炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~

黄崎うい

5節 久々の会話

「……かなりてきとうなんですね、神界って。そんなてきとうな場所でいろいろ管理されていただなんて、考えたくもないですよ」

 アルゴライムは、ヒトミが話終えたのを察すると、口を開いて意見を述べた。そして、長くなると思っていた昔話が意外と簡潔に終わり、少し驚いていた。けれど、終わって良かったと、少しの安心感もあった。

「まあ、少なくとも前の神からしたらただの暇潰しなのだから、てきとうにはなるわよね。私はマニュアル通りに世界をつくって破壊してるだけなの」

 ヒトミのマイペースは、恐らく生前からであろう。恐らく、てきとうに生きててきとうに最強になって、暇になったから死んだ。ただそれだけの人生だったのだろう。アルゴライムは、そういうふうに勝手に解釈をし、勝手に理解した。

「それより、私をこんなところに呼び出したのにはマニュアルではない理由があるんですよね? それを教えてください」

 アルゴライムは、カチャとティーカップを置くと、真っ直ぐとヒトミの目を見てハッキリと、冷静に言った。

「察しが良いのね。やっぱり、本物の感情を持っている者と話すのは楽しいわ~」

「そういう茶番は良いので、どうか説明をお願いします」

 ヒトミがアルゴライムと話していて思ったこと。それは、感情を持っている者がどこまで貴重であり、面白い存在か、ということだ。神界は他の地にある世界に比べ、時の流れが緩やかだ。元々は同じ流れだったのだが、ヒトミが試しに時の流れを狂わせてしまったとき、それから戻らなくなってしまったのだ。神界では、ヒトミが神になってから数先年ほどの時しか経っていないのだ。そんな数千年ぶりの自立した本物の感情を持っている者との会話。それが楽しくて仕方がなかった。

「はいはい。こんなに楽しいのは数千年ぶりなのよ? もっと楽しんでも良いと思うのだけど……」

「アノニムに殴られますよ? 物理的に」

 アルゴライムは、だんだんと冷たく対応するようになった。話に飽きたのか、微かに似ている姉を思い出してしまったのか、話しているのが苦になっていたのだ。

「そうね……。じゃあ、単刀直入にお話しするわね。私が貴女をここに呼んだ理由は、貴女に神の完全消滅をしてもらいたいからなのよ」

 ヒトミは、意外とあっさり目的を話した。それで良いのかと、アルゴライムが心配になるほどあっさりとしていた。

 神の完全消滅。それは、昔、ヒトミが落とした前の上を、その世界からも消滅させ、元から無かったものとして扱うということだ。もちろん、神が入れ替わったことに気づかれていないのだから、本来ならこんなことはしなくても良い。しかし、そうではなかったのだ。

 前の神は、落ちた世界で神を演じていたのだ。

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