炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~

黄崎うい

38節 替え玉作戦だ

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 どれ程の時間が経っただろうか。ヒトミは出された酒を疑いもせずに一口で飲み干し、間もおかずに机に突っ伏してイビキをかきながら眠りについた。

 そのイビキが気になりはしたが、眠気が勝ち、アルゴライムもそのまま眠ってしまった。

 それから、かなりの時間が流れた。先に目を覚ましたのはアルゴライムの方だった。

 パチッと目を開き、朝の決まり後とのような行動を次々とこなし、最後にはどこから出したのか、べっこう飴を舐めた。そのべっこう飴にはみかんの皮らしいものが入っている。そんな甘くて美味しい、商品化したら爆売れ間違いなしのものだ。

 アルゴライムは、そんなべっこう飴をいい笑顔で舐めながらヒトミのことを見ると、ムスッとした表情を浮かべた。

「ヒトミ、起きろ。いつまで寝てるつもりですか? 時間がないんじゃないんですか? 」

 アルゴライムがどれだけ大きく体を揺すっても、ヒトミは全く起きる気配を感じさせない。それどころか、体温すら感じることができない。

「あれ? もしかして、アルコールの過剰摂取ですか? 生きてますよね? 」

 アルゴライムは、少し心配になり、強めにヒトミの頭を叩いた。すると、小さく「んー」と唸り、ヒトミの右目だけが開き、アルゴライムを見た。

「うるっっっっっっっっさいわれ! 」

 狭い部屋にヒトミの甲高い叫びの声が響いた。アルゴライムの耳にはしばらく耳鳴りのようにその叫びが響いていた。

「え、何ですか? うるさいのはそっちなんですけど」

 本当に訳がわからなそうな顔をしながらアルゴライムはヒトミを見た。何故かは全くわからないが、ヒトミはアルゴライムのことを睨み付けている。

「だかあ、ううさいっていっえるお! ねえ、このジューふ、もっとちょうらい、おいひいろ! 」
(訳:だから、うるさいって言ってるの! ねえ、このジュース、もっとちょうだい、美味しいの! )

「え、嫌です。きちんと話してください。話が進みません」

 ヒトミの話していることは、まだどうにか伝わる。けれど、"まだどうにか"だ。もし、これ以上酒を与えてこれ以上酔いが回れば、話をすることはほぼほぼ不可能だろう。

「やらやら! のむも! つくっけのアユオアイウ! ろむ! 」
(訳:やだやだ! 飲むの! 作ってよアルゴライム! 飲む! )

「はぁ…………。じゃあ、これをどうぞ」

 仕方なく、アルゴライムはミカンジュースを作って渡した。駄々っ子によく使える手段、替え玉作戦だ。駄々っ子に代わりのものを買い与え、黙らせるというごく普通の悪知恵の働かない子供相手だから可能な作戦だったから、アルゴライムは不安でならなかった。


まあ、はい。未硝詩ういです。お久しぶりです。

最近、ふざけて書いてます。通常運転です。

あ、一つだけ言わせてください。
私は、この神界編をいつまで引っ張るつもりだ? 馬鹿なのか?

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