たシアラが何故か頷いた。
「連れてくるように言われたなら急がないとだね。ヒサに会うなんて久しぶりだな~」
「シアラは知ってるだろ、この事もこの後の事も」
シアラの予知術を使えば、この程度のこと予め理解して何も言わずとも着いてくると思った。だが、そんなことはなかった。イロクの言葉にシアラは返した。
「未来を見るも見ないも俺の自由だもの。最後に見たのはイロクが宮殿に行く前だからこの事を見ようなんて思わないわ」
術を使うも使わないも個人の自由なことに変わりはない。けれど、シアラがこの事を知らないなんてイロクには思えないのだ。
当然シアラは知っていた。すべてを知った上で計画し、行動するために考えていた。
「そうか。じゃあ、覚悟しておくんだな」
「はいはい、イロクが頼むなら仕方ないわね」
イロクは気まずくなったのか、その後話を振ることはなかった。
しばらくして、シアラが寂しげにイロクに感謝を話した。
「ありがとう、イロク。俺のために長引かせてもらっちゃって」
「別に私はそうしたかっただけだ」
いきなり感謝されてイロクはどうにか動揺しないで返せた。いや、そのつもりだがシアラが見たら完全に動揺しまくっていた。飛ぶ軌道は乱れてるし、言葉にはつまりかけるしでそれに気づいてないイロクが哀れに思えるほどだ。
「優しいよね、俺はそんなイロクのこと大好きだよ」
「……そうか」
照れるわな。これは照れるわ。イロクは顔にこそ出さなかったが、飛んでいた高度が数十センチほどガクッと落ちた。それにも気づかないんだから動揺しまくっている。これから死ぬかもしれないとわかると口が軽くなるらしい。シアラの口から思っていることがどんどん出てくる。
「イロク、弟思いで優しいし、俺のこと大事にしてくれるし、大好き」
「……もう黙れ」
さすがに自覚するほど恥ずかしくなったようで、イロクはシアラの口を手で塞いだ。
これまでも二人は平行して飛んでいるように見えて実は手を繋いでいたりした。シアラが素直だとイロクは流されてしまうようだ。
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