炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~

黄崎うい

33節 悪魔といい悪夢

「私はシアラが殺したであろう天使を何人も見たよ。私でも……うえっ、気分が悪くなる光景だった」

 仕方なく説明しようとしてシアラの小屋で見たものを思い出して話そうとするとイロクは顔色を青くした。その時にはそれほど気分が悪くなかったのにその光景、匂いを思い出すと頭の中で鮮明に再現されて吐き気がした。

「再現できる? 」

「おい、お前ラウカ聞いてたか? 思い出したくねぇっての」

「イロク、影使えば思い出さなくても夢にできるでしょう……? 」

 兄弟げんかが勃発しかけた時、大天使がイロクの足元を指さして言った。呼ばれた気がした影がイロクの影からぼこぼこと出てきた。

「出来るけどお前ら死ぬぞ? いつもと違って侵食を防いだら意味ないし」

「一体の半分ずつなら問題ないですよ。あなたの影ならそれが出来るでしょう……? 」

 確かにイロクの影を使えばどうにかなる。けれど、それはそれで面倒だった。絶対に呼ばれたと確信したイロク自信の影がイロクの手まで移動して黒い塊に変わった。

「正気か? お前半分にされるんだぞ? 基に戻れる変わらないぞ? 」

 イロクが大天使や大悪魔に向けない言葉をいきなり話し始めるものだからその光景になれていない大天使はビクッと驚いた。そして、手にいる影と話しているとわかると、分かりやすく前髪をいじった。

「私は知らないからな。……やるってさ」

「せめて兄ちゃんに通訳してもらいたい」

「それより影どこ行ったの? 手からいなくなったみたいだけれど……」

 影と会話して勝手に決められても影の言葉が聞こえない者には何も伝わらない。影との会話はイロクの通訳が必須だ。

 イロクの手の上に乗っていた黒い塊が手に溶けて消えたのを見た大天使はイロクに尋ねた。

「話を聞いてくるってさ。私のからだに溶ける感じだが死んだ悪魔の影はあるし天使の影は可能な限り回収した。あの小屋で起きた惨劇は見える。しばらくの調査は私が変わってやるから寝てろ」

 急だった。本当にいきなりイロクは睡眠術を使って大天使と大悪魔を眠らせた。これ以上の説明が面倒なったのだ。

 イロクは手に情報収集を終えた自分の影を呼び出して物理的に半分にした。そして、記憶や機能が半減していないか確かめると二人の額に影を押し付けて無理矢理ねじ込んだ。三十分ほどで目覚めるはずだ。それまで資料室から出て外で一応している調査に力を貸すことにした。

「いい悪夢を。……なんてな」

 目の前にいる二人が今ごろどんな夢を見ているのかおおよその想像がつていてるイロクは、冗談混じりに言って出口のドアノブに手をかけた。

「開かないし……。逃亡厳禁かよ、別に逃げるつもりなかったのに」

 三十分の暇潰しを阻止された。仕方がないから大天使がさっき拾っていた資料でもよく読んでみる。これも調査の一貫として数えられるだろうし、なにか分かるかもしれない。いや、わかってくれと願って資料を開いた。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品