炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~
52節 消滅
「前置きはいいので、早く話してください」
「せっかく格好つけてあげたのに、言い方ひどいな」
アノニムにしては珍しく、冗談を言ったつもりだったのだが急いでいるアルゴライムにとってはただの時間の無駄だった。
「話してください」
アルゴライムは、かなり怒っているらしい。アノニムは、管理者であり、生命体に怯えることはないのだが、少し怯んでしまった。
「わかったよ……。簡単な話だ。その肉体を完全に再起不能な状態にする」
本当に簡単なことだった。アノニムは言う。アルゴライムは今、その肉体で生きているから、その肉体に戻ることができなくなればきちんと成仏すると。そして、普通に魂のみを引き剥がすと肉体だけが別の魂を勝手に取り込み、暴れだす可能性があることを。
「そういうことですか。それなら別に説明なんてしなくても破壊してくれたら良かったんです。あなたが」
「言えと言ったのはあんただ。それに、いきなり破壊されて怒るのはあんただろ? 」
「それはそうですけど…………」
アルゴライムがそう言った後、少しだけ無言の間があった。アルゴライムはやはり、死にたくないと思い、アノニムも何故か殺すことに抵抗があった。圧し殺してきた管理者としての感情が邪魔するのか、それはわからなかった。ただ、殺したくないとだけ思ったのだ。
「ああ、そうだ。あっちで話がある」
あっち、というものは神界のことだろう。死んだ魂は、一度神界に飛ばされ、次の一生を選ばれることになっている。そこで、アノニムはアルゴライムの魂を、自分の管轄下に飛ばし、一時的に管理者と同じ存在にしようとしているのだ。できないことではない。ただ、難しいだけのことだ。
「あの……何を作っているんですか? 」
魔力が一ヶ所に集中している気配をアルゴライムは感じ取った。その集まっている場所はアノニムの手の中。何かを作っているのは明らかだった。
「ああ、これか。あんたたちで言う核爆弾のようなものだ」
「それって……」
アルゴライムが何かを聞こうとすると、その質問の内容がわかっているかのように、得意気に説明を始めた。
「熱くはない、安心しろ。核爆弾並の破壊力ってだけだ」
「何でそんなものを作っているのか聞きたいんです」
アノニムは、ああそっちか、と言うような表情で少し焦っているアルゴライムに向かって説明を始めた。
「ああ、私のこの肉体も破壊しなければならないからな。面倒だから一度で済ませるだけだ。ついでにこの世界の破壊も進む。一石三鳥だ。素晴らしいだろ」
「ああ、もういいです。早く済ませてください」
「ああ、わかった」
アノニムがそう言うと、その手に握ってきた光の塊を放り投げた。そして、その塊が床に落ちると、音もなく、弾まず、閃光がパッと煌めいた。
そして、閃光が図書室中に行き渡り、わずかな隙間からその光が漏れ出すと、その光が包んだ場所は、塵一つ残らずに消滅した。
クローバーの館を中心に、この世界の五分の一の広さが完全消滅した。それは、世界破壊開始の合図となり、ものの数分で隔離され、中に残された生命体ごと全てが消滅してしまった。
神歴679576257年と37日目。
知能の発達が見られる様子もなく、逆に衰退していく失敗作。この世界は完全に破壊された。
「せっかく格好つけてあげたのに、言い方ひどいな」
アノニムにしては珍しく、冗談を言ったつもりだったのだが急いでいるアルゴライムにとってはただの時間の無駄だった。
「話してください」
アルゴライムは、かなり怒っているらしい。アノニムは、管理者であり、生命体に怯えることはないのだが、少し怯んでしまった。
「わかったよ……。簡単な話だ。その肉体を完全に再起不能な状態にする」
本当に簡単なことだった。アノニムは言う。アルゴライムは今、その肉体で生きているから、その肉体に戻ることができなくなればきちんと成仏すると。そして、普通に魂のみを引き剥がすと肉体だけが別の魂を勝手に取り込み、暴れだす可能性があることを。
「そういうことですか。それなら別に説明なんてしなくても破壊してくれたら良かったんです。あなたが」
「言えと言ったのはあんただ。それに、いきなり破壊されて怒るのはあんただろ? 」
「それはそうですけど…………」
アルゴライムがそう言った後、少しだけ無言の間があった。アルゴライムはやはり、死にたくないと思い、アノニムも何故か殺すことに抵抗があった。圧し殺してきた管理者としての感情が邪魔するのか、それはわからなかった。ただ、殺したくないとだけ思ったのだ。
「ああ、そうだ。あっちで話がある」
あっち、というものは神界のことだろう。死んだ魂は、一度神界に飛ばされ、次の一生を選ばれることになっている。そこで、アノニムはアルゴライムの魂を、自分の管轄下に飛ばし、一時的に管理者と同じ存在にしようとしているのだ。できないことではない。ただ、難しいだけのことだ。
「あの……何を作っているんですか? 」
魔力が一ヶ所に集中している気配をアルゴライムは感じ取った。その集まっている場所はアノニムの手の中。何かを作っているのは明らかだった。
「ああ、これか。あんたたちで言う核爆弾のようなものだ」
「それって……」
アルゴライムが何かを聞こうとすると、その質問の内容がわかっているかのように、得意気に説明を始めた。
「熱くはない、安心しろ。核爆弾並の破壊力ってだけだ」
「何でそんなものを作っているのか聞きたいんです」
アノニムは、ああそっちか、と言うような表情で少し焦っているアルゴライムに向かって説明を始めた。
「ああ、私のこの肉体も破壊しなければならないからな。面倒だから一度で済ませるだけだ。ついでにこの世界の破壊も進む。一石三鳥だ。素晴らしいだろ」
「ああ、もういいです。早く済ませてください」
「ああ、わかった」
アノニムがそう言うと、その手に握ってきた光の塊を放り投げた。そして、その塊が床に落ちると、音もなく、弾まず、閃光がパッと煌めいた。
そして、閃光が図書室中に行き渡り、わずかな隙間からその光が漏れ出すと、その光が包んだ場所は、塵一つ残らずに消滅した。
クローバーの館を中心に、この世界の五分の一の広さが完全消滅した。それは、世界破壊開始の合図となり、ものの数分で隔離され、中に残された生命体ごと全てが消滅してしまった。
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