炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~

黄崎うい

40節 バカなの? やっぱり貴女

「笑わないでよね」

 笑いを堪えようとしているアルゴライムに、ヒトミはそう言った。涙が出そうなほど可笑しかったのか、眼の雫を指で拭いながら、アルゴライムは答えた。

「この程度のことで正気に戻るなら、酒を飲む前に言ってくださいよ。あぁ、可笑しかった」

 ヒトミの顔を見てアルゴライムは、再び吹き出して笑った。それを見てヒトミは頬を膨らませて拗ねていた。完全に酔いが覚めているわけでは無いようだ。

「まあ、話せるようになってもらえて良かったですよ。本当に」

「そういえば、どうして酒なんて盛ったのよ。貴女、バカなの? 」

 元はと言えば、アルゴライムが眠気に勝てず、判断をすることを拒否して考えなしに酒を盛ったのが原因だ。その事を聞かれてアルゴライムは、目を反らすこと以外、何もできなかった。

「何か、後ろめたいことでもあるのかしら。なら、説明してもらわなくちゃね」

 怒りながらもニヤニヤと、ヒトミはアルゴライムを問い詰めた。この問いに答えなければ、これから何の説明もしない。ヒトミは笑顔でそう語っていた。

「ね、眠かったので、寝たかったんです。悪気はありません」

「……つまり、眠くて、判断力低下になって、悪気はないけど、何も考えないで寝てくれそうな酒を盛ったってことね? 」

 何故この言葉で理解した。謎しかないこの状況にアルゴライムは素直に答えた。嘘をついても意味がないと理解したからだ。

「はい」

「バカなの? やっぱり貴女」

 アルゴライムは、ヒトミに目をしっかりと見つめられながら言われた。圧がすごい。反省しなければ、ずっとこの圧のままだろう。体調を崩しかねないほどの圧迫感だ。

「バカではありませんよ。眠くて思考が停止していただけです」

「私は、それをバカだと言っているのだけど……」

「はぁ……。まあ、とりあえず話を進めましょうか。あまりグダグダしていても時間の無駄ですし」

 アルゴライムは、ため息混じりにそつ言った。たしかにそうだ。ヒトミは時間がないと何度も言いつつ何度も時間を無駄にしている。どっちがバカだって話にもなる。

「そうね。今回の作戦から話すわ。よく考えれば、そっちの方がいい気がするし」

「じゃあ、話してください。私がまた眠くなって思考を停止させる前に」

 アルゴライムは、座りながら真剣な顔でヒトミにそう頼んだ。ヒトミは、少し笑いはしたが、「ええ」とその顔と言葉を受けてから真剣な顔で話始めた。

 この作戦に失敗など存在しない。

 失敗=この世の消滅だ。

 初代神にとっては、地球も神界も自分自身でさえも破壊対象にすぎない。

 それを、初代神の消滅だけで終わらせることが今回の作戦の目的だ。

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