炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~
5節 嘘とプレゼント(リリスside)
「はぁ、はぁ……」
リリスは森の奥、湖がある方角に向けて走っていた。その湖はかつて、人間がこの世界の中心の生き物になる前のこと、この世界二大勢力として吸血鬼と狼族が戦をしたと言われるところだった。
その戦では決着がつくことなく、たくさんの血が流れた。そして、とある協定が結ばれることになった。
『人間に強さを与え、指揮を執らせる』
当時、人間は森の隅で時々見掛け、狼や吸血鬼、その他様々な種族から良い獲物として見られていた。が、人間には知力が高く備わっていた。人間には火を扱うことができた。ただ、武力が欠けていただけだった。リーダーとしては申し分ない、だから指揮を執らせる者として選んだのだ。
そんな吸血鬼と狼族の戦いの場はその間の種族、鬼狼として、リリスが辛いことがあったときの自然と行き着く場だったのだ。
しかし、吸血鬼と狼族が人間を襲うのをやめ、力を与えると人間はすぐに文明を築いた。その後、力持つ者として吸血鬼と狼族を忌み嫌うようになった。指揮を執らせることはできなかった。
だから吸血鬼は文明を築こうとしたのだ。だから吸血鬼の主、キューバルは富を築くことに成功したのだ。そう考えると全ての説明がついた。リリスの中で今までなぞに繋がらなかった鬼狼の強さの理由が説明されてしまった。その衝撃で湖まで走ってきてしまった。アルゴライムに何も言うことができずに飛び出してきてしまった。
「確かに、はじめは信用していなかった。鬼狼として、吸血鬼の危険性を再度確かめるためにわざと負けた振りをした。でも……でも、私は……」
リリスは、吸血鬼の危険性が人間の認知から薄れてきた今日、鬼狼一族である自分に何かあることで、吸血鬼のもとで死んだりすることで再度確認させようとした。それが使命だと思っていたからだ。だから、殺させるつもりでいた。なのに、なのに、信用してしまった。
リリスは泣いていた。妹、弟たちよりも吸血鬼らしいスキルを持ち、疎外感を感じ取っていた。だから、自分がいなくなり、憎き吸血鬼を人間からさらに遠ざける。そうしてトキューバのためになろうとしたのだ。
「あれっ、またあんたなのか……。メアリー・リリス・トキューバ」
リリスは後ろから声をかけられた。振り向くと、コートのフードを深々と被った女の子のような見た目は人間、ただ人間からは感じとることのできないオーラを纏った者が立っていた。
「アノニム……」
「今度は何があったんだ? この湖に来るのは君くらいしかいないが」
アノニムはリリスがこの湖に来ると必ず会う者だった。ただ、何も言わずに悩みを聞いてくれたり、話し相手になってくれたり。よくわからない存在ではあるが、リリスが幼い頃からの唯一の友人とも言える存在だった。
「ねえ、アノニムはずっとこの湖の付近に住んでいるのよね。戦の時もここにいたのかしら? 」
アノニムはリリスが知っているなかで一番の長寿者だった。だから、今まで無意識に聞こうとしなかった戦について、聞こうとしたのだ。
リリスは森の奥、湖がある方角に向けて走っていた。その湖はかつて、人間がこの世界の中心の生き物になる前のこと、この世界二大勢力として吸血鬼と狼族が戦をしたと言われるところだった。
その戦では決着がつくことなく、たくさんの血が流れた。そして、とある協定が結ばれることになった。
『人間に強さを与え、指揮を執らせる』
当時、人間は森の隅で時々見掛け、狼や吸血鬼、その他様々な種族から良い獲物として見られていた。が、人間には知力が高く備わっていた。人間には火を扱うことができた。ただ、武力が欠けていただけだった。リーダーとしては申し分ない、だから指揮を執らせる者として選んだのだ。
そんな吸血鬼と狼族の戦いの場はその間の種族、鬼狼として、リリスが辛いことがあったときの自然と行き着く場だったのだ。
しかし、吸血鬼と狼族が人間を襲うのをやめ、力を与えると人間はすぐに文明を築いた。その後、力持つ者として吸血鬼と狼族を忌み嫌うようになった。指揮を執らせることはできなかった。
だから吸血鬼は文明を築こうとしたのだ。だから吸血鬼の主、キューバルは富を築くことに成功したのだ。そう考えると全ての説明がついた。リリスの中で今までなぞに繋がらなかった鬼狼の強さの理由が説明されてしまった。その衝撃で湖まで走ってきてしまった。アルゴライムに何も言うことができずに飛び出してきてしまった。
「確かに、はじめは信用していなかった。鬼狼として、吸血鬼の危険性を再度確かめるためにわざと負けた振りをした。でも……でも、私は……」
リリスは、吸血鬼の危険性が人間の認知から薄れてきた今日、鬼狼一族である自分に何かあることで、吸血鬼のもとで死んだりすることで再度確認させようとした。それが使命だと思っていたからだ。だから、殺させるつもりでいた。なのに、なのに、信用してしまった。
リリスは泣いていた。妹、弟たちよりも吸血鬼らしいスキルを持ち、疎外感を感じ取っていた。だから、自分がいなくなり、憎き吸血鬼を人間からさらに遠ざける。そうしてトキューバのためになろうとしたのだ。
「あれっ、またあんたなのか……。メアリー・リリス・トキューバ」
リリスは後ろから声をかけられた。振り向くと、コートのフードを深々と被った女の子のような見た目は人間、ただ人間からは感じとることのできないオーラを纏った者が立っていた。
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