炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~
37節 冷たそうね
ペシペシと頬を叩いてアルゴライムは聞く体勢を取った。それでもどうしても眠気が取れず、少しでも睡眠時間を確保するために一つの策を思い付いた。
「あ、ヒトミ。お礼に私が美味しいと思った地球の飲み物を入れますよ。もちろん、飲みますよね? 」
「あー、喉乾いたし、少し貴女の趣味も気になるわね。貰おうかしら」
もちろん、アルゴライムの好きな愛媛県に広大なみかん畑を所有している爺さん自家製のミカンジュースを飲ませてあげようなんて、そんな優しさなどない。酔っ払った爺さんに飲まされた自家製みかんを使った果物酒をアルコール度数を上げて飲ませようとしている。
アルゴライムいわく、あの酒は旨かった。一口飲んですぐに吐き出させられたが、甘いみかんの香りがジュースよりも濃厚に感じられた。早く大人になりたい一つの理由にあの酒が浮かんでくるほど、あれは美味い酒だった。酒のことなど、何もわからぬが。本当に、何もわからぬが、幼かったアルゴライムの心が甘さを語っていた。本人のなかには飲んだ記憶などほとんど残ってなどいないけれど。
「これです。美味しいですよ」
無色透明なガラスのグラスに少し濃い色のミカンジュースが入っているように見えるが、アルゴライムが出したのはアルコール度数がかなり高い酒だ。普通ならば飲む前に辛さで気づかれてしまうだろう。が、この程度などアルゴライムの魔術でどうにでもなってしまう。
「あら、これミカンジュースでしょ! 貴女のお爺様の」
「知ってましたか。これ、本当に美味しいんですよ、私は少なくとも大好きです」
何を出したか瞬時に当てられたアルゴライムは、一瞬ドキリとしたが、アルコールが入っていることはバレなかったため、ホッとした。
「私も飲んでみたかったのよね~。何で商品化してくれないのかしらね」
「理由は明白です。売るための実が少なくなるからです。あれだけ広い畑で作っていてもギリギリお得意様に売れる程度なのに、ジュースまで始めたら足りないじゃないですか」
「……それもそうね」
面倒くさそうな風にしていたアルゴライムがいきなり饒舌になったので、ヒトミは少し怪しげにアルゴライムを見たが、アルゴライムのみかん好きは知っていたので、特に追求もしなかった。
「さ、どぞ」
アルゴライムは内心、かなり眠かったので、少々適当なことになっても早めにヒトミにこの酒を飲ませたかった。
「冷たそうね」
酒なら冷たい方がいいという安直な考えしかアルゴライムには浮かばず、グラスには水滴が伝っていた。アルゴライムの手の中に現れるまでは冷凍庫で凍らされていたのではと思うほどグラスが白く曇り、触れるのも恐ろしいほど凍りついていた。
「あ、ヒトミ。お礼に私が美味しいと思った地球の飲み物を入れますよ。もちろん、飲みますよね? 」
「あー、喉乾いたし、少し貴女の趣味も気になるわね。貰おうかしら」
もちろん、アルゴライムの好きな愛媛県に広大なみかん畑を所有している爺さん自家製のミカンジュースを飲ませてあげようなんて、そんな優しさなどない。酔っ払った爺さんに飲まされた自家製みかんを使った果物酒をアルコール度数を上げて飲ませようとしている。
アルゴライムいわく、あの酒は旨かった。一口飲んですぐに吐き出させられたが、甘いみかんの香りがジュースよりも濃厚に感じられた。早く大人になりたい一つの理由にあの酒が浮かんでくるほど、あれは美味い酒だった。酒のことなど、何もわからぬが。本当に、何もわからぬが、幼かったアルゴライムの心が甘さを語っていた。本人のなかには飲んだ記憶などほとんど残ってなどいないけれど。
「これです。美味しいですよ」
無色透明なガラスのグラスに少し濃い色のミカンジュースが入っているように見えるが、アルゴライムが出したのはアルコール度数がかなり高い酒だ。普通ならば飲む前に辛さで気づかれてしまうだろう。が、この程度などアルゴライムの魔術でどうにでもなってしまう。
「あら、これミカンジュースでしょ! 貴女のお爺様の」
「知ってましたか。これ、本当に美味しいんですよ、私は少なくとも大好きです」
何を出したか瞬時に当てられたアルゴライムは、一瞬ドキリとしたが、アルコールが入っていることはバレなかったため、ホッとした。
「私も飲んでみたかったのよね~。何で商品化してくれないのかしらね」
「理由は明白です。売るための実が少なくなるからです。あれだけ広い畑で作っていてもギリギリお得意様に売れる程度なのに、ジュースまで始めたら足りないじゃないですか」
「……それもそうね」
面倒くさそうな風にしていたアルゴライムがいきなり饒舌になったので、ヒトミは少し怪しげにアルゴライムを見たが、アルゴライムのみかん好きは知っていたので、特に追求もしなかった。
「さ、どぞ」
アルゴライムは内心、かなり眠かったので、少々適当なことになっても早めにヒトミにこの酒を飲ませたかった。
「冷たそうね」
酒なら冷たい方がいいという安直な考えしかアルゴライムには浮かばず、グラスには水滴が伝っていた。アルゴライムの手の中に現れるまでは冷凍庫で凍らされていたのではと思うほどグラスが白く曇り、触れるのも恐ろしいほど凍りついていた。
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