炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~
4節 トキューバ家と吸血鬼(2)
この世界が創造されて1026年目(現在6378年目)、一人の吸血鬼が富を気づくことに成功した。その時には名前と言うものにはファミリーネーム等なかった。そしてその者の名を『キューバル』といった。
キューバルは信用できる者を集め、その富と吸血鬼の強さを利用し、一つの町を作り、そこを怪物や妖怪から守ると言う形で吸血鬼という忌み嫌われる種族で生きようとした。特にキューバルはカリスマ性があった。そのせいか、町よりもキューバルは守られるようになってしまった。ただでさえ寿命など存在しない吸血鬼。それなのに守られる存在となっては死ぬことはできない。現に今も生きている。
まぁ、それはいい。いつのまにキューバルの集めた者達の中で家系が築かれていた。この頃からファミリーネームを名乗るようになり、彼らはキューバルを名乗った。もちろん集めた者達は血の契約を済ませてあるため、生まれた子供達は吸血鬼であった。そして二千年がたった頃、キューバルの集めた者は誰もいなくなっていた。そして、一人の娘が生まれた。
その娘は吸血鬼であった。しかし、羽がない娘だった。キューバルはなにも言わなかった。吸血鬼であることにこだわっていたわけでもなく、ただ、この町を守り、生きていければそれで良かったからだ。しかし、築かれた家族達は娘を出来損ないだとキューバルから追い出した。その事に関してはなにも干渉になかった。ただ、毎月金を渡した。
4029年、その追い出された娘はキューバルの屋敷に火を放った。キューバル本人は死ぬことはなかったが、他の者はほとんどが燃えてしまった。そして、娘は言った。
「初代キューバル。私は吸血鬼を許しはしない。私は羽がないわ。もう吸血鬼なんかじゃない。私は月夜にのみこの力を使えるわ。これじゃあまるで狼よね? だから私は鬼狼を名乗ることにしたの」
キューバルはなにも言わなかった。ただ、冷たい視線を娘に向けて黙っていた。
「だから、私はあなたの名前をもらうわ。そのままではなく、少し変えて。そして、初代キューバル、貴女の力を無くして私の近くで見守ってもらうことにしたの。その富もほしいからね」
この娘の力は底知れなかった。しかし、抵抗されたら力はうまく使えなかった。だからかキューバルは抵抗などしなかった。自分の娘に見えたのだろうか、見守ることを決めたのだ。
キューバルは娘に吸血鬼としての力を与え、彼女の住む屋敷の地下室に閉じ籠った。そして、今もそこにいる。
その娘はキューバルの名をトキューバと変え、その名をルータスと言った。そして娘は吸血鬼を恨み、その血の濃い自らが許せなかった。彼女の夫は狼男として忌み嫌われていた。が、その間の娘は生まれてからずっと鬼狼だった。そして娘はメイリスと名付けられた。メイリスはルータスを殺した。吸血鬼を忌み嫌うようにして育てられたが、母も吸血鬼だと知り、許せなかったのだ。キューバルの存在は知っていた。それでも殺さなかった。いや、殺せなかった。そして、元から閉じ籠っていたキューバルを地下に軟禁した。
メイリスは母を愛していた。だからこそ名を継いだ。そして彼女は今名をルータス・メイリス・トキューバという。
今回は本の内容のみです。いやー、母をも手にかけるとはメイリス、恐ろしい子。
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