炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~

黄崎うい

36節 泣くな、涙を流すな、弱音を吐くな。

「じゃあ、時間の話からにしますか」

「どうぞ」

 深くため息をついたヒトミの顔には、堂々と"mendoi"と書いていた。他にも"iyada"や"sasshite"とアルゴライムに見せつけるように遠慮なく示していた。

 それを華麗に無視し、アルゴライムは、とっとと話すように顎で促した。散々駄々をこねるように先延ばしにしてきたが、ヒトミはようやく話す気になったようだ。息をゆっくりと吐きながら、アルゴライムの方を見て口を開いた。

「えーとね、まあ、貴女を殺さなきゃいけなくなった理由は察してほしいんだけど、とりあえず殺さなきゃになったじゃない。そんなときに、小山薫が想定外にエラーだったことが判明してね、やることが多すぎて地球の時間の流れを遅くしたのよ。それで、小山薫の排除も貴女を殺すのもできたのよね。で、そこで困ったのが、遅くしてた反動ですごいスピードで時間が流れちゃってね。魂がたくさん神界の一部に保管されてるんだけど、今は関係ないわね」

「関係はないかもしれませんが、話してもらえませんか? そういう言い方されると気になるので」

 ヒトミが隠したかったのか、かなり早口で言ったことをアルゴライムは聞き返した。言い訳をする気も無くなったようだ。ヒトミはまたため息をついて話始めた。

「あのね、大体四百年くらいかな。時間が一気に流れちゃって、今は時を止めてるの。また反動が起きるのが怖いんだけどね。で、今多分西暦2435年位だけど、あなたが死ぬ少し前くらいから死んだ魂を全部保管してあるのよね。だから、数えたくもない位の量よ。面倒なんだけど……」

「泣くな、涙を流すな、弱音を吐くな。それは理解しました。続きを願います」

 今にも泣きそうな声で後半の言葉を濁したヒトミをイライラしたように見ながらアルゴライムは強めに言った。ハイハイ、と言い訳をするようにアルゴライムを宥めると、ヒトミはもう一度話始めた。

「で、時間が流れたからそこに榊六日の魂があることは矛盾しないの。使っちゃったから。もっと生きてくれるといいけど……」

 ヒトミは、また弱音を吐きたくなったけれど、アルゴライムの鋭い目が睨んでくるのでやめた。代わりに、次に話そうとしていた内容をもう一度よく考えてから話す。

「で、次に初代神のいる世界の話ね。まあ、少しだけ長くなる話よ。でも大切なこと。貴女に選択してもらわなきゃいけないこともあるし、真剣に聞いてよね。欠伸しない、良い? 」

 さっきまで寝ていたはずなのにまた眠たそうにしているアルゴライムに仕返しも含めて教師が生徒を咎めるように言った。アルゴライムは、その返事に舌打ちと言葉を返した。

「はーい」

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