5節　伝わる真実

　現れた少年は、静かにアルゴライムに話しかけた。

「本当にお久しぶりですね。謎の声さん、何のようですか？ 」

　アルゴライムのことを呼んだ声は、微かに聞き覚えのあるe16の声だった。

「その謎の声というのは私たち管理者全員を指すのですよね。私は『ビズィミアーンヌイー』を名乗っています。是非、『ズィミア』とお呼びください」

　ビズィミアーンヌイー、これも意味は名無し。 異国語は、アルゴライムの前世の趣味でもあり、意味はすぐにわかった。

「……ドイツ語の次はロシア語ですか、そうですか。結局、名無しなのですね」

「よくわかりますね。流石、六カ国語は日常会話が可能、簡単な単語なら八カ国語理解する言語マニアですね」

　アルゴライムは、日本語、英語、中国語、ロシア語、ドイツ語、フランス語での会話は旅行程度で困ることがない程に完璧だった。

「その呼び方はやめていただけますか」

「はい。私もできるだけ早く役目を終えて戻りたいですし、この少年にも悪いですしね」

「それ、あなたじゃないのですか？ 」

　ビズィミアーンヌイー(以降ズィミア)は、やけに幼い少年の姿をしていた。貧しい家に生まれた訳でもなさそうな服を着ていて、それがズィミアだと言われてもアルゴライムは気にしないほどだった。

「このフードは私の物ですが、この少年はこの森で死んでいた者を利用したので、この子を探しているご両親がいるでしょう。そして、用件でしたね、私は神からの伝言と私が伝えなければならないことを伝えに、そして、渡さねばならないものを渡しに来ました」

「そうなのですか。やらねばならないことがあるので早くしてもらえますか」

　アルゴライムの表情は冷めていた。どうせ、これからリリスを殺すことについて何か言われ、麗菜を殺すことについて何か言われることがわかっているからだ。

「あー、冷たいですね。まあいいですよ。小山薫を殺しました。私が伝えたかったことはこれです」

「……は？ 」

　今確かにズィミアは小山薫を殺したと言ったはず。何度もアルゴライムは頭の中で確認した。

「私の復讐はいったいどうなるんですか？ なぜその事を私に伝えたんですか? ! 」

「あー、その反応をすることは、アノニムはあの事を伝えていませんね？ まあ、急ぎではないので後で伝えますから落ち着いてください」

「ま、まあ、どうせもう二度と会えないことはわかっていたので構いません。早く次の用件を済ませてください」

　アルゴライムは怒りに顔を染めていたが、冷静さを取り戻していた。