競奏のリアニメイト~異世界の果てに何を得るのか~
間話 それぞれの感情
イアラの後を付いていき寮に戻る間、俺は酷く憂鬱な気分だった。そう感じる理由は単純明快、イアラとリヤの修羅場だ。
二人の間に何かあったのはまず間違いはない。あれほどの表情をお互いに見せあったというのは二人の間には余程の事があったのだろう。
もし、俺が元の世界で友好的な会話術を身につけていたのならこの雰囲気を変える事が出来たかもしれないが、残念ながら後悔してもあの時間は戻ってこない。自分なりになんとかしてみよう。
人と会話をするというのはとても重要だと言うことに気がついたから……。
「部屋に戻ったら次は何をしますか?」
「……」
無視され、若干傷つく。
否、よく見るとイアラは心ここに在らずという感じだった。
仕方ない。
「あの……!!」
「えっ?なに!!?」
やはり、俺の話を聞いてなかったみたいだ。
「部屋に戻ったらどうしますか?」
「えーと、そうだね。食事にはもう少し時間があるから休もうか?」
イアラは少し考える素振りを見せつつ、すぐに答えを返してくる。
そう言えば、さっきは喋り方が凄まじい程に荒々しかった。
彼も彼で今とさっきの姿、どちらが本当の姿なのだろうか?
否、それも気にしまい。
人間には必ず表と裏がある。余程な聖人でなければそれは絶対に有り得るのだ。
それをとやかく言う権利も資格も俺にはない。
彼とはまだ出会って数時間だ。せっかく仲良くなれると確信しているのに嫌われたくないし、嫌いになりたくもない。
俺にも人に言えない過去がある。
彼にも人に言えない過去がある。
ただ、それだけのことなのだ。
____________________________
『見てよ。あの髪』
『真っ白……じゃあ、あの子が化け物並に強いっていう』
『でも、剣を持ってくるなんて何を考えているのやら』
『そうだよね』
少女に見えない影でヒソヒソと話し合う生徒達。
皆、彼女の強さを噂レベルで聞き及んでいるらしい。だが、いざその姿を目に写すや彼らは敬意を見せるどころか侮蔑と嘲笑を彼女に対して浴びせる。
理由は彼女が帯刀している美しい長剣。
この世界では剣を持っているというだけで魔術師から差別を受ける。
それほどまでに剣士と魔術師とでは力量に大きな差があるのだ。
「……」
そんな目の前の当然の事をキースは不服の表情で見ていた。
彼は昼間、遠目に見える自分より三つは下の歳であろう少女に惨敗した。
しかも、こっちは制限をかけられたとは言え、ほぼ全力に近い能力で潰しにかかったのに……だ。
彼女は魔術など一切使わず、己の得物と身体技能だけで魔術を打ち破ったのだ。
最初、彼女がレクスに連れられて教室に入って来た時、簡潔に言えば激怒していた。
レクス直々の試験に合格したからにはさぞ凄腕の人物かと思いきや自分の妹みたいな歳で、しかも帯刀して入ってきたのだ。
最初はレクスの悪ふざけかとも思った。しかし、彼の口振りからして違うと感じ取った時、怒りの限度を超えて思わず手が出てしまった。
一瞬、魔術を許可なく使用してしまった事に焦ったが、あんな形だけの規則を守る貴族など馬鹿真面目なイアラぐらいだろう。
現にレクスも問題視はしなかった。
その後はキース自身が喧嘩をふっかけ、そして一発も当てられる事無くレクスに負けを伝えられた。
何も出来ずに負けた。
その事実がキースに大きく響いた事は言うまでもない。
意気消沈のままブラブラと歩き回っていると皆の陰口が聞こえてきたのだ。
自分に勝ったやつですら剣を持っているという理由だけで侮蔑の対象となる。
では、そんな侮蔑の対象となるやつに負けた自分はどうなるのだとキースは更に気持ちを沈めてしまう。
そんな事を考えているとふと、自分の手に目線がいった。
負けた後、少女は手を伸ばしこう言ったのだ。
『これで貴方に勝った気にはならない』と。
あれがキースを侮辱する意味で言ったとはとても思えなかった。でも、キースは彼女の手を取る気持ちにはとてもなれない。
だから、彼女の手を跳ね除けたのだ。
しかし。
「次は絶対に俺が手を伸ばしてやる」
小さく呟き、陰口を言っている輩の所へ向かった。その陰口をやめさせる為に。
剣という物はまだ彼の中では侮蔑の対象だ。今までそうであったものを今日いきなり変えることはそうそうできはしない。
しかし、彼女自身を侮蔑する事はないだろう。
彼女は立派なここで学ぶべき同志だから。
それを認めないと自分を否定する事になるし、今のこの気持ちすらも侮蔑することになる。
いつか、彼女の本気を見たいとそう思ったのだ。
_________________________
「ふむ……」
オレはソルをイアラの元へ送ってから目的も無くブラブラと歩き回っていると一つの事に気がついた。
全員、陰ながら一人の少女の事を噂していた。
今日入ってきた白髪の少女の事だ。
魔術師であるはずなのにその少女は美しい剣を持っているという。また、魔法を使わずとも少女はかなりの強さを持っていると聞く。
だが、少女の強さなどほとんどどうでもいいという感覚だ。
噂している彼らは少女を侮蔑の対象としてか噂してない。
その少女の事をオレは知っている。
何故ならその少女を連れてきたのはオレだからだ。
「…………」
最初出会った頃は侮蔑まではいかないものの少女___ソルの事を侮っていたのは確かだった。
しかし、試験をしている最中からだんだん面白いやつだと感じ、爆炎魔法と剣の特殊せいを知った瞬間、ソルに才能を感じ取った。
オレのこの気持ちをここにいる生徒達にも教えたくて連れてきたのはいいが、生徒達はそのように思わなかったみたいだ。
これは手を打つべきなのかもしれないとオレは頭を悩ませた。
二人の間に何かあったのはまず間違いはない。あれほどの表情をお互いに見せあったというのは二人の間には余程の事があったのだろう。
もし、俺が元の世界で友好的な会話術を身につけていたのならこの雰囲気を変える事が出来たかもしれないが、残念ながら後悔してもあの時間は戻ってこない。自分なりになんとかしてみよう。
人と会話をするというのはとても重要だと言うことに気がついたから……。
「部屋に戻ったら次は何をしますか?」
「……」
無視され、若干傷つく。
否、よく見るとイアラは心ここに在らずという感じだった。
仕方ない。
「あの……!!」
「えっ?なに!!?」
やはり、俺の話を聞いてなかったみたいだ。
「部屋に戻ったらどうしますか?」
「えーと、そうだね。食事にはもう少し時間があるから休もうか?」
イアラは少し考える素振りを見せつつ、すぐに答えを返してくる。
そう言えば、さっきは喋り方が凄まじい程に荒々しかった。
彼も彼で今とさっきの姿、どちらが本当の姿なのだろうか?
否、それも気にしまい。
人間には必ず表と裏がある。余程な聖人でなければそれは絶対に有り得るのだ。
それをとやかく言う権利も資格も俺にはない。
彼とはまだ出会って数時間だ。せっかく仲良くなれると確信しているのに嫌われたくないし、嫌いになりたくもない。
俺にも人に言えない過去がある。
彼にも人に言えない過去がある。
ただ、それだけのことなのだ。
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『見てよ。あの髪』
『真っ白……じゃあ、あの子が化け物並に強いっていう』
『でも、剣を持ってくるなんて何を考えているのやら』
『そうだよね』
少女に見えない影でヒソヒソと話し合う生徒達。
皆、彼女の強さを噂レベルで聞き及んでいるらしい。だが、いざその姿を目に写すや彼らは敬意を見せるどころか侮蔑と嘲笑を彼女に対して浴びせる。
理由は彼女が帯刀している美しい長剣。
この世界では剣を持っているというだけで魔術師から差別を受ける。
それほどまでに剣士と魔術師とでは力量に大きな差があるのだ。
「……」
そんな目の前の当然の事をキースは不服の表情で見ていた。
彼は昼間、遠目に見える自分より三つは下の歳であろう少女に惨敗した。
しかも、こっちは制限をかけられたとは言え、ほぼ全力に近い能力で潰しにかかったのに……だ。
彼女は魔術など一切使わず、己の得物と身体技能だけで魔術を打ち破ったのだ。
最初、彼女がレクスに連れられて教室に入って来た時、簡潔に言えば激怒していた。
レクス直々の試験に合格したからにはさぞ凄腕の人物かと思いきや自分の妹みたいな歳で、しかも帯刀して入ってきたのだ。
最初はレクスの悪ふざけかとも思った。しかし、彼の口振りからして違うと感じ取った時、怒りの限度を超えて思わず手が出てしまった。
一瞬、魔術を許可なく使用してしまった事に焦ったが、あんな形だけの規則を守る貴族など馬鹿真面目なイアラぐらいだろう。
現にレクスも問題視はしなかった。
その後はキース自身が喧嘩をふっかけ、そして一発も当てられる事無くレクスに負けを伝えられた。
何も出来ずに負けた。
その事実がキースに大きく響いた事は言うまでもない。
意気消沈のままブラブラと歩き回っていると皆の陰口が聞こえてきたのだ。
自分に勝ったやつですら剣を持っているという理由だけで侮蔑の対象となる。
では、そんな侮蔑の対象となるやつに負けた自分はどうなるのだとキースは更に気持ちを沈めてしまう。
そんな事を考えているとふと、自分の手に目線がいった。
負けた後、少女は手を伸ばしこう言ったのだ。
『これで貴方に勝った気にはならない』と。
あれがキースを侮辱する意味で言ったとはとても思えなかった。でも、キースは彼女の手を取る気持ちにはとてもなれない。
だから、彼女の手を跳ね除けたのだ。
しかし。
「次は絶対に俺が手を伸ばしてやる」
小さく呟き、陰口を言っている輩の所へ向かった。その陰口をやめさせる為に。
剣という物はまだ彼の中では侮蔑の対象だ。今までそうであったものを今日いきなり変えることはそうそうできはしない。
しかし、彼女自身を侮蔑する事はないだろう。
彼女は立派なここで学ぶべき同志だから。
それを認めないと自分を否定する事になるし、今のこの気持ちすらも侮蔑することになる。
いつか、彼女の本気を見たいとそう思ったのだ。
_________________________
「ふむ……」
オレはソルをイアラの元へ送ってから目的も無くブラブラと歩き回っていると一つの事に気がついた。
全員、陰ながら一人の少女の事を噂していた。
今日入ってきた白髪の少女の事だ。
魔術師であるはずなのにその少女は美しい剣を持っているという。また、魔法を使わずとも少女はかなりの強さを持っていると聞く。
だが、少女の強さなどほとんどどうでもいいという感覚だ。
噂している彼らは少女を侮蔑の対象としてか噂してない。
その少女の事をオレは知っている。
何故ならその少女を連れてきたのはオレだからだ。
「…………」
最初出会った頃は侮蔑まではいかないものの少女___ソルの事を侮っていたのは確かだった。
しかし、試験をしている最中からだんだん面白いやつだと感じ、爆炎魔法と剣の特殊せいを知った瞬間、ソルに才能を感じ取った。
オレのこの気持ちをここにいる生徒達にも教えたくて連れてきたのはいいが、生徒達はそのように思わなかったみたいだ。
これは手を打つべきなのかもしれないとオレは頭を悩ませた。
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