炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~
22節 悪魔に天使の脅し
「こんなところに天使が何の用? 」
争い中に敵陣地に乗り込むなんて普通しない。元凶の怒りが冷めるのを待てば良いという考えを持つ者が多い悪魔はおかしな者を見る目でカオルを見た。
「……今は急いでいるのです。大悪魔様の所へ通しなさい……」
天使たちの中ではあまり発言もしないで意見を集計し、提案するだけのカオルも悪魔には強気でいる。天使のNo.2であることは事実として受け取られているが、そんなカオルが弱気でいたら天使全体が嘗められるということを警戒してだ。
「そう言って天使は大天使様の所に悪魔を通すの? 」
「……通しませんが、今のような非常事態となれば話は別です……」
何が何でも早く大悪魔の所に行きたかったカオルは焦り、今どういう状況なのか説明するのを忘れていた。
「私たちは仕事をすることを好まないが、こんなときに天使を通すほど愚かではない。わかるよな? 」
早くしなければいけないときに悪魔はカオルを拒んだ。段々とカオルを遠くから見ている者も増えていき、この数を同時に相手するのは難しいという数にまで達した。
仕方ない。カオルはそう思って何本か矢を出して握った。
「……無駄な殺生はしたくない。見なかったことにして通せ、それがあなた方の最善の策だ……」
例え悪魔相手でも敬語をはずすのは気分が悪いが、脅すくらいじゃないと通してもらえない。そう判断したカオルは積極的に発言している悪魔をギロリと睨み、低い声で言った。
見なかったことにしろ、それをカオルから命令することでここでカオルを通してもバレないという考えが悪魔たちの脳裏によぎった。バレないならば間違いなく通した方が楽だ。悪魔たちはそれが当たり前のようにカオルを見ないようにした。
完全に向けられる視線が無くなったことを確認したカオルは、矢を消して穏やかな笑みで進んだ。 
宮殿の形は天使と悪魔の場所が左右反転しているだけ。迷うことなく大きな黒い扉の前に着いた。
「……何で扉の前に誰もいないの……」
ボソッと言ってはみたが、考えてみればそのはずだ。大悪魔の一番近くで仕事をするNo.2は常に不在。誰かが代わりを勤めればいいもののNo.3には会ったことはないし悪魔の多くはサボりがち。いる方が不自然だ。
「……貴女がカオルさんですか? 」
入るの厳しいかもなとか思って扉の前に立っていると、眼鏡をかけた悪魔がカオルに話しかけた。イロク曰く、眼鏡をかけてるのは真面目が多いらしい。正直ただの偏見だ。
「……そうですが、あなたは? まさかここに来てまで私の侵入を許さないと言うのでしょうか……」
「……いえ、そこの扉を開けに来ただけです。恐らくですが、イロク様が関係していると思うので。あ、自己紹介が遅れましたね。私は一応悪魔のNo.3、イロク様がいない間の代わりを勤めるものです。私では力不足ですがね」
悪魔のNo.1はイタズラ好き、No.2は自分勝手だったので全く期待していなかったのにNo.3はまともそうでカオルは驚いた。外見が真っ黒すぎることを除けば期待以上だ。
「……名前は? ……」
そういえば、自己紹介と言いながら名前を言ってなかった気がしてカオルは尋ねた。すると、眉を寄せて一度横を見てから答えてくれた。
「……急いでるときいたのですが、まあいいでしょう。私の名前はナノカと言います。イロク様には何度かおかしな名前だと言われてますが」
「……大丈夫、私も言われますから。では、ナノカさん。大悪魔様に会いたいのでお願いしてもいいですか? ……」
イロクにおかしな名前と言われているときいたカオルは、ナノカに親近感を感じないことなんて出来なかった。笑ってしまうのをどうにか堪えて普通の笑顔で頼んだ。
「……いいですけど、十中八九大悪魔様寝てますよ? 」
争い中に敵陣地に乗り込むなんて普通しない。元凶の怒りが冷めるのを待てば良いという考えを持つ者が多い悪魔はおかしな者を見る目でカオルを見た。
「……今は急いでいるのです。大悪魔様の所へ通しなさい……」
天使たちの中ではあまり発言もしないで意見を集計し、提案するだけのカオルも悪魔には強気でいる。天使のNo.2であることは事実として受け取られているが、そんなカオルが弱気でいたら天使全体が嘗められるということを警戒してだ。
「そう言って天使は大天使様の所に悪魔を通すの? 」
「……通しませんが、今のような非常事態となれば話は別です……」
何が何でも早く大悪魔の所に行きたかったカオルは焦り、今どういう状況なのか説明するのを忘れていた。
「私たちは仕事をすることを好まないが、こんなときに天使を通すほど愚かではない。わかるよな? 」
早くしなければいけないときに悪魔はカオルを拒んだ。段々とカオルを遠くから見ている者も増えていき、この数を同時に相手するのは難しいという数にまで達した。
仕方ない。カオルはそう思って何本か矢を出して握った。
「……無駄な殺生はしたくない。見なかったことにして通せ、それがあなた方の最善の策だ……」
例え悪魔相手でも敬語をはずすのは気分が悪いが、脅すくらいじゃないと通してもらえない。そう判断したカオルは積極的に発言している悪魔をギロリと睨み、低い声で言った。
見なかったことにしろ、それをカオルから命令することでここでカオルを通してもバレないという考えが悪魔たちの脳裏によぎった。バレないならば間違いなく通した方が楽だ。悪魔たちはそれが当たり前のようにカオルを見ないようにした。
完全に向けられる視線が無くなったことを確認したカオルは、矢を消して穏やかな笑みで進んだ。 
宮殿の形は天使と悪魔の場所が左右反転しているだけ。迷うことなく大きな黒い扉の前に着いた。
「……何で扉の前に誰もいないの……」
ボソッと言ってはみたが、考えてみればそのはずだ。大悪魔の一番近くで仕事をするNo.2は常に不在。誰かが代わりを勤めればいいもののNo.3には会ったことはないし悪魔の多くはサボりがち。いる方が不自然だ。
「……貴女がカオルさんですか? 」
入るの厳しいかもなとか思って扉の前に立っていると、眼鏡をかけた悪魔がカオルに話しかけた。イロク曰く、眼鏡をかけてるのは真面目が多いらしい。正直ただの偏見だ。
「……そうですが、あなたは? まさかここに来てまで私の侵入を許さないと言うのでしょうか……」
「……いえ、そこの扉を開けに来ただけです。恐らくですが、イロク様が関係していると思うので。あ、自己紹介が遅れましたね。私は一応悪魔のNo.3、イロク様がいない間の代わりを勤めるものです。私では力不足ですがね」
悪魔のNo.1はイタズラ好き、No.2は自分勝手だったので全く期待していなかったのにNo.3はまともそうでカオルは驚いた。外見が真っ黒すぎることを除けば期待以上だ。
「……名前は? ……」
そういえば、自己紹介と言いながら名前を言ってなかった気がしてカオルは尋ねた。すると、眉を寄せて一度横を見てから答えてくれた。
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