炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~
6節 アノニム
「いや、その頃にはまだいないな、別のところにいたんだ」
「あら、そうなのね……。いつ頃からここにいるのかしら? 差し支えなければ教えてほしいのだけど……」
リリスは聞いた。知れなかったことは悲しかったが、アノニムのことが気になっていたからだ。本当に幼い頃にルータスと喧嘩をし、家出をしようとここに来て助けてくれたから。家まで返してくれたから、お世話になってきたから。ただの興味だった。
「あ、そうか。君にはまだなにも話したことなかったか。いいよ、話してあげる。いままで話してこなかったこと全部。どうせ、もう終わるから」
今の『終わる』という言葉に、リリスは少し疑問を持った。だが、あえてなにも聞かなかった。日が昇っても話し続けることができる鬼狼と全てが謎の存在の話はこうして始まった。日が昇ればアルゴライムが探しに来ることはない。
それまで暗かった森から獣の気配が消え、朝が近づいていることが二人にはわかった。この世界では朝になると強き種族から我が身を守るため、街や屋敷、湖等といった目立つところから離れる。だからわかるのだ。朝になる。探されない。話ができる。リリスの安心感は高まった。
「私は、本当は名前なんて持っていないんだ。だからアノニムと名乗っている。意味は『匿名』だ」
「アノニムは名前じゃないの? 」
リリスは驚いていた。普通に聞いていたならば、驚きのあまり声なんて出なかっただろう。しかし、普通に会話を続けられた。そのくらいに、さっきのトキューバ家の話が深く印象付いてしまったのだ。
「もう少し驚いてくれると思ったのだがな、もしかして気づいていたのか? 」
「まあ、さっき少し……。だから、知ってたわけじゃないわ」
アノニムが少し笑った。何百年も一緒にいたリリスでも見たことのない笑顔を浮かべた気がした。
「あ、そうか。だから聞いたのか」
「まあ、それはもういいの。私は続きが聞きたいわ」
リリスは思い出したくなかった。沈黙の間にも風の奏でる草木の音に集中しているほどに忘れたかった。だから続きを求めた。
「ああ、そうだな。私には性別もないんだ。君と親しみやすいように女の格好をしているが、フードをいつも被っているのは、鼻より上の顔のパーツを創造するのが面倒だからなんだ。だから、このフードを取れば、目はないよ。見せようか? 」
リリスは、想像した。確かに今までも口しか見たことがなかった。鬼狼だからか、目が光に弱いと勝手に思い込んで、目が見えない疑問を無いものにしていた。
「いいえ、結構よ……。私、血は平気だけどそう言う系統苦手なのよ」
「あ、そうかい。じゃあ、次を話そうか」
【雑談(感謝)】
いや、最近色々な方に宣伝していただいておりまして、本当に感謝しております。
クロシヲ氏
空星 詩月殿
本当になんと感謝をすればよいか…。ありがとうございます!
「あら、そうなのね……。いつ頃からここにいるのかしら? 差し支えなければ教えてほしいのだけど……」
リリスは聞いた。知れなかったことは悲しかったが、アノニムのことが気になっていたからだ。本当に幼い頃にルータスと喧嘩をし、家出をしようとここに来て助けてくれたから。家まで返してくれたから、お世話になってきたから。ただの興味だった。
「あ、そうか。君にはまだなにも話したことなかったか。いいよ、話してあげる。いままで話してこなかったこと全部。どうせ、もう終わるから」
今の『終わる』という言葉に、リリスは少し疑問を持った。だが、あえてなにも聞かなかった。日が昇っても話し続けることができる鬼狼と全てが謎の存在の話はこうして始まった。日が昇ればアルゴライムが探しに来ることはない。
それまで暗かった森から獣の気配が消え、朝が近づいていることが二人にはわかった。この世界では朝になると強き種族から我が身を守るため、街や屋敷、湖等といった目立つところから離れる。だからわかるのだ。朝になる。探されない。話ができる。リリスの安心感は高まった。
「私は、本当は名前なんて持っていないんだ。だからアノニムと名乗っている。意味は『匿名』だ」
「アノニムは名前じゃないの? 」
リリスは驚いていた。普通に聞いていたならば、驚きのあまり声なんて出なかっただろう。しかし、普通に会話を続けられた。そのくらいに、さっきのトキューバ家の話が深く印象付いてしまったのだ。
「もう少し驚いてくれると思ったのだがな、もしかして気づいていたのか? 」
「まあ、さっき少し……。だから、知ってたわけじゃないわ」
アノニムが少し笑った。何百年も一緒にいたリリスでも見たことのない笑顔を浮かべた気がした。
「あ、そうか。だから聞いたのか」
「まあ、それはもういいの。私は続きが聞きたいわ」
リリスは思い出したくなかった。沈黙の間にも風の奏でる草木の音に集中しているほどに忘れたかった。だから続きを求めた。
「ああ、そうだな。私には性別もないんだ。君と親しみやすいように女の格好をしているが、フードをいつも被っているのは、鼻より上の顔のパーツを創造するのが面倒だからなんだ。だから、このフードを取れば、目はないよ。見せようか? 」
リリスは、想像した。確かに今までも口しか見たことがなかった。鬼狼だからか、目が光に弱いと勝手に思い込んで、目が見えない疑問を無いものにしていた。
「いいえ、結構よ……。私、血は平気だけどそう言う系統苦手なのよ」
「あ、そうかい。じゃあ、次を話そうか」
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いや、最近色々な方に宣伝していただいておりまして、本当に感謝しております。
クロシヲ氏
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