炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~

黄崎うい

43節 嘘発見機よりも恐ろしい。

「私も数千年生きた記憶はあるのですが」

 飲み会で酔って愚痴るオッサンみたいなノリのことは敢えてスルーしてアルゴライムはただ思ったことを言った。

「私から見たら余裕で若いじゃないの。私も若い頃に戻りたいわ」

 何故かヒトミに話を任せると無駄話にどんどん脱線していってしまう。これはいけないと、アルゴライムは、本で読んだ一つの魔術を唱えた。

「この場にある全ての魂に命ずる。この命に従わぬ者は我が契約に応じ、全てを無効とする風と雷撃が襲うだろう。我が命、それは。会議完了の瞬間を迎えるまで全ての無駄話を禁ず……」

「待って、待って、何でそんな魔術知ってるのよ? ! 」

 あと一言発音することができれば、この魔術を遂行できるというところでヒトミの大声がアルゴライムの邪魔をした。強引に言うことも可能だったが、あまりに必死そうにヒトミが妨害してくるので、アルゴライムは唱えるのをやめた。

「何でって、そんなのあの図書館に決まってるじゃないですか。他にこんなの知る場所はないですよ」

「いや、あのね、その魔術。あなたのいた第三百六番八代目世界にそんな魔術はないはずなのよ。何でそれを知ってるの? って意味よ」

 第三百六番八代目世界とは、アルゴライムやリリス、キューバル、ルータスが生きた魔術のある世界だ。つい先程破壊され、九代目の世界が生成されようとしている場所に存在したものだ。

「まあ、あのお姉ちゃんのことなので、独自に研究したりとか、ズィミアの手回しとか、可能性なら、多くあります。けれど、今は関係の無い話です」

「流石に関与しすぎたのね……。まあ、いいわ」

 ヒトミは、そう言ってアルゴライムの眼を見た。早く魔術を完成させろと言いたいのだろう。それが神の指示なのか、と思いながらも、アルゴライムは頷いて唱えた。

「故意的な話の脱線、虚言を会議終了時まで禁ずる。以上のものに反し者には、雷撃の痛みを以て警告とする。以上」

 何かが光ったわけでも、部屋の形が変わったわけでもないが、アルゴライムとヒトミは、この空間に魔力の監視がついたことを認識した。例え神であっても欺くことの出来ない最高位の監視魔術だ。嘘発見機よりも恐ろしい。

「普通、普通よ、生命体が絶対に使えないやつなんだけど、これ。貴女、やっぱりおかしいわよ」

「はい、そうですか。では、続きを話してください」

 魔術をかけても尚、ヒトミは話したくなさそうに別の話題に流れることを望んだ発言をした。けれど、アルゴライムにはもう効かない。自分で言ったとはいえ、雷撃の痛みなんて受けたくないのだ。

「仕方ないわね。じゃあ、まずは私が見ることの出来たあの世界の情報を教えるわ」

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