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落ちこぼれの冒険者だけど、地上最強の生き物と共に最強を目指すことになりました。

矢代大介

プロローグ 星空の下で


「トーヤ。聞きたいことがある」

 大小さまざまな宝石をちりばめた、宵闇色のベールに覆われた空のたもと。
 主張したがりな木々がこぞって背伸びする、深い森の一角から、ふとそんな声が漏れた。

「ん、なに?」

 言葉を返すのは、ほど近い場所に居た一人の少年。視界を妨げない程度に切りそろえられたざんばらの黒髪の下に、幼さと精悍さの同居した、「少年らしい」という形容の似合う容姿を持つ彼は、その手に持った棒きれを、目前で燃えるたき火に放り込みながら、その問いかけに返事をこぼした。

「ここは、人の身には危険な場所のはず。どうして、トーヤはこんなところに居たの?」

 トーヤと呼ばれた少年の、たき火を挟んだ向かい側には、もう一つの人影。
 トーヤとは対照的に、空を横切る天の川のようなきらめきを湛える、羽衣と錯覚しそうなほど長い白髪。その下に、あどけなさを色濃く残す目鼻立ちと、天上の月をそのままはめ込んだような、鮮やかに輝く金色の瞳を持つ「少女」は、薄味な感情を映す顔のまま、不思議そうに問いかけた。

「う……まぁ、ちょっといろいろあったんだよ」

 問われ、トーヤは言葉に詰まったかと思うと、気まずそうに眼を泳がせながら言葉を濁す。あからさまに「聞いて欲しくない」と言いたげな態度を取るトーヤだったが、白髪の少女はたき火越しに身を乗り出し、言い逃れは許さないとばかりにトーヤへ詰め寄った。

「いろいろ。私は、そこが聞きたい」
「いや、話すようなことじゃないからさ」
「それでも。朝までは、まだ時間がある」
「いやいや、つまんないからさ」
「大丈夫。私、聞きたい」
「いやいやいや、気分のいい話じゃないんだって」
「問題ない。トーヤの話を聞きたい」
「ぐぅ……」

 のらりくらりと逃れようと足掻くトーヤだったが、なおも少女は立て続けに言葉を重ねて詰め寄っていく。「話したくない」という一言を紡ぐ勇気が――少女のお願いを無碍にする勇気が出ないまま、次第に語彙も尽き、返答に窮したトーヤは、謎の鳴き声を口にしてからしばらくして、諦めたようにがくりと肩を落とした。

「……ホントにつまんないぞ」
「大丈夫。かもん」

 なおも無表情気味な顔のまま――よく見てみれば、その顔には期待の色が浮かんでいるのが見て取れるのだが、あいにくと今のトーヤは気づける状態ではなかった――、身の上話を催促してくる少女の眼差しを見て、トーヤは降参の意を示す、大きなため息をつく。

「……そう、だな。じゃあ、何処から話すべきか」

 やがて、火花と共に燃えるたき火を見つめながら、トーヤは静かに、とつとつとこれまでの経緯を――「人の身」では危険な森に踏み入り、目の前の少女と出会うことになったのかを、語り始めた。


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