炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~

黄崎うい

31節 人を殺してないよね!?

 六日の言葉は、重く静かで冷たいものだった。そして、その言葉にはクレームではなく、何か頼み事があるということが、若菜にはわかった。

「私、回りくどいこと嫌いなんですよね。六日さん、何が言いたいのですか? 」

「はぁ……。わかるでしょ、家に来て」

 六日は、想像はしていたであろう面倒だという言葉を受け、机に突っ伏した。そして、そこから顔だけを上げて若菜のことを見て言った。

「わかりました。今日で良いですね、家に着き次第、すぐに伺います」

「え、今日? …………わかりました、お待ちしてます」

 話を終えると、六日は教室から出ていった。七日に確認をしに行ったのかもしれない。若菜はそう思って何も気にしなかった。


「お邪魔します」

 放課後、六日が家に着くと、息を付く間もなく若菜がやって来た。教室を出たのはほとんど同時のはず。家は反対方向、どんなに急いで帰り、この家まで来たのか、六日は不思議でならなかった。

「鞄はどこかに捨ててませんよね、その辺の人を脅して運ばせてませんよね、人を殺してないよね!? 」

 六日は、思い付く限りの悪い想像を、玄関で若菜を出迎えながらそのまま全てを若菜にぶつけた。扉を開けられた瞬間にその言葉が飛び出してきたので、若菜は笑いながら驚いていた。

「落ち着け……じゃなくて落ち着いてください。私はもうそんなことしませんよ、少なくとも今は」

「そ、そうでしたね。さ、入ってください。お茶を入れるね」

 とっとと中に入れろと言うように六日を家の中に押し込みながらそう言った。それを察した六日は、急いでリビングに案内して、用意していたお茶とクッキーを出した。

「一日ねぇが焼いたやつ、少し残ってたからあげますね。あと……七日は申し訳ないのですが、今日はいません」

 クッキーのお皿を置いて椅子に座ると、六日は少し申し訳なさそうにそう言った。それと同時にガタッと音がした。五日がいるはずだ。でも、姿は現さない。勘づいてはいたが、若菜は以前家に来てから嫌われているのかもしれない。

「ただいまー。あら? お客様でもい……」

 一日が帰ってきたようだ。仕事が忙しかった母親の代わりに家のことをしている一日は、帰ってきてまずリビングで誰が家にいるのか確認する。何故かわからないが、一日にはわかるらしい。これも才能の一種だったりするのだろうか。

 いつも通りリビングに来た一日は、若菜の姿を確認して言葉を途切れさせた。やはり、何かがあったらしい。

「一日さん、お久しぶりですね。お邪魔させていただいています」

「え、ええ。久しぶり、若菜ちゃん。その手袋とリボンはどうしたの? 前は付けてなかったわよね? 」

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