炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~

黄崎うい

49節 頼み事part2

 アルゴライムは、少しだけ抵抗しようとしたが、何もせずに大人しくした。抵抗して魔力不足でリリスを殺し損ねたくなかったのだ。


「……あの、私をリリスのところまで死体として運んでください」

 アルゴライムは、あの地下でアノニムにそう頼み事をした。はじめは、アノニムには何を言っているのか理解できず、厳しい表情を浮かべていた。

「は? 何故だ。運ぶのは別にいいが、何故死体として運ぶ必要が? 」

「申し訳ないのですが、必要があるんです」

 微かに怒っているアノニムの苛立ちの声に、アルゴライムは淡々と返した。まだ首から上は自由だ。目を閉じ、まるで説教でもするかのように言っていた。

「説明をしてもらおうか、謎だから」

 アルゴライムがどんなに落ち着いて話しても、アノニムは苛ついたまま話を進めようとした。生命体のように身勝手に怒るアノニムを見て、アルゴライムは情けない、と思った。

「良いですよ。私はリースを殺したい。これはわかりますよね? 」

「ああ、それはわかるさ。助けたいんだもんな」

 アノニムは、少し落ち着きを取り戻したようだった。しかし、口調はおかしなまま、まだ怒っていることが火を見るよりも明らかだった。

「はい。私はリースを助けたいのです。しかし、私にはあまり魔力が残っていません。そして、回復も止まってしまったようです」

「だろうな、身体が動かせないのに魔力が回復するはずがない。当然のことだ」

 アノニムは、まだ苛ついているようだが、少しはなっとくしたのか、次のアルゴライムの言葉を言わせないで先に言った。

「魔力不足で殺し損ねたくない。そうだろ? 違うか? 」

「……違いませんけど、台詞を取らないでいただけませんか? 悲しいです」

 見えないけれど、アノニムがニヤリと笑った気がした。機嫌を取り戻したらしい。アルゴライムは少し拗ねそうになったが、安心した。

「じゃあ、首から上の自由を奪うから、その魔術が効くまで一度リリスのところに行ってくるが、いいかい? 」

 さっきまでのアノニムに戻った。それは、アルゴライムにとっても喜ばしいことだった。アノニムが怒ったままでは、リリスの魂を消滅されかねないからだ。それを考えると、アルゴライムは、安心できた。

「はい! 待っていますよ」

「わかった。その頼みはきこう。少し待ってくれ」


 死体のアルゴライムをアノニムが連れて帰る。これにはもうひとつの意図が隠されていた。

 アルゴライムが、もう生きていないという事実をはっきりとリリスに理解させることだ。アルゴライムは、前に本で読んだ。未練が残っていると、世界に魂が縛り付けられ、成仏できないということを。ずっと嘘だと思っていたが、少しでもその可能性があり、リリスがこの世界から出ることができないのならば、消滅してしまう。それを避けたかったのだ。

 リリスの性格上、アルゴライムが生きていたら心配するだろう。それが未練になってしまうということを避けたのだ。

 恐らく、それはアノニムも気づいていた。しかし、それを口にするということはなかった。




 未硝詩 ういです。最近、色々な方に宣伝していただけて、喜ばしい限りです。
 と、真面目な話はここまでにして、本当に感謝してる! とだけ言っておく!
 てとさん、ぐじゅしゃん、ありがとう!
 二人とも同じFictionalizerのメンバーです。私よりも古参……。さすがの人気ですな! 羨ましい……。

久しぶりの雑談でした!

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