黒龍の傷痕 【時代を越え魂を越え彼らは物語を紡ぐ】

陽下城三太

第零章 大戦の始まり


 静寂が、世界を包む。
 生が存在しない死の世界。
 ただ、そこには二つの存在。
 両者共に、同じ力を宿す。
 獰猛な殺気が満たす中、狂う大気の暴走。
 相互に放つ力の衝突が生み出す大振動。
 焦土より立ち上る魔力の片鱗が戦いの激しさを物語る。
 因縁。
 そこに生まれし想いはただひとつ。
 
 対峙する敵を殺す。
 
 かたや自らの力を分け与え作り出した軍団。
 かたや全ての種族を味方につけた連合。
 莫大な戦力が絡むこの戦いは、後に『古の大戦』と呼ばれることとなる。
 黒を率いる王は魔神王──其の名を『邪剣王』。
 対する者は邪眷族──其の名を『連の魔人』。
 大戦の切っ掛けは、この二者にあった。
 全てを手中に、又は殺戮を求める。
 亡き伴侶の仇を討たんと奮起する。
 後世に語り継がれる歴史的大戦は、人々が知るよりももっと下らない理由で始まった。
 二者の意思のぶつかり合いはやがて引き分け、復讐を誓った連の魔人はその身をくらまし、殺戮を望んだ邪剣王は衰弱を契機に魔を極めた者に道を阻まれ封印された。
 こうして終結した大戦は、後の世でまた───
 
 
 
 
 運命とはまた皮肉なものだ。
 
 

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