炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~
28節 悪魔と大悪魔の風邪
「まったく……お前部下だっていう自覚は」
「話が終わりました。あと、ラウカが熱を出したのでイロクお願いしますね……」
イロクがナノカに説教をしようとすると、裏口が開いて大天使が出てきた。タイミングの悪さをイロクが呪っている間にナノカはカオルを抱えて大天使に渡していた。
「……自室に寝かせてあげてください。これを食べたので」
カオルがずっと手から離さなかった食べかけの果物を大天使に見せてナノカはそう言った。仕事の早さだけは憎めない。だがその直後のドヤ顔だけは腹が立つ。
「どけ、体調診るから」
イロクは大悪魔を寝込ませるわけにも死なせるわけにもいかない。できるだけ早く対処しないとどうなるかわからないほどからだが弱いのだ。こんなのを大悪魔にするなんて神は何を考えているのか。
「あ、兄ちゃん」
「兄ちゃんやめろ。人の頭殴っといてよくそんな笑顔できるな。で、熱は? 」
イロクが部屋に入って大悪魔の寝床に近づくと、それに気づいた大悪魔がイロクを呼んだ。その呼び方が気にくわないイロクは、体温計を渡せと手を出した。
「ん? 」
「手を出すな、体温計だ」
「熱は微熱程度ですが、ストレスからの解放と風邪が同時に来てこうなりました。私がこんなことを言うのもあれだけど、公務が来ないように頭の方が戻るまで喧嘩中にしておきましょう……」
イロクは出した手の上に手を重ねられて思わずその手を捻りかけたが、病人だったと話ながら手をそっと布団に置いた。どうしようかと悩めば、大天使が後ろから様態の報告と提案をした。
「それがいいかもな。私はしばらくここで看病してるが、お前らどうする」
時間も稼げるし大悪魔のことも心配なイロクはその部屋で世話をすることを決めた。喧嘩中でも多少の公務はある。それも片付けなければならないからだ。
「私は残りたいのですが、カオルがこんなでいつ目を覚ますか……。それまでは私の代理を頼めないので戻ります。カオルが目を覚まし次第来ますので、イロク先輩あとは頼みます……」
「先輩やめろ。ヒサはわかった、ナノカは? 」
そうやって部下に仕事を押し付けるのやめてほしい、という言葉を飲み込んでイロクはナノカに話を振った。
「……私は今まで通りです。絶対あいつら仕事してないし」
「確かにな、了解。呼んだら来てくれ」
「……じゃあ、私はこれで失礼します」
いつの間にかドアの方まで離れたナノカは言いながら部屋から出ていった。礼儀というものがわからないのかと思うイロクも礼儀なんて知らない。
「逃げたか」
イロクが大天使が立っていた裏口の方を見るともうそこには誰もいなかった。扉はぴったりと閉められ、何もなかったと言うように痕跡がひとつもない。
「久々に兄弟仲良くしろと? 私はラウカに大悪魔を押し付けたのにか」
大悪魔が眠っていることを確認すると、イロクは座っていた椅子から立ち上がっていつも大悪魔が仕事する机に向かい、椅子に座った。机の上から三番目の引き出しを持っていた鍵で開け、中からメガネを取り出してかけた。そして、ボソッと呟いた。
「相変わらず趣味の悪い部屋だな、この部屋は」
見渡す限り黒が特徴の物しか置いていない。ペンに手帳、クローゼットにベッド、照明。真っ黒で置いているものもどちらかと言えば女が好みそうなデザインだ。イロクの趣味には合わない。
「ラウカも馬鹿だよなぁ、嫌なら引き受けなければ良いのにな」
「話が終わりました。あと、ラウカが熱を出したのでイロクお願いしますね……」
イロクがナノカに説教をしようとすると、裏口が開いて大天使が出てきた。タイミングの悪さをイロクが呪っている間にナノカはカオルを抱えて大天使に渡していた。
「……自室に寝かせてあげてください。これを食べたので」
カオルがずっと手から離さなかった食べかけの果物を大天使に見せてナノカはそう言った。仕事の早さだけは憎めない。だがその直後のドヤ顔だけは腹が立つ。
「どけ、体調診るから」
イロクは大悪魔を寝込ませるわけにも死なせるわけにもいかない。できるだけ早く対処しないとどうなるかわからないほどからだが弱いのだ。こんなのを大悪魔にするなんて神は何を考えているのか。
「あ、兄ちゃん」
「兄ちゃんやめろ。人の頭殴っといてよくそんな笑顔できるな。で、熱は? 」
イロクが部屋に入って大悪魔の寝床に近づくと、それに気づいた大悪魔がイロクを呼んだ。その呼び方が気にくわないイロクは、体温計を渡せと手を出した。
「ん? 」
「手を出すな、体温計だ」
「熱は微熱程度ですが、ストレスからの解放と風邪が同時に来てこうなりました。私がこんなことを言うのもあれだけど、公務が来ないように頭の方が戻るまで喧嘩中にしておきましょう……」
イロクは出した手の上に手を重ねられて思わずその手を捻りかけたが、病人だったと話ながら手をそっと布団に置いた。どうしようかと悩めば、大天使が後ろから様態の報告と提案をした。
「それがいいかもな。私はしばらくここで看病してるが、お前らどうする」
時間も稼げるし大悪魔のことも心配なイロクはその部屋で世話をすることを決めた。喧嘩中でも多少の公務はある。それも片付けなければならないからだ。
「私は残りたいのですが、カオルがこんなでいつ目を覚ますか……。それまでは私の代理を頼めないので戻ります。カオルが目を覚まし次第来ますので、イロク先輩あとは頼みます……」
「先輩やめろ。ヒサはわかった、ナノカは? 」
そうやって部下に仕事を押し付けるのやめてほしい、という言葉を飲み込んでイロクはナノカに話を振った。
「……私は今まで通りです。絶対あいつら仕事してないし」
「確かにな、了解。呼んだら来てくれ」
「……じゃあ、私はこれで失礼します」
いつの間にかドアの方まで離れたナノカは言いながら部屋から出ていった。礼儀というものがわからないのかと思うイロクも礼儀なんて知らない。
「逃げたか」
イロクが大天使が立っていた裏口の方を見るともうそこには誰もいなかった。扉はぴったりと閉められ、何もなかったと言うように痕跡がひとつもない。
「久々に兄弟仲良くしろと? 私はラウカに大悪魔を押し付けたのにか」
大悪魔が眠っていることを確認すると、イロクは座っていた椅子から立ち上がっていつも大悪魔が仕事する机に向かい、椅子に座った。机の上から三番目の引き出しを持っていた鍵で開け、中からメガネを取り出してかけた。そして、ボソッと呟いた。
「相変わらず趣味の悪い部屋だな、この部屋は」
見渡す限り黒が特徴の物しか置いていない。ペンに手帳、クローゼットにベッド、照明。真っ黒で置いているものもどちらかと言えば女が好みそうなデザインだ。イロクの趣味には合わない。
「ラウカも馬鹿だよなぁ、嫌なら引き受けなければ良いのにな」
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